ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

976 つぎくる

　
　事件やら出来事が起きて物語が動く。
　アニメもマンガもドラマも映画も、物語というのは総じてそういうもの。
　ゆるふわ、日常系といわれるジャンルすらも、何がしかの起点となるべきことが発生している。
　だがしかし……。

「この頃のドラマって、ちょっと安易に過激じゃない？」

　テレビっ子のミヨちゃん。
　いつものごとく仲良しのヒニクちゃんとの下校中にそんなことを言い出した。
　世にいうところのハリウッド方式というものが蔓延し業界を席捲したのは、ミヨちゃんが産まれるずっと以前のこと。
　これははじめにドカン！　と大きな花火を打ち上げて視聴者の興味をいっきに惹きつける手法。でもってジェットコースターと揶揄されるほどに、山あり谷あり、これでもかと目まぐるしい展開が続く。
　で、ラストはだいたい主役とヒロインがくっついて、熱い抱擁と口づけにてぶっちゅうとハッピーエンド。
　チープといえばチープ。ワンパターンといえばワンパターン。いわゆるテンプレともいわれている仕組み。
　けれども言葉をかえれば王道ともいえるシロモノ。
　たしかに代りばえしないのかもしれない。目新しさもないのかもしれない。
　しかしだからこそ安心して楽しめる。
　なんだかんだでみんな大好きなのだ。
　だからそれは良い。それは良いのだけれども……。

「いくらしょっぱなから視聴者のハートをグッっとつかむためとはいえ、安易にショッキングなことを起こせばいいや、という制作サイドの考えが透けてみえるのはちがう」

　ミヨちゃんが言いたいのは、必然と動機をきちんと用意して欲しいということ。
　アレやコレや片っ端から事件を起こしたあげくに、着地失敗。
　べつにキレイに軟着陸しろとまではいわない。構成に多少の粗あっても、矛盾があっても、面白いモノは面白い。
　が、むりくりひねり出した「はぁ？」というラストだけはいただけない。
　ちゃぶ台返しと、どんでん返しの間にはグランドキャニオンぐらいの深く険しい溝があるのだ。
　一話一話のクオリティはそこそこで評判がよかったのに、ラストで台無しとか、もう、ねえ。
　冒頭のインパクトが強すぎたあまりに、伏線の回収が雑になる。
　しょせんは娯楽なんだから、そこまで神経質にピリピリしなくても。
　そんなことはわかっているけれども、それでも気になるほどに近頃、暴投気味。
　学校を舞台にしたらやたらと事件が起きる。それもシャレにならない内容の。
　会社を舞台にしたら、お仕事そっちのけで色ボケ三昧だったり。
　昔とは違って話数が短いから、じっくり作品を描けないせいもあるのだろうが、いくらなんでも乱雑がすぎる。
　その一方で海外のやたらと話数のあるドラマなんかは、せっせと放送したりもするくせに……。

「わたしはゆったりのんびり作品をたのしみたい」

　幼女がしみじみタメ息。
　これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「刺激にはすぐに慣れるから困りもの」

　人はとにかく飽きっぽい。そしてよりより刺激を求める。
　そのくせすぐに慣れる。で、またすぐに飽きる。以下エンドレス。
　だからたぶんユーチューブも時間の問題だと思うの。次は何くる？
　……なんぞと、コヒニクミコは考えている。