それいけ!クダンちゃん

月芝

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019 お菓子の楽園

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 キーンコ~ン、カーンコ~ン。
  キーンコ~ン、カーンコ~ン。

 終わりを告げるチャイムが鳴りました。

「ハイ、それまで~。ほら、そこ、悪あがきしないの!」

 教壇にてヨーコ先生が声をかけるなり、生徒たちはえんぴつを置きました。
 うしろからプリントを集めるようにとの指示に従い、すみやかに回収されていく答案用紙。
 それを受け取りまとめた分を抱え、ヨーコ先生が教室から出て行ったとたん、クラスの誰かが「はぁ~」と深い吐息を零しました。

 それを皮切りにして、ここしばらく続いていた張り詰めた空気が、じょじょにほどけていきます。
 おそらくこれは一年二組の教室だけでなくて、学校全体にも共通していることでしょう。
 みんなの顔にも余裕が戻りつつあります。

 原因は一学期の中間テスト。
 高校生になってから初めての試験です。まださして授業は進んでおらず、範囲はしれており、かつ難易度もさほどではありません。
 とはいえ、新生活一発目。
 ここでつまづくか、うまくいくかでは雲泥の差。今後の高校生活の試金石となりかねない……かもしれません。

 テスト期間が刻一刻と近づくほどに、いやがおうでも高まる緊張。みんなの目つきも自然と険しいものに変わっていきました。
 入学直後からそこはかとなく漂っていた浮かれ気分も払拭され、ひりつく焦燥感に苛まれつつ、迎えた本番の日。
 そこからは怒涛の展開にて、テスト! テスト! テスト!
 と続き、最終日までひたすら駆け抜けるのみ。

「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」と己を鼓舞しては、襲い来る睡魔や数々の誘惑と闘いながら、机にかじりつき、教科書やノートとにらめっこ。

 ですが戦いは終わりました。
 そんな過酷な日々から、ようやく解放されたのですもの。
 誰だってホッとして気が抜けちゃいます。
 かくいうクダンちゃんもそうでした。とくに彼女の場合、学校に通うのも初めてならば、みんなと机を並べて勉強をするのも、試験を受けるのも初めてです。初物尽くしです。

 えっ、高校の入学試験はどうしたのかですって?

 …………さぁ?
 少なくともクダンちゃんは試験会場とやらに出向いた覚えばありません。
 もっとも家でカカさまとカゲリさんに勉強を教わっている時に、それらしい問題集は解かされたので、もしかしたらアレが入試の代わりだったのかも。
 こうして学校に通うことが許されているということは、それに相応しい学力を身につけていると判断されたからのはずです……たぶん。

 それで肝心のテストの出来なのですが、けっこういい感じ。
 すべての解答欄を埋められたし、きちんと見直しもできました。手応えもあります。
 なのでクダンちゃんはそこそこ自信あり。
 でも、それはクダンちゃんだけではないようで、クラスメイトたちの大半も同じらしく、この分では、一年二組全体の平均点もわりと高めになっているかもしれません。

「あー、終わった終わった。やるだけやったし、あとは野となれ山となれってね。それよりも、みんなこのあと用事ある? ないんだったら打ち上げしない」

 カエちゃんが言い出しました。
 場所はつばくろ高校近くの商店街にある駄菓子屋。
 駄菓子屋と聞いて、クダンちゃんは色めき立ち、耳がピコピコ。

 ウワサに聞くところによると、駄菓子屋とは健全な若人らが集う社交の場にして、お菓子の楽園であるという。
 店内をぎっしりお菓子が占め、種類豊富にしてどれも格安、そのくせ体にもいい品ばかり。味については、まぁ、それなりに。
 飲食スペースもあるので、そこでお菓子をつまみながら、メロンソーダで乾杯でもしようとのお誘い。

 たぬきバス通学のクダンちゃんは、いつも寄り道をせずに真っ直ぐ家に帰ります。
 ですが、たまにはいいでしょう。それに駄菓子屋にも前々から行ってみたかったですし。
 なのでクダンちゃんは「ぜひ、お供させてください」と、それはもう前のめりに参加を表明しました。
 おべんとう仲間のハッちゃんとチエちゃんも「いいよー」「行こう行こう」
 するとクダンちゃんたちのやりとりを小耳に挟んだ、クラスメイトたちの中からも、「私も行きたい」「ボクも」という声があがり、いつしか十人ほどにまで参加メンバーが膨れ上がっていました。

 ですが、いざ、みんなで駄菓子屋へくり出そうと腰を上げかけた時――

『ピンポンパンポーン♪ 生徒のお呼び出しを申し上げます。一年二組の与謝野郡駒騨よさのこおりくだんさん。お話ししたいことがありますので、職員室まで来てください』

 まさかの呼び出し!

 これにクラス中が、ざわざわざわ……
 なにせ校内放送での呼び出しは、生徒にとっては出頭命令に等しいもの。
 無視したり拒絶することは許されません。
 しかしわざわざ呼び出されるということは、それ相応の理由があるということ。
 まったく身に覚えのないクダンちゃんは内心でひどく困惑していましたが、とりあえず職員室へと向かうことにしました。
 なので、駄菓子屋はおあずけです。とほほ。


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