ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

972 じゅんばん

　
　国民的アイドルグループが年内にて活動を休止した。
　でも解散ではない。あくまで休止である。
　活動を再開するのかどうかは、風の向くまま気の向くまま。
　それでも希望は残っているので、ファンにとってはさみしいけれども、まずまずキレイな活動のたたみ方であったと思われる。
　活動を止めるといえば、伝説となった女性アイドルがいた。
　歌手としてだけではなく女優業にも精力的に取り組み、またたく間にスターダムへと登り詰めた彼女。
　人気絶頂の最中に結婚を機に引退を表明。
　なんとも潔い最期。
　ラストコンサートの様子はうん十年経ったいまでも語り草になっている。
　文字通り伝説となった。
　しかしそんな幸せな最期を迎えられる芸能人がいる一方で、大多数が悲惨な末路を辿る。
　自然とフェードアウトなんてのはむしろマシな方。
　ヒドイのになると捏造報道が発端となり、誹謗中傷の嵐にさらされて、精神的にも肉体的にも追い詰められて逃げるように引退するケースもある。そればかりか人生からもドロップアウトすることさえも。
　売れて天狗になったところを罠にハメられることもある。
　軽率な行動によって自滅することもある。
　バンドが仲違いして破局する。
　金銭トラブルなんて日常茶飯事。

　人気が出たら出たで有象無象が寄ってくる。
　人気がなければないで、やはり有象無象が寄ってくる。
　良縁もあるが悪縁奇縁も多く、絡み取られて身動きがとれなくなる。
　そんな舞台裏を見せられたとたんに、ファンの気持ちはたちまち冷める。
　夢を魅せる仕事だというのならば、どうかそれをまっとうして欲しいと切に願う。

　かつてやはり同じように長いこと一線で活躍していた国民的アイドルグループがあった。
　だが末路はかなりちがう。
　事務所ともめて、グループは解散し、メンバーはばらばらに。
　そして露骨に業界から村八分。かとおもえば手を差し伸べるところもあり、もうしっちゃかめっちゃか。
　だったらせめてキレイに分かれて、各々の道へと進めばいいものを。
　そこに誰の意地やら面子、思惑が介在していたのかという詳細が表に漏れてくることはない。
　それでも何やらおかしいぞ。
　と大衆は気づくもの。

　そして今日も今日とて、またどこぞで泡沫のごとくパチンとはじける者がいる。

「地下アイドルたちが絶滅の危機に瀕しているらしい」

　いろいろあってイベント、営業のお仕事が軒並み中止。
　自粛、自粛、自粛の嵐に翻弄されて、夢見る乙女たちが瀕死となっている。

「テレビ業界も、ネコやらペットばかりに救いの手をのばさないで、彼女たちも助けてあげればいいのに」

　モフモフは好きだけど、優先順位がちょっとちがくねえ？
　とミヨちゃん。
　これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「愛と正義と義理人情はステキだけど、あてにしてはいけない」

　人は自分の見たいモノしか見ない。それ以外には目をつむる。
　子猫は必死に助けるけど、シングルマザーや若者たちが困窮していても
　知らん顔。そのくせそれっぽい意見だけは吐くから、始末が悪い。
　……なんぞと、コヒニクミコは考えている。