わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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124 報告会

 
 聖クロア教会の総本山である都オスミウムで、もろもろを実施してから七日後。
 場所はリスターナ北部、地下深くにある秘密要塞の大会議室。
 そこに集うのはリンネ組の主だった面々。

「えー、それではつい先だって実施された第一回オスミウム調査報告会を開催したいとおもいます。じゃあ、ルーシー、あとはよろしく」

 開会のあいさつだけすませて、後事を頼りになる青い目のお人形さんに託す。
 これがわたしことアマノリンネ流人材活用術。「むずかしいこと? そんなモノは出来るヤツにやらせておけばよい」がモットー。
 おいおい、それってただの丸投げじゃないのか、ですって?
 いいえ、ちがいます。
 これは相互理解と信頼関係があるからこそ成り立つことなのです。
 わたしが身も心ものんべんだらりとさらけ出すことで、はじめてなせる技。
 意地や誇りなんてものはそのへんに脱ぎ散らかし、相手にすべてをゆだねる。そのなんとムツカシイことか。
 そんじょそこらのぐーたら具合ではダメです。「働きたくないでござる」程度の覚悟ではまだまだ。そんな生半可なことでは、とてもわたしの境地には辿りつけぬでしょう。
「あー、呼吸どころか瞼をあけるのもめんどうくさい」朝の起き抜けの第一声にて、そんな台詞が自然に言えるようになってから出直してください。
 ちなみに本会議におけるわたしの主な役割は、上座にてふんぞり返り、それっぽい表情をとりつくろうことだ。
 それからデカい革張りのイスの背もたれにカラダを預けて、たまにギチギチ鳴らすことも忘れてはいけない。
 だがこれが案外むずかしい。あまりに大きなギチギチでは会議の進行を妨げてしまう。かといって弱々しいギチギチでは、なんとも気が抜けてかえって場の緊張感を損ねてしまうから。

「ほら、リンネさま。あんまりイスで遊ばないでください」

 尻をもぞもぞしていたらルーシーに注意された。
 わたしは素直に「ごめんなさい」と頭をたれる。
 出来る上司は保身に走らないものなのである。けっして怒られたから、つい反射的にあやまった、とかではない

「それじゃあ、まずはワタシから。第一班、大図書館の調査報告をはじめたいとおもいます」とルーシー。

 地上三十階、地下十階、その内部が書物で埋め尽くされていた英知の塔。
 それがオスミウムが誇る大図書館。おそらくはノットガルド全土でも三本の指に入る蔵書量
 そんな場所をたった一晩にて蹂躙したのは、青い目をしたお人形さん軍団。

「まず以前より懸案であった聖騎士についてですが、どうやら存在自体はわりと新しいみたいですね。五百年ほどまえあたりから資料の方にちらほらと記載があらわれはじめていました。しかし教会内部でも独立した組織らしくって、その活動内容の詳細は不明。存在自体を認知しているのも法王やその周辺の大司祭クラスだけにて、一般の信者たちのほとんどが彼らの存在自体も知らないとおもわれます。なお近々での目立った活動では各地での勇者召喚の儀に関与していたようです。使節団の警護とか現地での活動がスムーズに行えるように補佐していたという記録がみつかりました」

 ここで話をいったん区切ったルーシー。
 彼女が目配せすると、分体の一人が立ち上がる。

「こちらは第二班で活動していた者よりの報告です。以前にラグマタイトで遭遇したグリューネを中央区画の施設内にて発見。これを尾行したところ、聖騎士のまとめ役とおぼしき人物と接触するところを目撃。これがそのときの映像です」

 壁面に設置された大型のモニターに、そのときの隠し撮り映像が流れる。
 銀の長髪の男ゼニスに恭しく接する蠱惑のブルネット美女のグリューネの姿。
 その男性が自分たちの役目は「女神イースクロアのために行動すること」と言っている。

「なるほど、聖騎士は女神さまの子飼いってことか……。ということはリスターナやラグマタイトへのちょっかいも女神さまのご指示なのかしらん」

 なんともヘンテコな命令である。
 世界に仇なす悪だくみを裏で密かにしていたとかならば、狙われてもまだ理解はできるけど、そんな事実はまるでなし。
 わたしが首を傾げているとルーシーも、「ますますもって女神の真意がわからなくなりましたね」と言った。

 よその次元の神さまたちをも巻きこみ、あちこちからかき集めた三千人もの若者をノットガルドに呼び寄せたとおもったら、勇者に仕立て上げて各国に無料配布。
 当初は魔王討伐が目的だったはずだけれども、なんだかんだで連合軍と魔王率いる魔族軍は拮抗しているし、むしろ新たな勇者召喚は騒乱や火種を方々にてまき散らしている体たらく。
 世界平和のためといいながら、裏では破壊工作とか人心かく乱。ちょっと意味がわかんない。

「わからないといえば、女神の交代劇についてなのですが」とルーシーさん。

 なんでも新旧女神の交代劇が起こったのもまた、ちょうど五百年ほど前のことらしい。
 それで奇妙なのが新女神さまの対応。
 もしも神々の抗争による結果であれば、ふつうならば蹴落とした旧女神を貶めて、勝った自分を持ち上げて信仰を上書きしそうなもの。
 なのにやっていることは真逆。むしろ旧女神を敬い称えることを教会では奨励させているという。
 このことから円満に譲位されたのかとも考えられたが、ならばどうして譲り渡された世界をわざわざ混乱させる? 旧女神を大切にしろと言いながら、彼女がずっと守り育んできた世界をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
 どうにも支離滅裂が過ぎて、ちょっと頭がこんがらがってきた。
 何をどうしたいのか、そこんところを明言してくれたら、こちらとしてもスッキリ対応できるというのに。
 眉間にシワを寄せ、口元をすぼめて「むーん」とわたしが悩んでいると、ルーシーが「まぁ、わからないことを悩んでもしかたがありません。対女神戦線に関しては当面、現状維持でいきましょう」と言った。

 女神イースクロアの真意は相変わらず不明。
 実体をともなう分身の術を使う新たな聖騎士っぽいのも登場したというし、わかったことよりもかえってナゾが増えただけのような気がする。

「なんだかめんどうくさい。あとモヤモヤする」

 大きなイスの上でちょこんと三角座り。ギシギシ鳴らしているわたしを置いてけぼりにして、報告会はまだまだ続く。


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