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069 レッドクィーンを撃破せよ!
しおりを挟む壊れた武器から引き金と銃床の箇所だけを取りはずす。
そしてあらたに銃身を組み立てる。大きさはいままでの倍ほどもあるようなのを。
イメージとしては豆鉄砲からバズーカにパワーアップするみたいな。
けれども、完成を悠長に待ってくれるほどレッドクィーンも甘くはない。
次々に振り下ろされる前足をかわしつつ、わたしは落ちているブロックのパーツを拾っては組み立て、また回避するをくり返す。
「――っく、結局、ここでもドタバタ走ってばっかりじゃないの」
文句を言いつつ逃げ回っていたら「チチチ」と一枝さんがさえずりっては「あっちにいい感じのパーツがあるよ」と教えてくれた。
聡い一枝さんは早くもわたしの意図に気がついたらしく、こうして手助けをしてくれている。
そのかいあって、かなり形に成ってきた。
あとは銃口部分にあたる先端にそれっぽいパーツをつけたいところ。
キョロキョロ探していたわたしは「コレだ!」とおもわず叫んだのは、向うの瓦礫の山の天辺にちょこんとあるブロック片だ。
茶筒のような形をしており、色は赤で半透明をしている。これこそ光線銃の先っぽにふさわしい。
だから振り下ろされたレッドクィーンの足の下を掻い潜っては、目当てのパーツのところへ向かおうとしたのだけれども――
ブゥウゥゥ~ン!
これまでとはちがう音がしたもので、わたしはとっさに地面に伏せた。
その頭上をムチのようにしなって越えていったのは……触覚!?
レッドクィーンが業を煮やして、ついに前足だけでなく長い触覚まで振り回し始める。
縦の攻撃だけだったところに、急に横の攻撃が加わったことで、回避難易度が格段にアップした。わたしは避けるので精一杯となり、とてもではないがパーツにまでは手が届かない。
回収に手間取っているうちに、さらなる悲劇が起こる。
無造作に振られた触覚の一撃が、あろうことか目指すパーツのある瓦礫の山を薙ぎ払ってしまったのだ。
「きゃあぁぁぁーっ」
ガラガラと崩れる山、ブロック片が大量に散乱しては、雪崩すらも起こし、近くにいたわたしはこれに巻き込まれてしまった。
〇
「ミユウ! ミユウ! しっかりおし!」
必死に呼ぶ一枝さんの声でわたしは意識を取り戻した。
ちょっと気を失っていたらしい。
うぅ、まだ頭がくらくらする。
それでもすぐに起き上がろうとするも「なっ!」
動けない、下半身が埋まっていた。
どうやら足が挟まれてしまったらしい。抜け出そうと懸命に身をよじるも。
「マズイよミユウ、新手だ!」
叫んだのは一枝さん。
さっきのレッドクィーンの一撃によって周辺の地形に変化が生じ、開いた隙間から女王の護衛役のデカアリらがついに駆けつけてきたのだ。
レッドクィーンだけでも手こずっているというのに最悪の展開である。
もはや万事休すかとわたしは諦めかけるとも、その時のことであった。
視界の片隅にてキラリと赤く光るモノがある。
目当てのパーツだった。それさえあれば新しい武器が完成する。
だからわたしは懸命に手をのばす。
「ふんぎぃ~、あとちょっと、ほんの少し……」
なのに届きそうで届かない。
そうしている間にもデカアリが近づいてきていた。
わたしはますますあせるばかり。でも気持ちとは裏腹に、パーツへの距離はそれ以上縮まらずに、ついにタイムアウトを迎えてしまう。
デカアリがすぐ目の前にやってきた。
もはやこれまでか……と、わたしもガクリ。
でもここで小さな奇跡が起きる。
わたしへと近づこうと一歩踏み出したデカアリ、その足に例のパーツがこつんと当たってこちらに転がってきたのである。
もちろん、すぐさま拾って組み立てた。あとはわたしの推測が当たっているかどうか。悠長に試している時間はない。ぶっつけ本番にて、わたしは引き金をひいた。
とたんに、ドーンッ!
強い衝撃が生じ、わたしの身は埋もれていた瓦礫から引き抜かれただけでなく、反動で後方へと飛ばされていた。
「あ痛たたたた」
顔をあげたわたしは目の前の光景に「……」と言葉も出ない。
なぜならデカアリが一撃で粉砕されているばかりか、背後の瓦礫もごっそり抉られていたから。
けっして意図したわけではないけれど、わたしは相当にヤバい武器を作り出してしまったらしい。
そしてこれによりわたしの仮説は実証された。
「でも、これならきっと勝てる!」
息を吹き返したわたしは立ち上がると、新兵器を手にレッドクィーンのもとへ「うぉー」と駆けてゆく。
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