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003 つばくろ
しおりを挟むたぬきバスを降りたら、たくさんの生徒たちの姿がありました。
クダンちゃんはドキドキしながら、校舎へと向かう人の流れにまざって進みます。
自分に対する周囲の反応が気になりますが、さりとて確認する勇気はありません。
つい足がすくんで立ち止まりそうになる。
うつむいてしまいそうになる。
あっ、イケない。じんわり涙が滲んできたかも。
クダンちゃんはブレザーのポケットに手を入れて、なかのお守りをギュッと握りました。
これはお手伝いのカゲリさんから貰ったお守りです。
「もしも心細くなったら、これを握ってください。そうすれば天神さまがきっと守ってくださいますから」と出がけに持たされました。
神様が本当にいるのかはわかりません。
でも、カゲリさんに言われた通りにすると、本当に落ちつきを取り戻せました。
もう大丈夫。
(ありがとうございます、天神さま)
心の中で感謝を述べて、クダンちゃんは歩き出しました。
大勢の生徒たちが坂をのぼって行きます。袖がやや長い制服姿はおそらく自分と同じ新入生たちでしょう。すぐに体が大きくなるからと、ちょっと大きめなサイズを用意するのは、親御さんあるあるですね。
少し着崩していたり、校則に触れない程度にいじってオシャレを楽しんでいるのは上級生たちでしょう。すっかり制服を着こなしており、じつに堂々としたものです。
(自分も来年にはあんな風になれるのかしらん?)
ちょっと想像ができないので、クダンちゃんは「うーん」
生徒たちの群れの中には正装をした大人もけっこう混じっています。これらはたぶん入学式を見学にきた保護者の方々でしょう。
クダンちゃんのところも、あとで三人そろって来るといっていましたし。
公立つばくろ高校。
それが今日からクダンちゃんが通う学校です。
つばくろとは鳥のツバメのことだそうです。あいにくとクダンちゃんは本物を見たことがありませんが、いっぱい学んだ子どもたちが元気に巣立ち、また立派になって戻ってきますようにとの願いを込めたと、学校案内のパンフレットに書いてありました。
坂道をのぼった先では、まるで時代劇に登場するお城にあるような、立派な櫓門が生徒たちをお出迎え。
門の内側の両サイドには筋骨隆々なウサギとカメの木像が飾られています。
ぎろりとこちらを睨む瞳が、いまにも本当に動きそう。
すごい迫力で、ちょっと浮かれていた気分もピシッと引き締まるおもいです。
門をくぐれば、いよいよ学校の敷地内。
内と外で、まるで色彩や空気までもが華やぐように感じ、クダンちゃんはおもわず「うわ~」と感嘆の声を漏らしてしまいます。
でもそう感じていたのはクダンちゃんだけではないようで、他の新入生たちも似たような反応でした。
緊張と興奮、不安と期待などを胸に抱き、おずおず、初めて校内に足を踏み入れる下級生たち。
その姿に過去の自分を重ねるのか、上級生たちの表情はとても優しげ。
周囲からの温かい目に見守られつつ、クダンちゃんの高校生活がついにスタートします。
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