古道具屋・伯天堂、千花の細腕繁盛記

月芝

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097 ただいま通行止め中

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 つかず離れず、チョロチョロと。
 遠巻きについてくる黒ブルゾンの男たち。
 最初のうちは背後だけだったのが、いつしか視界のあちらこちらに、出没していた。

「じょじょに増えているな。数にモノを云わせて、こっちを囲むつもりみたいだな」

 連動している男たちの動きに、綺子はムスっと顔をしかめる。

「だったらさっさと南側へ移動したほうがいいかも」

 駅の向こう側にさえ渡ってしまえば、千花のホームだ。
 どうとでも対処できる。

「あーいう風に、やたらと群れるところがカッコ悪いのに。どうして気づかないかなぁ」

 チーマー「ウォーリアーズ」のボスから一方的に言い寄られ、 たいそう迷惑している凛子はタメ息混じりに言った。

「はぁ~ないわぁ、うん、あれはない。たとえ無人島でふたりきり……。いいえ、地球上でふたりきりになっても、ありえない」

 ウォーリアーズのボス轟沈す、残念!
 完全拒絶である。いやはや、ずいぶんと嫌われたものだ。
 これには千花と綺子もちょっと苦笑い。

「あわわわ、破落戸ごろつきたちがあんなにたくさん! どうしましょう、あぁ、どうしましょう」

 オロオロしてるのは幽霊の日向子である。
 町中ということもあり、いまは白装束の姿ではなくてふつうの格好でふよふよしている。おかげでいまのところ、周囲から奇異な目を向けられることはない。たぶんこちらをつけ回しているウォーリアーズの面々にも正体はバレていないはず。

 じつは日向子の反応こそが、乙女としては一番正しかったりもする。
 ふつうは徒党を組んだ輩に追いかけ回されたら怯えるもの。
 だが綺子からすれば「まぁ、竜神の姉さんらに比べたら、あんなのミミズに毛が生えたようなもんだし」

 白竜のビアリさんと黒竜のニガレオスとの揉め事に巻き込まれたことがある身からすれば、なんてことはない。なにせあの二人は歩く天災みたいなものにて、やることなすことデタラメであったもので。

 千花としても「しょせんは生身じゃない」程度の認識にて。
 古道具屋という商売柄、いわくつきの品や奇妙な出来事に遭遇することもしばしば。
 ぶん殴ったらきちんと昏倒する。単純な物理攻撃が効くだけ、理不尽な怪異よりも男たちの方がよっぽどマシなのだ。

 凛子にいたっては「あー、キコちゃんとセンカちゃんのふたりが、きっとなんとかしてくれるはず」と他力本願にて。

 生きてる乙女たちより、死んでる自分の方がよほど狼狽している。
 そのことに日向子は「あれぇ?」と首をかしげている。

  〇

 とりあえず四人は駅の南側を目指すことにした。
 だがしかし……

「ちっ、ダメだ。しっかり見張りがついていやがる」

 北側エリアから南側へと渡れる場所は三つある。
 ひとつは駅から線路沿いに、東へと少しいったところにある踏み切り。
 ひとつは駅を挟んで反対側の西にある地下通路。
 ひとつは駅構内を抜ける経路。

 踏み切りへと向かった一行は、ウォーリアーズのメンバーらが付近にたむろしているのを見て、くるんと回れ右する。
 強硬突破をしてもいいが、踏み切り内での乱闘騒ぎはさすがにマズイ。
 電車が止まる事態になれば、最悪、鉄道会社から損害倍書を請求されかねない。
 ウワサでは数千万単位で請求されちゃうんだとか。
 もっともそんな金額、ポンと払える人の方が少ないから、支払い能力を踏まえて、ある程度減額した金額を支払う内容で和解をするケースがほとんどらしいけど。

 バカな野郎どもに付き合ったあげくに、身銭を切らされるとか冗談じゃない!
 というわけで、駅の方へと向かうも、こちらもダメ。
 ならばと地下通路へ赴けば、「おっ、黒ブルゾンがいないみたい。いまのうちに通り抜けちゃおうよ」と凛子
 だが、それを「ちょっと待った」と綺子が制止する。

「なんだか様子がおかしい。夕方のこの時間帯に、連中どころか誰も通らないなんてこと、ありえるのか?」

 言われてみれば、たしかにその通りにて。地下通路は無人だ。
 だから日向子に頼んで、姿をかくしてちょいと地下通路の様子を見てきてもらったところ……

「『ただいま点検作業中につき通行止め』っていう看板が、向こう側の出口のところに立て掛けてあったよ。で、こっち側には赤い三角コーンに黄色と黒のポールが置いてあった」

 よりにもよってこのタイミングで?
 そのわりには近くに点検のための車両も停まっていなければ、それらしい作業員の姿も見当たらず。

 あ、怪しい……


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