異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝

文字の大きさ
7 / 54

06 神域の森の木陰から。

しおりを挟む
 
 銀狼の背に乗って、のっしのっしと森の小道を進んでいく。
 
 いや、一度、調子に乗って駆けてもらったんだ。
 そうしたら途中で降り落とされて死にかけた。あんなものバイク事故と同じだ。とっさに頭を庇わなかったらヤバかった。学校の体育の授業で習った柔道の受け身が大活躍さ。あれを考えたとかいうどこぞのご老体、あんたはたいしたもんだぜ。
 なんにせよ文字通り疾風のごとき速さにて、こっちの身が持たん。
 あと気分が悪くて吐きそうになった。
 ファンタジーでも揺れるもんは揺れる、そしてきっちり酔う。だから颯爽と駆けて行くのは早々に諦めた。

 歩きながら銀狼にこの世界について色々と教えて貰った。
 先ほどまで私たちがいたのは神域の御戸と呼ばれる地で、世界のへそみたいなところなんだって。だが整った場所のわりに存在意義や使い道はよくわかっていないとのこと。
 そして神域とは大陸の三分の一をも占める広大な森にして、凶悪なモンスターと獣たちの楽園なんだとか。緑があまりにも濃く深く、そこに住む者たちは強大にて、弱者が立ち入ることを拒む地。ゆえにいかなる種族の手も入っておらず、せいぜいが外縁部を辺境と呼び、細々と開拓しているのが現状らしい。
 そんなところを堂々と闊歩しているこの銀狼さんは神獣でとっても賢くて強い。
 自画自賛ぶりが少々鼻につくが、おかげでこうしてのんびりと森の奥でいられるのも事実。だから機嫌よくおだてておくことに私は決めた。

 森の日暮れは早い。
 空が茜色に染まったかと思ったら、アッという間に周囲が闇に包まれた。
 フェンリルは夜目が効くので平気だと言うが、こっちの身が持たないので夜はのんびりさせてもらうことにする。
 暖をとろうと薪を集めたところでハタと気がつく……、火がないということに。
 なんとなく木と木を合わせてゴシゴシして火種をつくる方法は覚えているが、どうしたもんかなと悩んでいると、レッドが火をブォーと吐いて薪を燃やしてくれた。
 そういえばここは異世界だったな……。

 フェンリルによるとレッドはファイアーバードと呼ばれるモンスター鳥で、この子も神獣と呼ばれているんだとか。
 炎をまとい火を吐くそうで成長すると不死鳥に進化するらしい。そうなると火の精霊を従えるは、地中のマグマは自在に操るわと凄いことになるそうな。
 話のついでにシロがサイカと呼ばれるモンスターであるということも教えてくれた。
 こっちは別名「災厄の使徒」と呼ばれる存在で、雑食につきあらゆるものを食する小動物。大群になったら手がつけられない。一夜にして大きな都を滅ぼしたこともある。
 なお白いのは彼らの王様、王様のひと声で何十何百万の軍勢がどこからともなく集結して、命令一下にて行動するんだって。これを表して最強の兵団と呼ぶ人もいるんだとか。

「へえー、こんなに可愛いのにねえ」

 指先でちょんちょん撫でるとシロは「ちーちー」と嬉しそうな声をあげた。
 火をつけてくれたお礼にレッドの頭をナデナデ。
 そんな一人と二匹の姿を見ていたフェンリルがぼそりと呟く。

「それにしても二匹とも人になんぞには懐かんはずなのになあ」

 いやいや、たぶんあんたと同じ理由で、私に懐いたというよりもチクワになびいただけであろう。などと思ったがあえて口には出さない。
 言ったらきっと面倒なことになる。だって微妙に誇り高そうなんだもの、銀狼さんってば。それが食い物になびいたなんぞ、絶対に認めそうにもなかったので。

 チクワをポコポコと出して夕食にする。
 焚火であぶったチクワはたいそう美味であった。
 思わずみんなで焚火の周りを小躍りするほどには美味かった。


しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝
ファンタジー
来たる災厄に対抗すべく異世界に召喚された勇者たち。 その数、三十九人。 そこは剣と魔法とスチームパンクの世界にて、 ファンタジー、きたーっ! と喜んだのも束の間、なんと勇者なのに魔法が使えないだと? でも安心して下さい。 代わりといってはなんですが、転移特典にて星のチカラが宿ってる。 他にも恩恵で言語能力やら、身体強化などもついている。 そのチカラで魔法みたいなことが可能にて、チートで俺ツエーも夢じゃない。 はずなのだが、三十九番目の主人公だけ、とんだポンコツだった。 授かったのは「なんじゃコレ?」という、がっかりスキル。 試しに使ってみれば、手の中にあらわれたのはカリカリ梅にて、えぇーっ! 本来であれば強化されているはずの体力面では、現地の子どもにも劣る虚弱体質。 ただの高校生の男子にて、学校での成績は中の下ぐらい。 特別な知識も技能もありゃしない。 おまけに言語翻訳機能もバグっているから、会話はこなせるけれども、 文字の読み書きがまるでダメときたもんだ。 そのせいで星クズ判定にて即戦力外通告をされ、島流しの憂き目に……。 異世界Q&A えっ、魔法の無詠唱? そんなの当たり前じゃん。 っていうか、そもそも星の勇者たちはスキル以外は使えないし、残念! えっ、唐揚げにポテトチップスにラーメンやカレーで食革命? いやいや、ふつうに揚げ物類は昔からあるから。スイーツ類も充実している。 異世界の食文化を舐めんなよ。あと米もあるから心配するな。 えっ、アイデアグッズで一攫千金? 知識チート? あー、それもちょっと厳しいかな。たいていの品は便利な魔道具があるから。 なにせギガラニカってば魔法とスチームパンクが融合した超高度文明だし。 えっ、ならばチートスキルで無双する? それは……出来なくはない。けど、いきなりはちょっと無理かなぁ。 神さまからもらったチカラも鍛えないと育たないし、実践ではまるで役に立たないもの。 ゲームやアニメとは違うから。 というか、ぶっちゃけ浮かれて調子に乗っていたら、わりとすぐに死ぬよ。マジで。 それから死に戻りとか、復活の呪文なんてないから。 一発退場なので、そこんところよろしく。 「異世界の片隅で引き篭りたい少女。」の正統系譜。 こんなスキルで異世界転移はイヤだ!シリーズの第二弾。 ないない尽くしの異世界転移。 環境問題にも一石を投じる……かもしれない、笑撃の問題作。 星クズの勇者の明日はどっちだ。

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。 大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう! 忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。 で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。 酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。 異世界にて、タケノコになっちゃった! 「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」 いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。 でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。 というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。 竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。 めざせ! 快適生活と世界征服? 竹林王に、私はなる!

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

処理中です...