ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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844 ほぞん

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 幾分、西陽の色がおとなしくなったとはいえ、まだまだ残暑が厳しい今日この頃。
 いつものごとくミヨちゃんとヒニクちゃんは仲良く下校中。
 河川敷の遊歩道をテクテク歩いていると、パコーン、パコーンと気の抜けた音がする。
 顔を向ければテニスコートにておばさまたちの嬌声。
 渋いおじさまコーチを相手に、ママさんテニスの真っ最中。
 コートの中をはげしく動き回るようなプレイはせずに、どちらかというと長くラリーを続けることを目的とするかのようなぬるい内容。
 でも、とっても楽しそうにて元気ハツラツ。
 そんな様子を堤防の上から並んで眺めていたミヨちゃんとヒニクちゃん。
 すると二人のところにポーンとテニスボールが飛んできたので、ヒニクちゃんがこれをキャッチ。すかさず投げ返すと、ダミ声にて「ありがとうねー」とお礼をいわれた。あれはたぶん酒やけ。
 一連のやりとりを見ていたミヨちゃん。
「そういえば……」と口にしたのは、海外でのとある出来事。

 国内外にてとかく騒動になるのが差別の問題。
 あるブランドのキャラクターの肌の色がダメだとか。
 ある文芸作品の内容が差別を助長するとか。
 誰それの発言や行動がけしからんとか。

「たしかに」とうなづくものから、「えー」と首をかしげる難癖レベルまで。

 ネット社会の発展にともなって、意見がたちまち世界中に拡散されて、あっという間に大炎上しちゃう。
 個人の発言力が増し増し。
 でもその影響力を自分のチカラとはきちがえて、無責任な情報を垂れ流すこともあるから困りもの。
 一方でペンは剣よりも強しと、社会的弱者が戦う武器にもなっているところが、じつに悩ましい。
 で、ミヨちゃんが話題にしたのは、某国での人種差別騒動。
 黒だの白だの黄だのとしようもないことで、散々に揉めてきた人類の歴史。
 先進国にて表向きは平等を謳っているけれども、ひと皮むけば……。
 ってなわけで、大規模デモやら、暴動やらが、起こりまくり。
 これを受けて、とあるテニスプレーヤーが抗議の意味をこめて試合を棄権すると表明。
 すると大会運営本部も同調し大会の休止を表明し、バスケットや野球とかの他の競技団体もこれに追随。

「ボイコットってやつだよねえ? こういうのを見ると、海外との差をつうかんするよ」

 トッププレーヤーやアスリートが、自分の立場を使って強く抗議する。
 それはそれ、これはこれ精神が根付く島国では、なかなか理解できない考えと行動。
 スポンサーとかしがらみを無視して自分の考えを貫くなんて、なまなかの覚悟ではない。
 称賛する一方で、非難する意見も多々。集中砲火をあびてもなおひるまない姿勢が、とっても凛々しい。

「でも、そんな個人の活動を認める文化が根付いている社会ですらもが、無くせていないんだよねえ」

 現状を憂い、人類の未来に一抹の不安を抱くミヨちゃん。
 これを受けておもむろにヒニクちゃんが口をひらいた。

「果物でも保存方法はいろいろ」

 なんでもかんでも冷蔵庫に入れればいいわけじゃない。
 もういっそのことみんなバラバラに住めば?
 仲の悪い人同士が無理して一か所に固まるからややこしい。
 広大な国土があるんだから、どうとでもできるだろうに。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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