ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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926 ちょろい

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 週刊誌やワイドショーなどのマスコミの行き過ぎた報道。
 それは昔から問題視されていたこと。
 時代が変わるのに合わせて意識も変わり、いっときほど激しくはなくなった。
 とはいえやはり突撃されるのは同じらしい。
 しかしかつてはされるがままで泣き寝入りをするしかなかった側もまた変わった。
 もう黙っちゃいない。
 事実無根に適当なことを吹聴されたら訴えるし、自ら主義主張を展開するようになった。インターネットの普及によって個人でもそれができる時代になったのだ。
 また世間全般の意識も変わりつつある。
 いかに芸能人や著名人であろうとも、プライベートにずかずかと踏み込むのはいかがなものか。公私はべつだろうという考えが広く浸透しつつある。
 ただし、あくまでまだ表層的にとどまっているけど。
 だからプライベートでの不祥事が発覚すると、めちゃくちゃ叩かれる。
 不倫をした役者が干される。
 不倫をした議員が辞職に追い込まれる。
 不倫をした芸人が大バッシングを受ける。
 テレビから姿を消す。コマーシャル契約がダメになる。舞台も失う。
 たとえ奥さんが許したとしても世間が許してくれない。はては活動を自粛して嵐が過ぎるのを待つしかない。

「そんなにみんなでやいのやいのせめなくても。べつに法をおかしたわけでもあるまいに」

 なんぞとヘタに擁護しようものならば、飛び火して大炎上。
 あげくにネットポリスが総動員されて、過去から現在に至るまで、あらいざらいを調べあげられて、もしも過失があろうものならば……ってな具合で戦々恐々。

 一方で公私は別だと言いながら、プライベートを切り売りしている人もいる。
 自分から公私の私の部分を不特定多数にさらけ出す。
 ときには火に油を注ぐような言動をとることも。
 そのくせこう言うのだ。

「覗くな、踏み込むな、口を挟むな、関係ないでしょ!」

 世間やマスコミに文句を言う一方で、「もっと自分を見て、注目して」と請い願う。
 自分にとって都合のいいことに関してはウェルカム。
 それ以外はノーサンキュー。
 まぁ、誰だってそんなものだけれども、どうにもちぐはぐ感がぬぐえない。
 そして今日もきょうとて、誰だこれ? 何をしている人なの? というよくわかない芸能の人がツイッターでの発言を叩かれては炎上している。でもそれを困っている風ではなくて、むしろよろこんでいる。

「ちかごろなんでもアリになってきたよね」

 言ったもん勝ちな現状を嘆くミヨちゃん。
 するとおもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「承認欲求はちょろい」

 みんなから認められたいという他者承認はやっかい。
 自分のことを自分で認める自己承認はほどほどに。
 あと承認欲求は騙す側からすると、これほど扱いやすいものはない。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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