825 / 1,003
831 りんりん
しおりを挟むミヨちゃんの家の前の道路は、地域の生活路にてあまり自動車が通らない。
だから、近所の子どもらが、ちょくちょく遊んでいる姿が目撃される。
本日はミヨちゃんとヒニクちゃんも、そこで遊んでいた。
公園に行ってもよかったのだが、とにかく残暑の陽射しがキツイ。
ニュースでは連日「熱中症に注意しましょう」と声高に叫ばれており、あと一週間ぐらいは、マジでしゃれにならない陽気が続くそうな。
だったらエアコンの利いた室内でおとなしくしていればいいのだけれども、それができないのが子どもなわけで。
ずっと家の中だと飽きてしまう。
かといって遠出をするのは、ちと、しんどい。
そこで家の前で遊ぼうということになったミヨちゃんとヒニクちゃんの二人。
ヒニクちゃんがスチャっととり出したのはビニール製の縄跳び。ピンク色。
まるで熟練したボクサーのように、タタタタタタと軽快なフットワークにて縄跳びをするヒニクちゃん。
二重飛びとか、クロスではなく、あえてこの飛び方を続ける。
ちなみに縄跳びは全身運動にて、カロリー消費もほどよく、ダイエットに最適。でもあまりムリをすると膝にくるから、ほどほどに。
そんなヒニクちゃんを尻目にミヨちゃんがスイスイとこいでいたのは一輪車。
彼女たちが通っていた幼稚園では年長組になると習い、ほぼ全員が乗れていた。ミヨちゃんは自転車よりも先にこっちをマスターしていたのである。
でもだからこそ、自転車の方にはずいぶんと苦労をさせられた。
なにせ扱う車輪が一つ増えただけでなく、ハンドルやらブレーキなんてものまで同時に操作しなければいけなかったので。
その点、一輪車はシンプルでいい。
もっともそのシンプルさが常人には、とってもムズカシイのだけれども。そんなこと幼女は知らないし、気にもとめていない。
一定の幅をあけて並べた空き缶。
その間をスイスイと見事な蛇行運転を決めるミヨちゃん。何往復かしたのちに、ヒニクちゃんに声をかける。
「ねえ、ちょっと縄跳び貸して」
何をするのかとおもえば、一輪車にての縄跳びにチャレンジ。
それも三回ほどで成功してしまったから、これにはヒニクちゃんもパチパチ拍手。
華麗に一輪車でターンを決めて、ペコリとお辞儀をしたミヨちゃん。
基礎体力や運動神経においては、クラスメイトのスポーツ少女のリョウコちゃんに大差をつけられているものの、さりとて悪いわけじゃない。むしろ一般よりちょい上ぐらいのセンスの持ち主。
ただし相性があるので、今回みたいにあっさりクリアすることは、まぁ、稀である。
そんなミヨちゃんは、T字ハンドルの自転車がちょっと苦手。
なぜならアレってば、左右に込めるチカラ加減のバランスをかくと、ぷるぷるハンドルがふるえちゃうし、くいっと急ハンドルを切ればロックしてずてんと転ぶから。
そしてそんな危険な乗り物が、近頃、街中で幅を利かせていることを、とっても不安に感じているミヨちゃん。
「ここのところ急に自転車が増えたんだよねえ。で、ビューンって飛ばすから危ないったらありゃしない」
交通ルールなんておかまいなし。いきなり道の角から飛び出してくる。
なんどひやっとさせられたことか。
エコもけっこうだけど、もう少し、マナーを守ってもらいたいと幼女が不満を口にしたところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「はたして自転車は本当にエコか?」
ガソリンを消費しない。排気ガスを出さない。
そういった点ではたしかに優秀。健康にもいいしね。
けれども年間数十万台単位で放置破棄されてもいる。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
38
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる