ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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794 れっど

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 太平洋のマグロがピンチらしい。
 だからあんまり捕らないようにしましょう。
 という約束を律儀に守る国もあれば、そんなの知ったこっちゃねえと、好き放題に捕っているいる国もある。
 捕ったらダメならばと、自分で増やす研究も進んでいるらしいけれど、まだまだ代用品となるほどの量は確保できない。飼育場所とか予算とか、いろいろ諸経費の問題があって、かえって割高に……。
 では、どうしてそんなことになったのかというと、自国の食文化を広めた結果。
 良かれと思ってやったのに、あまりにも好評すぎてすっかり裾野が広がってしまい、生で魚を食べる習慣が浸透。
 そのせいで消費量がドカンと増えて、需要と供給のバランスがおかしなことになって、乱獲を招き、シワ寄せが。
 はたしていつまで気軽に食べ続けられることができるやら。
 明日や来月とはいわないけれども、来年や再来年にはどうなっているか、わからない。
 気がついたら回転しているお寿司のネタの中で、一番の高級品になっちゃっているかもね。

「マグロは困るよね。でもわたしはサーモンがあればごきげんだから。なければなくても問題はない」

 たとえマグロが食べられなくなっても、べつにいいかも。
 そんな意見を口にしたのは下校中のミヨちゃん。いつものごとく仲良しのヒニクちゃんといっしょ。

「でも鉄火巻きは好きだから、やっぱり食べられなくなるのはイヤかなぁ」

 かっぱ巻きとかかんぴょう巻きとか、納豆巻きとかの細巻きは、高級感はないけれどもつまむように食べれる大きさが、幼女の小さな口にはちょうどいい。
 でも手巻き風はダメ。あれは家で楽しむのはいいけれども、お店だとちょっと。
 せっかくお寿司屋さんに行っているのに、どうしてわざわざ素人臭い品を食べねばならぬのか。その点、握りや巻きには職人の技が光る。
 などと独自の見解をのべるミヨちゃん。
 対してヒニクちゃん、ふむふむうなづくばかり。
 じつは回るお寿司屋さんでは、裏で寿司マシーンがどちらもせっせと作っているのだけれども、そんな野暮は口にしないヒニクちゃんなのである。

 で、マグロの次にミヨちゃんが話題にしたのが秋の味覚の王様まつたけ。
 これまた環境破壊のあおりを受けて、激減しているんだとか。
 ずっと採れていた場所でも、気候変動などのせいで以前のように生息できない。
 目に見えて量が減っている。
 しかも難儀なことに、山の中の高級食材を狙って、ドロボウたちが山へと分け入っては乱獲するばかりか、場所を踏み荒らすものだから、生息地がダメになって育たなくなってしまうという弊害も起きているとか。

「べつにあんなモノ、ちっともおいしくないから、どうでもいいんだけど。ドロボウはダメだよね」

 値段ばかりが先行して、薫りとかいまいちピンとこないミヨちゃん。
 ぶっちゃけマツタケごはんよりも、ふつうのかやくごはんのほうがずっと美味しいと考えている。
 アレをありがたがっている世間が、幼女には理解不能。
 そしてそれは全国の小学生の大半が「だよねえ」とうなづくことにて、これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「この手の話って、基本加害者側から出てくるのよね」

 かつて原住民を虐殺し尊厳と文化を破壊しつくした側が、
 やれ世界遺産だ、やれ人権だ差別だ、環境保護だと主張。
 自作自演の果てに、責任だけ押し付けられても、ちょっと。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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