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030 駄菓子屋 ― 日光仮面
しおりを挟む日光仮面は小さな子どもたち――とくに男の子たちの間で大人気の特撮番組です。
毎週、日曜日の朝に放送されており、この時間帯だけはやんちゃな子どもたちも、お茶の間のテレビの前に釘付けになるんだとか。
あいにくとクダンちゃんは番組を観たことがありません。
けど、お手伝いのカゲリさんから聞いたところでは、毎回、どきどきハラハラな展開にて、子どもたちの冒険心をおおいに掻き立てる内容なんだとか。
イートインスペースの暗がりから声をかけてきた仮面の子が、おもむろに取り出したアレは……
んみゃー棒のパクチー味!?
かなり癖が強く、好みがわかれており、子どもたちの間でも賛否両論を巻き起こしているという、あのパクチー味!
それを指先で器用に、くるくるくるくる。
ノールックにてフフンと鼻歌まじり。
手元で華麗に回したてみせたとおもったら、大きく振りかぶっては、いきおいよく自身の膝頭にぶつけて、パンッ!
んみゃー棒の袋開いて、とたんに漂ってきたのは青々とした香り。
ときにカメムシ臭とも揶揄されるのはパクチー特有のものです。とても駄菓子とはおもえぬクオリティ、驚嘆です。企業努力おそるべし。
まぁ、それはさておき。
この開け方は上級者だけがマスターしている高等テクニックです。
なおクダンちゃんら初心者は、ふつうに包装紙の端からピリリと破きます。
おそらくは空気圧を応用したのでしょうけど。
ちょっとかっこいいかも……
クダンちゃんは羨望のまなざし。
ですが、これにムッとしたのがカエちゃんです。
カエちゃんは対抗意識を燃やし「はん、そのぐらいどうってことないわね」と言っては購入したばかりの、んみゃー棒のサラミ味とミネソタバーガー味を左右の手に持っては、くるくるくる。
チアリーディングのバトンのごとく操ったとおもったら、目にも留まらぬ早業にてパン、パン!
自身の膝にて二本を開封してみせました。
んみゃー棒二刀流!
卓越した妙技に、クダンちゃんは「おぉー」とおもわず拍手。パチパチパチ。
双方ともに譲らず。
にらみ合うことしばし。
なんともいえない緊張感が漂って、重い沈黙の中で、駄菓子屋の壁にかかっているハト時計が「クルックゥ」と鳴きました。
どうしていいのかわからずに、クダンちゃんはオロオロと気を揉むばかり。
ですが……
フッ。
どちらからともなく、そんな吐息がもれ聞こえたとおもったら。
「なかなかやるな」
「あんたこそ」
張り合っていたふたりが一転して互いを認めたもので、クダンちゃんもほっと胸を撫で下ろしました。
袖振り合うも多生の縁と申します。
せっかくだからと、クダンちゃんたちは相席することになりました。
仮面の男の子は「日光仮面」と名乗っています。けっしてお面をはずそうとはせず、お菓子を食べるときには、器用にお面をわずかに持ち上げて、素早くモグモグ。
「ヒーローの正体はヒミツなんだぜ。だれも知らない、知られちゃいけないんだ」
確固たるポリシー。
どうやら男の子は役に成りきっているらしく、これはこれで微笑ましいので、クダンちゃんとカエちゃんは話を合わせてあげることにしました。
で、仲良く駄菓子をつまみつつ、ひとしきり駄菓子屋談義に花を咲かせたところで、クダンちゃんが思い出したのは、先ほど注意を受けたことについて。
「それで……どうして山登りゲームはやっちゃダメなんですか?」
おもわずお面の目の奥を覗き込むような仕草にて、じーっ。
クダンちゃんが見つめれば、仮面の子はプイっとそっぽを向いてしまいました。
おや? もしかして照れているのかしらん。
そんな仮面の子に「なによ、あんた? いっちょまえに色気づいてんの」とカエちゃんがからかえば「うっせー」と仮面の子はむくれつつも、あのコインゲームについて教えてくれました。
「あれって簡単そうにみえて、じつは激ムズなんだよ。別名『コインイーター』と呼ばれている。ゴールの頂上まであと少しってところで、どれだけの挑戦者たちが涙をのんだことか。
オレの知るかぎりじゃあ、この店でもクリアしたやつはひとりしかいない」
なんと! 前人未踏の山を踏破した偉大なクライマーがいらっしゃるのですか。
これにはカエちゃんも「あれをクリアしたっていうの!? 信じられない……」と驚きを隠せないよう様子です。
仮面の子によれば、その唯一のクリア者――伝説の人物は女性らしいです。
いったいどのような猛者なのでしょうか。
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