それいけ!クダンちゃん

月芝

文字の大きさ
22 / 71

021 園芸の鬼、特別部活動の日

しおりを挟む
 
 今日は園芸部の特別部活動の日。
 管理している温室を飛び出しては、外での活動となります。
 とはいっても場所は同じ校内ですけれど。

「総員、せいれーつ!」

 部長の威勢のいい掛け声により、部員たちはすぐさまビシっと横並びとなります。
 園芸部の部長は大谷津姫おおやつひめという三年生の女性です。
 細目でほんわかした雰囲気を持ち、三つ編みがとても良く似合うおっとりした先輩で、花と土をこよなく愛す、胸もたわわな淑女。

 豊穣を司る女神のような彼女ですが、さすがは園芸部の看板を背負っているだけあって、植物関係の知識は相当なもの。また研究熱心でもあり、新入生へと向けた部活紹介イベントのおりに公開された、あのステキな銀のバラを手がけたというのですから、本当にたいしたものです。
 知識をひけらかしたり、えらそうに振る舞うこともなく、新入部員のクダンちゃんにも親切にしてくれます。

 大谷部長は小さい頃から草花が好きだったそうですが、あいにくとサラリーマン家庭で団地暮らし。
 庭がないので、ベランダで鉢植えぐらいしか育てられない住環境。
 ゆえに大谷部長にとって、園芸部の温室は特別で、思い入れもまた格別。
 いずれは郊外に自分だけの花園を持つのが夢なんだとか。
 だからなのでしょう。植物を粗略に扱うような行為を見かけたら、頭からにょきにょきツノが生えて、菩薩がとたんに羅刹に変わっちゃう!

 クダンちゃんは偶然にも一度だけ、その場面を見かけたことがありました。
 あれはサッカー部がうっかり花壇にボールを蹴り入れてしまった時のこと。
 きっとわざとではなかったのでしょう。
 でも、そのあとがいけません。ズカズカと花壇に踏み込んでしまったのです。
 その乱暴狼藉を目にして大谷部長は激怒しました。
 当事者たちをショベルでボコボコにしただけでは飽き足らず、サッカー部の部室へと単身抗議に乗り込みました。

 あいにくとクダンちゃんが見かけたのは、屈強なサッカー部員たちをメタメタにしているところだけにて。
 そのあとのことですが、ウワサに聞くところでは、居合わせた部員らをまとめて固い地面の上に正座させ、さらに膝の上に40Lサイズのガーデニング用培養土の袋を重石代わりにのせて、こんこんと一時間も説教をしたというから凄まじい。
 大谷津姫という御仁は、自他ともに認める園芸の鬼です。

 みんなが揃うを見届けてから、大谷部長は続けて――

「装備かくにーん! 頭から順に、麦わらー」
「「「「「麦わらー」」」」」 

 部長の掛け声を部員たちは復唱しつつ、自分の装備を指さし確認する。もちろんクダンちゃんもいっしょに声を張りあげます。
 この調子で続けて、アームカバー、軍手、タオル、作業用エプロン、つなぎのズボン、長靴などなど。忘れ物がないかをチェックしていきます。
 それが終わったら「総員、右向け右! 進め!」

 ピッ、ピッ、ピッ、ホイッスルを吹き先導する大谷部長に、クダンちゃんたち部員らはついていきます。
 その姿は軍隊の勇ましい行進――というよりかは微笑ましいカルガモ親子のお引越しのよう。
 あっ、そういえば本物のカルガモ親子の移動も、そろそろのはず。

 毎年、四月頃に人工池でタマゴから孵って、五月の上旬に第13ドーム内を縦断している芥川あくたがわへと移動します。風物詩みたいなものにて、そのさなかには道路が封鎖されて、リアルタイムでテレビ中継も入ります。
 毎年、クダンちゃんもテレビの前にかじりついては、ハラハラしながら見守っているうちのひとり。

 それはさておき……
 園芸部一同が向かったのは校舎の前庭です。 
 本日は月に一度の庭木の手入れの日。
 園芸部はそのお手伝い。

 えっ、いやじゃないのかですって?

 とんでもない! むしろ逆です。
 なにせ間近の特等席にてプロの庭師たちの技をじっくり拝見できて、なおかつ運がよければいろいろアドバイスもいただけるのですから。部のOBのなかには、これが縁となって庭師に弟子入りした方もいるんだとか。
 ですから園芸に携わる者としては願ったりかなったりなのです。

 前庭に到着した園芸部一同は、直立不動にて待機中。
 そうしたらさして時を置かずに、ゆるゆると軽トラックが近づいてきました。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする

エース皇命
青春
《将来ヤンデレになるメインヒロインより、サブヒロインの方が良くね?》  16歳で自分が前世にハマっていた学園ドラマの主人公の人生を送っていることに気付いた風野白狼。しかしそこで、今ちょうどいい感じのメインヒロインが付き合ったらヤンデレであることを思い出す。  告白されて付き合うのは2か月後。  それまでに起こる体育祭イベント、文化祭イベントでの恋愛フラグを全てぶち壊し、3人の脈ありサブヒロインと付き合うために攻略を始めていく。  3人のサブヒロインもまた曲者揃い。  猫系ふわふわガールの火波 猫音子に、ツンデレ義姉の風野 犬織、アニオタボーイッシュガールの空賀 栗涼。  この3人の中から、最終的に誰を選び、付き合うことになるのか。てかそもそも彼女たちを落とせるのか!?  もちろん、メインヒロインも黙ってはいない!  5人の癖強キャラたちが爆走する、イレギュラーなラブコメ、ここに誕生! ※カクヨム、小説家になろうでも連載中!

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。

処理中です...