ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

786 うちきり

　
　毎週欠かさず視聴していたドラマが、突如として打ち切られた。
　演者が週刊誌にスキャンダルをすっぱ抜かれたせいで、スポンサーらが続々撤退し、テレビ局側もすっかり腰がひけてしまい、そのまま……。
　といった流れ。
　けれども楽しみにしていた視聴者はたまらない。
　当然ながら抗議や嘆願などがインターネット上に入り乱れることになるも、結局は終了となる。
　ちなみにドラマは刑事もの。
　いまをトキメク男前たちが夢の競演。難事件に立ち向かう。仕事終わりに必ず入る野郎どものシャワーシーンも話題になっていた。

「主演のイケメン俳優のひとりが未成年と飲酒をしたからって、いくらなんでもきびしすぎるよ」

　ミヨちゃんはすっかりお冠である。
　十八だか、二十歳だかしらないが、そんなもの見た目じゃ区別がつかないっての。
　ただでさえいまの子らは、大人びているし、化粧も巧いというのに。
　また当人が「二十歳です」と申告すれば、言われた側は「そう、わかった」としか答えようがない。よもや「身分証を提示しろ」なんて言えやしないよ。
　それとても自動車の免許証みたいに顔写真つきならばともかく、保険証とかだとわからないから、どうとでも誤魔化せちゃう。
　誤魔化すといえば、ことが発覚した直後に、例のイケメン俳優がついウソをついてしまったのもよくなかった。
　すぐに認めて「すみませんでした」とあやまれば、たいして大ごとにもならなかったかもしれない。
　けれども当人はすっとぼけて、なおかつ事務所までもがその線で押し切ろうとする。これが結果として火に油を注ぐことになる。
　スキャンダルをすっぱ抜いた週刊誌の記者たちは、ものすごく優秀。
　ヘタな刑事や探偵よりも、調査能力がすさまじく、それはもう緻密な裏どりを行い、徹底的に調べあげた。
　で、安いウソは早々にバレて、メールやら画像やら、ラインとかのやりとりも赤裸々となり、はては過去の小さな不祥事までをも掘り起こされて、にっちもさっちもいかなくなってしまい、ついには活動自粛に追い込まれてしまう。

「とはいえ、そこまで追い詰めなくてよくない？　同じ追い詰めるのならば、もっと調べるべき人とか、もっと他にいると思うんだけど」

　国会議員とか、地方議員とか、政治家秘書とか、官僚とか、公務員とか、怪しげな商売をしている会社や経営者とか。
　たたけばホコリがばふんばふん。そんな人たちがごまんといる中で、わざわざ前途ある若手俳優を狙い撃ちする意味がわかんないと、ミヨちゃん。
　どれだけすごかろうとも、「結局は叩きやすいところを叩いているんだろう？　つまりはそういうことなんだろう？」とミヨちゃんはうがった見方をしちゃう。
　小事をつついて、大事を見てみぬふりをする世間。
　そのあおりで楽しみにしていたドラマが打ち切られて、ご立腹なミヨちゃん。
　これを受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「線引きがあいまいなのが厄介」

　同じような不祥事を起こしても徹底的に追及される人と、
　たいした騒ぎにならずに、シレっと許されちゃう人がいる。
　キャラクターや人柄のひと言で、結果に差が生じている。
　これってひどくない？　かなり問題だと思うのだけれども。
　……　なんぞと、コヒニクミコは考えている。