わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

文字の大きさ
124 / 298

124 報告会

しおりを挟む
 
 聖クロア教会の総本山である都オスミウムで、もろもろを実施してから七日後。
 場所はリスターナ北部、地下深くにある秘密要塞の大会議室。
 そこに集うのはリンネ組の主だった面々。

「えー、それではつい先だって実施された第一回オスミウム調査報告会を開催したいとおもいます。じゃあ、ルーシー、あとはよろしく」

 開会のあいさつだけすませて、後事を頼りになる青い目のお人形さんに託す。
 これがわたしことアマノリンネ流人材活用術。「むずかしいこと? そんなモノは出来るヤツにやらせておけばよい」がモットー。
 おいおい、それってただの丸投げじゃないのか、ですって?
 いいえ、ちがいます。
 これは相互理解と信頼関係があるからこそ成り立つことなのです。
 わたしが身も心ものんべんだらりとさらけ出すことで、はじめてなせる技。
 意地や誇りなんてものはそのへんに脱ぎ散らかし、相手にすべてをゆだねる。そのなんとムツカシイことか。
 そんじょそこらのぐーたら具合ではダメです。「働きたくないでござる」程度の覚悟ではまだまだ。そんな生半可なことでは、とてもわたしの境地には辿りつけぬでしょう。
「あー、呼吸どころか瞼をあけるのもめんどうくさい」朝の起き抜けの第一声にて、そんな台詞が自然に言えるようになってから出直してください。
 ちなみに本会議におけるわたしの主な役割は、上座にてふんぞり返り、それっぽい表情をとりつくろうことだ。
 それからデカい革張りのイスの背もたれにカラダを預けて、たまにギチギチ鳴らすことも忘れてはいけない。
 だがこれが案外むずかしい。あまりに大きなギチギチでは会議の進行を妨げてしまう。かといって弱々しいギチギチでは、なんとも気が抜けてかえって場の緊張感を損ねてしまうから。

「ほら、リンネさま。あんまりイスで遊ばないでください」

 尻をもぞもぞしていたらルーシーに注意された。
 わたしは素直に「ごめんなさい」と頭をたれる。
 出来る上司は保身に走らないものなのである。けっして怒られたから、つい反射的にあやまった、とかではない

「それじゃあ、まずはワタシから。第一班、大図書館の調査報告をはじめたいとおもいます」とルーシー。

 地上三十階、地下十階、その内部が書物で埋め尽くされていた英知の塔。
 それがオスミウムが誇る大図書館。おそらくはノットガルド全土でも三本の指に入る蔵書量
 そんな場所をたった一晩にて蹂躙したのは、青い目をしたお人形さん軍団。

「まず以前より懸案であった聖騎士についてですが、どうやら存在自体はわりと新しいみたいですね。五百年ほどまえあたりから資料の方にちらほらと記載があらわれはじめていました。しかし教会内部でも独立した組織らしくって、その活動内容の詳細は不明。存在自体を認知しているのも法王やその周辺の大司祭クラスだけにて、一般の信者たちのほとんどが彼らの存在自体も知らないとおもわれます。なお近々での目立った活動では各地での勇者召喚の儀に関与していたようです。使節団の警護とか現地での活動がスムーズに行えるように補佐していたという記録がみつかりました」

 ここで話をいったん区切ったルーシー。
 彼女が目配せすると、分体の一人が立ち上がる。

「こちらは第二班で活動していた者よりの報告です。以前にラグマタイトで遭遇したグリューネを中央区画の施設内にて発見。これを尾行したところ、聖騎士のまとめ役とおぼしき人物と接触するところを目撃。これがそのときの映像です」

 壁面に設置された大型のモニターに、そのときの隠し撮り映像が流れる。
 銀の長髪の男ゼニスに恭しく接する蠱惑のブルネット美女のグリューネの姿。
 その男性が自分たちの役目は「女神イースクロアのために行動すること」と言っている。

「なるほど、聖騎士は女神さまの子飼いってことか……。ということはリスターナやラグマタイトへのちょっかいも女神さまのご指示なのかしらん」

 なんともヘンテコな命令である。
 世界に仇なす悪だくみを裏で密かにしていたとかならば、狙われてもまだ理解はできるけど、そんな事実はまるでなし。
 わたしが首を傾げているとルーシーも、「ますますもって女神の真意がわからなくなりましたね」と言った。

 よその次元の神さまたちをも巻きこみ、あちこちからかき集めた三千人もの若者をノットガルドに呼び寄せたとおもったら、勇者に仕立て上げて各国に無料配布。
 当初は魔王討伐が目的だったはずだけれども、なんだかんだで連合軍と魔王率いる魔族軍は拮抗しているし、むしろ新たな勇者召喚は騒乱や火種を方々にてまき散らしている体たらく。
 世界平和のためといいながら、裏では破壊工作とか人心かく乱。ちょっと意味がわかんない。

「わからないといえば、女神の交代劇についてなのですが」とルーシーさん。

 なんでも新旧女神の交代劇が起こったのもまた、ちょうど五百年ほど前のことらしい。
 それで奇妙なのが新女神さまの対応。
 もしも神々の抗争による結果であれば、ふつうならば蹴落とした旧女神を貶めて、勝った自分を持ち上げて信仰を上書きしそうなもの。
 なのにやっていることは真逆。むしろ旧女神を敬い称えることを教会では奨励させているという。
 このことから円満に譲位されたのかとも考えられたが、ならばどうして譲り渡された世界をわざわざ混乱させる? 旧女神を大切にしろと言いながら、彼女がずっと守り育んできた世界をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
 どうにも支離滅裂が過ぎて、ちょっと頭がこんがらがってきた。
 何をどうしたいのか、そこんところを明言してくれたら、こちらとしてもスッキリ対応できるというのに。
 眉間にシワを寄せ、口元をすぼめて「むーん」とわたしが悩んでいると、ルーシーが「まぁ、わからないことを悩んでもしかたがありません。対女神戦線に関しては当面、現状維持でいきましょう」と言った。

 女神イースクロアの真意は相変わらず不明。
 実体をともなう分身の術を使う新たな聖騎士っぽいのも登場したというし、わかったことよりもかえってナゾが増えただけのような気がする。

「なんだかめんどうくさい。あとモヤモヤする」

 大きなイスの上でちょこんと三角座り。ギシギシ鳴らしているわたしを置いてけぼりにして、報告会はまだまだ続く。


しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

処理中です...