竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

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335 ラウンドアバウト

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 囮として逃げ回りつつ、はぐれた仲間たちを回収し、ついにはサクタやベンケイら主力とも合流を果たしたところで次に目指すのは、目星をつけていた都内のとある場所だ。

 丸く開けた場所で、八方から道が通じている合流地点。
 いわゆる環状交差点とか、ラウンドアバウトと呼ばれるもので、これに信号機やら一時停止が設置されているとロータリー交差点となる。
 古代ローマの頃から基礎設計はあったらしい。
 近代になって乗合馬車の普及にともない、運行をよりスムーズにするために誕生したんだとか。
 こじゃれた造りは都市部の景観にもマッチしており、フランス・パリにあるシャルル・ド・ゴール広場などが有名であろう。凱旋門があるところね。

 というわけで、やってきました! 霧の都のラウンドアバウト。
 中央の空きスペースが広場みたいになっており、かつてはここで様々な催し物が行われていたことであろう。
 祭事とか、慶事とか、告示とか、討論会とか、絞首刑による公開処刑とか……

 ――えっ、最後の処刑うんぬんだけ、やたらと具体的じゃないかですって?

 そりゃそうだ。
 だって、当時の名残りである絞首台が真ん中にデデンと居座っているんだもの。
 輪っかのついた縄がぷらぷら風に揺れているよ。

 魔女狩りの火刑しかり、首切り役人による斬首刑しかり、ギロチン刑しかり。

 かつて公開処刑は庶民の娯楽であった。
 本来の目的は見せしめや啓発、犯罪抑止だったはずなのに、くり返すうちにすげ代わってしまったのである。
 毎回お祭り騒ぎにて大盛況。刑場には入りきれぬほどの見物客らがつめかけて、血の惨劇に熱狂していたというからいやはや。
 げに恐ろしきは……

 閑話休題。

 事前に決めていた手筈どおりに私だけを残して一同は散開し、持ち場につく。
 中央のメイン通りからやってくるであろうハートを迎え討つ。
 私はわざと目立つ絞首台の上にて、ヤツが姿をあらわすのを待つ。

 作戦自体はさほど難しいものではない。
 ハートが襲いかかってきたら、第一陣で囲んでボコる。
 でも、そんなもので倒せる相手じゃないのは百も承知にて、初撃はあくまで誘いだ。
 のらりくらりしながら、チビチビ削る。
 じきに苛立ったハートが黒雷ドームを使うように仕向けるのが狙いにて。

 我慢しきれずにハートが黒雷ドームを発生させたら、すかさずヘミの出番だ。
 私たち竹人形の動きを阻害する能力を相殺し、無力化する。
 とはいえ、消せるのはあくまでその能力のみ。雷としての効力はそのままゆえに、当たれば黒焦げになるから、喰らわないように注意が必要だ。

 黒雷ドームは大技にて、発動中および直後には硬直が発生する。
 無防備な状態を晒すことになる。
 そのタイミングで第二陣となる主力メンバーたちが一斉に襲いかかり、仕留めるという算段。

 出し惜しみはナシだ。
 現在持ち得る最強の攻撃にて狙うは、ヤツの口の奥……

 硬い毛皮、ぶ厚い脂肪、強靭な筋肉と骨格を持つハート。
 第三形態の黒雷鬼となったことにより、いまやクマ風味を残した凶悪なオーガや戦鬼みたいな姿になっている。甲冑みたいな外骨格やら、厳めしい角などを生やしており、さらに頑強さを増している。
 急所である喉や心臓を外から狙ったところで、おそらく刃先は届かない。ろくに刺さらず、たとえ刺さったところで途中で止められるだろう。

 喉の奥とて油断はならない。
 かつて竹の里にてパンダクマ三兄弟と戦ったおりに、サクタは強弓にてスエッコの喉を射た。
 矢は確かに口腔内に突き立った。
 でも、スエッコは死ななかった。鏃が喉のさらに奥にある脳髄にまで届かなかったせいだ。
 同じことが……いや、長兄であるハートならばそれ以上と考えるべき。
 急所を確実に貫くには、たぶん個人の力では足りない。
 だから一点突破をはかる。

 サクタが刃を突き立て、コウリンとベンケイらがそれを更に奥へと押しあげ、硬い肉壁の守りを破る所存にて。

 緊張した面持ちで待つことしばし。
 ついにハートが姿をあらわした。
 はてさて、公開処刑場の露と消えるのはどちらか。
 私はヤツをにらみつつ、腰のホルスターから静かに竹鉄砲を抜いた。


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