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820 こうみょう
しおりを挟む困っている人がいたら、「どうかしましたか?」「大丈夫ですか?」と声をかける。
そんな当たり前のことすらもが、気をつけなければいけない物騒な事案が町内にて発生する。
ことの起こりは近所の団地の一室。
お母さんが買い物へと出かけており、小学生の女の子がひとり留守番をしていると、インターフォンが「ピンポーン」と鳴った。
女の子の背では室内に設置されてあるモニターのところに届かない。
だから直接、玄関ドアのところへと行って、「どちらさまですか」
するとドアの向こうからは、「すみません。じつは少し困っておりまして……」との男のくぐもった声。
で、その声が語るところでは、急にお腹の調子が悪くなってどうしてもつらいから、トイレを貸して欲しいとのこと。
急な腹痛の苦しさは誰もが知るところ。
だから女の子は助けてあげようとした。けれども、実際に内鍵を開ける寸前にお母さんから「知らない人がきてもドアを開けちゃダメ」といわれていたことを思い出す。そればかりか自分が暮らしている部屋の位置が五階の角にあるということも。
たまさかこんなところを通りがかることなんてあるわけがない……。
だから女の子は扉を開けることを躊躇した。
しばらく男と女の子の間にて押し問答。
でも、急に男が態度を豹変させて「いいから、とっとと開けろって言ってるだろうがっ!」と怒鳴って扉を「ドンッ!」と蹴飛ばした。
驚き、怯えた女の子は玄関から逃げるようにして、部屋の奥へ。
しばらくガクガクふるえていたら、いつしか静かになっていた。
そこでおそるおそる玄関ドアへ。
すると郵便受けから室内をギョロリと覗いている二つの目を発見し、「キャーッ!」
さいわいなことにこの件はそれだけですんだ。
けれども団地の敷地内にて不審者の目撃情報が相次ぎ、地域は騒然となった。
犯人はいまだに捕まったおらず、同じ学区内にも情報は拡散されて、「用心するように」との通達がなされる。
ちなみこの団地というのが、ミヨちゃんとヒニクちゃんのクラスメイトである、チエミんちゃんが暮らしているところ。
チエミちゃんから事件の概要を直接聞いて、ブルルとふるえあがったミヨちゃんたち。
「最近ではサングラスに杖を持って目が不自由はふりをしたり、道に迷っているふりをして案内を頼んだり、困っている人を装うだからタチが悪いよ」
より巧妙化している不審者の手口について語るチエミちゃん。「おちおち公園でひとり遊びもできやしない」とぼやく。
とても他人事ではないので、ミヨちゃんも「まったくだよ」と嘆息。
するとここでおもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「物事には必ず原因と結果がある」
何が人をそこへと駆り立てるのか?
その最初のキッカケを発見しないかぎりは、
この手の問題がなくなることはない。
でも安易な二次元中傷、妄想悪論はノーサンキュー。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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