ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

月芝

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986 ふっく

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 よくわからないアニメがある。
 キャラクターは魅力的だ。設定も面白い。随所にこだわりを感じ、完成度も高い。
 なのに肝心のストーリーだけがちんぷんかんぷん。

「なんじゃこれ?」

 という感想が多い一方で、妙な中毒性があるのか熱烈に支持している層も多い。
 やたらと専門用語だらけ。それも造語連発にて、これまた一見さんではちんぷんかんぷん。この作品のためだけの用語辞典みたいな書籍が販売されるほどに複雑難解。
 これに辟易させられ作品からそっぽを向く者もいるけれども、逆にこの病的なまでの緻密な設定やら世界観がたまらないと、喰らいつくファンもいる。
 ついには専門家を自称する輩も巷にぽつぽつ出始めるほど。
 で、話題になるし、売り上げも好調だし、関連グッズもバカ売れするから、「だったら一度、視聴してみるか」となるご新規さんもあらわれる。
 そして冒頭に戻って反応が二極化するわけだ。

 尖がっていると言えば尖がっている。
 大衆に媚びている面もたぶんにある。サービスカットとか、不要なシャワーシーンとか、いかにも男子がよろこびそうなものから、いかにも女子がよろこびそうな意味深な男同士のかけあいなんぞもあって、とにかく妄想をくすぐられてしようがない。
 そんな作品を高校生の次兄の勧めもあって視聴したミヨちゃん。
 小学二年生の幼女はぶっちゃけ首をかしげる。

「おもしろいのはおもしろいの。でも視聴後になんだかモヤモヤする」

 はっきりしない。納得しない。よくわからない。回収されない伏線。結末があやふや。

「ちょ、ちょっと、その先はどうなったの?」

 という場面が多々にて視聴者そっちのけで放り出されて、頭に大量のハテナマークが浮かんだままで、エンドロールに突入。
 観終わったあとは、なんだかもういろいろ疲れてしまって、放心状態となってしまう。

「それこそがこの作品のすごいところなんだ! とにかく深いんだよ!」

 次兄はそう力説するけれども、末妹としては素直にうなづけない。
 たんに構成が下手くそで、大風呂敷を広げたあげくに、話しをうまくまとめきれていないだけなのでは……。
 なんぞと考えちゃうわけだけど、ファンを前にしてそんなことを口にしようものならば、どうなるのかなんて考えるまでもないので、黙っておく。

 後日、この時に抱えた不満などのモロモロを仲良しのヒニクちゃんを相手にしてぶちまけるミヨちゃん。

「あげくに初登場時から十年以上も経ってるのに、ちっとも完結しないってのはさすがにどうかと思うんだけど」

 世に数多ある物語。
 時系列通りに進行するのがわかりやすくていいけれども、時には型を外れたパターンの作品があってもいい。
 それはわかる。わかるんだけど……。

「やっぱりモヤモヤする」とミヨちゃん。

 これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「そのモヤモヤこそが大ヒットの秘訣」

 心に刺さる、もしくは心に引っかかるという表現がある。
 相手の心に強く働きかける何かがあること。
 問題はその何かが時と場合によってコロコロ変わること。
 狙って放ったフックはたいていかすりもしないから悩ましい。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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