25 / 71
024 緑の憤怒作戦 前編
しおりを挟む一度、部室へ戻り装備を整えてから、いざ出陣!
いよいよモズラ退治です。大谷部長は「緑の憤怒作戦」と今回の戦いを命名し、意気込み十分です。部員たちの士気も高いです。
とはいえ相手はあのモズラです。
さすがに園芸部員だけではいささか心もとない。
ですが、心配はいりません。
「モズラとあっては見過ごせねえなぁ? 左門よ」
「あたぼうよ! 右門。ここで奮い立てねえやつは庭師じゃねえ」
レジェンド・ツインズが参戦を表明してくれました。
数多の庭で活躍し、幾多の害虫や害獣を駆除してきたおじいちゃんたちがいたら百人力です。
伝説の樹に取りついたモズラ。
繭はかなり高いところにあります。
クダンちゃんたちでは、ちょっとのぼれそうもありません。
そこでレジェンド・ツインズが「だったらワシらがどうにかしよう」「まかせておけ」と言ってくれました。
ハシゴを使った軽業は庭師のたしなみだそうで、高いところもなんのその。
作戦の概要はこうです。
左門、右門の両名が木を登り、繭と木肌の間に楔を打ち込み、これを分離する。
落ちてきたモズラを、園芸部一同で囲んですかさずボコる。
ただし、長柄の得物の扱いに慣れていないと、かえって味方を傷つけかねないので、クダンちゃんら一年生たちは近づきません。
その代わりに背負った噴霧器よりシュコシュコと、殺虫剤をかけて先輩たちを援護します。
今回用意した殺虫剤は、木酢液、ニンニク液、トウガラシ液、アセビ液、それからインスタントコーヒーの五種類。
木酢液は木炭や竹炭などの製造時に副産物として抽出されるもので、含まれる酢酸やアルコールには、殺菌や菌の生長を抑える効果があるとされています。ウソかまことか、あの水虫にも効くとか効かないとか。
ニンニク液には硫黄化合物が、トウガラシ液にはカプサイシンが、アセビ液にはアセボトキシンなる強力な殺虫成分が含まれています。
そしてコーヒーの場合はカフェインが忌避物質として働くんだとか。
ちなみに忌避物質とは、動物の摂食行動や産卵行動を抑制する物質にて、昆虫類はとくにこれを嫌がり避けるという。
どれも天然由来にて植物と環境に優しいものばかり。
もっとも良薬も過ぎれば毒になりますから、用法用量を守って正しく使わなければいけません。
それから今回の作戦に投入される噴霧器は手押し式です。
装備がちゃんと動くか最終確認をし、伸縮ノズル片手にスタンバイするクダンちゃんら一年部員。二年と三年部員らはビリビリ槍の調子を入念にチェック。
みんなの準備が整った頃合いを見計らって、上から声が降ってきました。
「そろそろいくぞー」
「ワシらはすぐに修復作業に入る。そっちはたのんだぞー」
これに対して大谷部長が代表して「わっかりましたー」と応えたところで、左門さんが懐からシャランと取り出したのは一本の銀の糸。
表面に細かいギザギザがあるそれはワイヤーソー。
ワイヤーソーは、糸状のノコギリです。
「そいや」
放たれたワイヤーソー、その一端を受け取った右門さん。
やにわに引き合いっこを始めました。
「そいや! そいや! そいやそいや!」
「そいや! そいや! そいやそいや!」
ふたりは阿吽の呼吸にて、息ぴったり。
これは双子ならでは、さすがです。
リズミカルにギコギコギコギコ……
糸が前後するたびに、パラパラ舞い散る削りカスが、木漏れ日を受けてきらめく。
みるみる切り進んでは、大樹にしがみついている繭を引きはがしにかかりました。
切除作業を固唾を呑んで、下から見守っているクダンちゃんたち。
やがて――
「そろそろ落ちるぞー」との声。
直後のことでした。
樹から繭が剥がれました。
途中にあった枝らを押しのけ、ときにへし折り、繭が落っこちてきます。
下からではわからなかったのですが、これがまたおもいのほかに大きい!
しかも枝に当たることで落下軌道が右へ左へとブレまくりで、ちょっと予測が難しい状況になってしまいました。
このまま固まっていたらマズイと判断した大谷部長は「さ、散開っ! ぼんやりしてたら潰されるからー」
急な指示に部員らはアタフタ。それでもどうにか持ち場から離れたところへ、ドォオォォォン!
白い繭玉が落下してきました。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか
サクラ近衛将監
ファンタジー
レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。
昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。
記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。
二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。
男はその未来を変えるべく立ち上がる。
この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。
この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。
投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる