323 / 475
323 天下一武闘会・四番目
しおりを挟むボーン、ボーン、ボーン……
霧の中に響くのは古時計の音。
それにともなって崩れた楼閣や、割れた石舞台、都内のあちこちに生じていた陥没などが回復していき、元通りになっていく。
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン……
それにしても映像を逆再生しているかのような光景は、何度みても気持ちが悪い。
どうにも怖気が走る。
蘇った亡者たちよりも、よほど嫌悪感を抱かせる。
不変であるはずの時の流れ、それを逸脱している現象のせいであろうか。
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン――
古時計の音が止まった。原状回復も完了する。
(……にしても、また同じ回数か。再生には法則なり、決まりでもあるのかしらん)
時計の音がしたのは、きっかり13回であった。
深愛のディレクティオの能力なのだろうけど、あの女は時を操る魔女なのか?
だとしたら、とんでもないこと!
(でも、なんでもかんでも自由自在にとはいかないみたい。個人? 故人? とか特定の場所とか、限定した対象にしか力を使えないっぽいし。もっともそれでも充分に脅威なんだけどねえ)
戦いの合間に、こそっと観察やら考察を重ねているけれども、まだまだ情報が足りない。
一方で、こちらは一戦ごとの手の内を晒すことになっており、手札がみるみる減っていくばかり。
「う~ん、このままいくと五番目を終える頃には、丸裸にされちゃっているかも。それはいささかマズイよねえ」
とはいえ、じつは光明というか、ディレクティオの能力の穴みたいなのも発見してある。
それを教えてくれたのは神殺しのケルトだ。
あの古強者……なんだかんだで最後まで自分の流儀を貫いていたようにおもう。
その前に戦った天弓のミライアは、ただただ『獲物を狩る』『敵を倒す』のみに徹した行動にて。そこに熱はなく、おそろしく淡々としていた。
一方でケルトは完成された騎士として、あくまで剣での勝負を求めた。
「ぶっちゃけ、サクタ以外、あまり眼中になかったみたいだし」
あー、つまり私が何を言いたいのかというと、英霊の亡者たちってば召喚主であるディレクティオの命令には従っているけれども、必ずしも絶対服従しているわけじゃないということ。
ひょっとしたらディレクティオの気まぐれひとつで、体の自由とかを奪われて言うことを聞かされるのかもしれないが、少なくとも心や魂のすべてまでもが支配されているわけじゃないっぽい。
ディレクティオが厳選した英霊たち。
強さはもとより、魂の輝きも他とは一線を画す。
彼女の誘いに応じ、差し出された手をとったとはいえ、だ。
そんな魂の持ち主が、他者にいいように使われ続ける?
本当に?
……私はそうはおもわない。
いろいろと制約を受ける中にあってさえ、我を貫いていたようにおもえる。
ミライアはミライアなりに、ケルトはケルトなりに。トムラウシは……ちょっとわからない。
この考え……希望的観測といえばそれまでだけれども、じつは私には確信めいたものがある。
目だ。
砂漠にて再び相まみえた不倶戴天の敵。
その双眸、奥底には以前と変わらぬ、いやそれ以上にも増した強い妖光があった。
唯我独尊。
何人とも並び立たず、また何人の下にもつかず。
天上天下、あるは自分のみ。
傲岸、不遜、暴慢、渇望、執着……
それらが凝り固まったものを、私は確かに視た。
(アレが……あの暴虐なる王が、いつまでもおとなしくしているもんか)
従順なフリをして、おそらく隙を伺っている。
はめられた窮屈な首輪を引き千切り、再び自由を得るための機会を虎視眈々と。
そして案の上というか、予定調和というか。
残りが二枚となった対戦カード。
ディレクティオが引いたのは、禁忌なる者『人工生命体ムジーナ』の名が記されたカードであった。
ムジーナは、私たちがこの都を訪れた際に出迎えてくれた、のっぺらぼうの宮女であった。
31
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
狐侍こんこんちき
月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。
父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。
そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、
門弟なんぞはひとりもいやしない。
寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。
かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。
のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。
おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。
もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。
けれどもある日のこと。
自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。
脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。
こんこんちきちき、こんちきちん。
家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。
巻き起こる騒動の数々。
これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
冒険野郎ども。
月芝
ファンタジー
女神さまからの祝福も、生まれ持った才能もありゃしない。
あるのは鍛え上げた肉体と、こつこつ積んだ経験、叩き上げた技術のみ。
でもそれが当たり前。そもそも冒険者の大半はそういうモノ。
世界には凡人が溢れかえっており、社会はそいつらで回っている。
これはそんな世界で足掻き続ける、おっさんたちの物語。
諸事情によって所属していたパーティーが解散。
路頭に迷うことになった三人のおっさんが、最後にひと花咲かせようぜと手を組んだ。
ずっと中堅どころで燻ぶっていた男たちの逆襲が、いま始まる!
※本作についての注意事項。
かわいいヒロイン?
いません。いてもおっさんには縁がありません。
かわいいマスコット?
いません。冒険に忙しいのでペットは飼えません。
じゃあいったい何があるのさ?
飛び散る男汁、漂う漢臭とか。あとは冒険、トラブル、熱き血潮と友情、ときおり女難。
そんなわけで、ここから先は男だらけの世界につき、
ハーレムだのチートだのと、夢見るボウヤは回れ右して、とっとと帰んな。
ただし、覚悟があるのならば一歩を踏み出せ。
さぁ、冒険の時間だ。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる