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25 城塞都市国家ハムートの兄妹
しおりを挟む「お兄様、わたし、ついに運命のヒトを見つけましたわ」
妹であるアミット・ハムートの言葉に思わず飲みかけの紅茶をふき出す兄のイクロス・ハム―ト。
腹違いの兄妹ながらも母親同士の仲がよかったおかげで、二人の関係も極めて良好。
そんな妹が公務にての近在への視察の帰りに、モンスターの群れに襲われたという報告は兄も耳にしていた。その際に謎の人物によって助けられたということも。
「お兄様はギルドマスターのハウンドさまと懇意になさっているのでしょう。お願いですから、彼に頼んでこの人物を探して下さい」
妹より差し出された紙には姿絵が描かれてある。
そこには、ほれぼれするほどの逞しい体躯をした鳥の獣人の姿があった。
「ほぅ、この方がアミットを助けてくれた方なんだね」
「ええ、風のように現れて風のように去ってしまわれたの。名乗ることもなく颯爽と。まるでお芝居に登場する英雄のよう……」
どこか陶酔した表情にて瞳を潤ませ、いかに彼が強く雄々しかったのかを熱く語るアミット姫。
これを見て「また始まったか」と内心で呆れるイクロス王子。
十ほども歳が離れているせいか妹は非常に可愛い。獣人である母親譲りの頭からピンとのびた耳や、毛艶のいいフサフサの尻尾も愛らしい。性格も素直でみんなからも愛されている自慢の妹。でもたった一つだけ困ったクセがある。それはやや惚れっぽいということ。兄としては少々、妹の将来に不安を覚えているぐらいには夢中になりやすいのだ。
そんなアミットに、いつになく熱心に促される形にて、冒険者ギルドに手配書を依頼することになったイクロス王子。
だがなにも肉親の情にほだされただけで動いたわけではない。
実は少し前より、謎の人物の存在について市井に放っている隠密や、都の警備関係者などから、何度か情報が寄せられてあったのである。そのうちの一人と妹が持ってきた姿絵との特徴が、かなり酷似していたのだ。
これまではその風貌ゆえに怪しまれていたのだが、アミットを救出した際に見せたチカラは気になるところ。同行していた者たちからの報告でも、尋常ではなかったという。
特に問題は起こしていないので放置しておいてもいいのだが、近頃やたらとちょっかいをかけてくる彼の国との関わりも疑われるので、魔甲騎兵団の団長にして都の安全を守る立場にある王子としては、とりあえずは身元を確認しておきたいと考えている。
「こちらはじきに見つかるであろうが……、問題はもう一人の方か」
目撃証言が寄せられた謎の人物は二名。
一人は屈強な体躯をした鳥人、こちらはわりと容姿や特徴がはっきりとしている。それにギルド近辺に出没していることからして、ギルドマスターのハウンドに訊けば何かわかるだろう。もしかしたら彼の手の者なのかもしれない。
だがもう一人がとにかく奇妙なのだ。
黒い体、やたらと大きな頭、光る眼、長い尻尾があるらしく、おそらくは獣人なのだろうが、どうにも該当する種族に心当たりがない。
この国にはありとあらゆるヒトたちが集まっていると言っても過言ではない。
王族という立場上、これまでいろんな種族の者と接してきた。だというのにこんなのは見たことも聞いたこともない。部下にかなり古い文献まで探らせてみたが、なんら有益な情報は得られなかった。
目撃証言が集中しているのは夜間なので、おそらくは夜行性なのだろうが……。
「こちらについても相談してみるかな。そういえば彼が弟子をとったという話も気になるし、いい機会だから一度ギルドに足を運ぶとしよう」
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