特別。

月芝

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026 教室の人影

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 密かにインターネット上で流れている奇妙な都市伝説そのままに、天斗の家の納戸の奥で発見されたナゾの扉。
 それを開けたら黒の地下室へと通じており、そこには幼馴染みの子がとても大切にしているのと同じ、緋色の玉が隠すようにして祀られていた。
 天斗といっしょに地下室へと潜った友人の義徳が「ちょっと調べてみるから貸してくれ」と玉を持ち帰ったのだけれども……

 その日の夜、義徳の家が火事になった。
 全焼にて、一家五人、全員が焼け死んだ。
 このおりに消失したとおもわれた緋色の玉であったが、いつの間にか、元のところに戻っていた。

 緋色の玉を校医の栗花落綾も所持していることが、ひょんなことから判明した。
 このことがわかったのに前後して、町に目盗り鬼なる凶悪犯が出没し、ふたりの中学生の少女から永遠に光が失われた。

 そのふたりは同じグループに所属しており、つい先日、命と雅弘のことで揉めたばかりであった。

 天斗がほんの一晩、家を留守にしている間に、地下室の扉が無くなっていた。
 かといって、あれほどの空間をすぐにどうこうできるわけがない。おそらくは壁で覆って隠したのだろうとおもわれる。
 手際の良さや出来映えからして、リフォーム業者や工務店などのプロの仕事だ。
 だが留守宅に資材を持ち込んだり、職人が出入りをすれば、それなりに目立つ。
 なのに隣に住んでいる命も、命のおばさんもそのことには一切触れず。
 お向かいの佐藤のおじさんも知らないと言っていた。

 けれども、同じ町内に住んでいる山口さんは、それらしい業者の出入りを犬の散歩中に見かけたらしい。あのおばさんは犬の散歩にかこつけて、あちこちをうろついては、つねに耳をそばだてている。
 このことからして、隣近所や両親など、近しい者たちはみんな知っているのに、知らないフリをしているようだ。

 ――でも、いったいなんのために?

 あまりにも不自然、あまりにも不可解な状況は、まるで自分だけ目隠しをされて耳を塞がれているみたいで……
 冷静になって考えようとすればするほどに、わけがわからなくなっていく。
 次々とおかしなことが起こり過ぎているのだ。
 そろそろひとりで抱えるのは限界であった。

「いっそのこと命に……、いや、お母さんを問い質してみようか」

 天斗はぶつぶつ。
 だが、踏ん切りがどうしてもつかない。
 なんとなくだが、それをやったら一線を越えてしまうような、そんな気がしてしょうがないのだ。

 ふと気がつけば天斗は中学校のすぐそばにいた。
 どうやら歩きながら考え事をしているうちに、無意識にいつも通っている慣れた道程をなぞってしまったらしい。

(ははは、休校中なのに、わざわざ学校に来るだなんて……何をやってんだか)

 天斗は自嘲しつつ、すぐに引き返そうとする。
 でも、その時のことであった。
 何気なしに校舎の方を、自分の教室があるあたりを見て天斗は「――っ!」
 誰もいないはずの教室に人影があった。
 絶対にいるはずのない人物が窓辺に立っている。

 ――小松義徳。

 家族揃って火事で焼け死んだはずのクラスメイト。
 白昼に化けて出たのか、もしくは幻覚の類か。
 天斗は何度も目をこすっては、確認してみる。
 でも見間違いなんかじゃない。

 いる!

 幽霊だかなんだか知らないが、あれは確かに義徳であった。
 義徳がちらりとこちら見て、にへらと笑ったような気がした。
 とおもったら、義徳はきびすを返し教室の奥へと消えていく。

 気がつけば天斗は校門を乗り越えて、校舎へと向けて駆けていた。


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