剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?五本目っ!黄金のランプと毒の華。

月芝

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049 撃沈

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 轟々と燃え盛りながら、陸へと向けて海面をずんずん突き進む大型貨物船。
 どうにか止めようと海上警備の人たちもがんばっているけれども、圧倒的質量の暴走を前にしてはいかんともしがたく。
 その様子を見下ろす位置に浮かぶのは、白銀の大剣と漆黒の大鎌と蛇腹の破砕槌。

「では、いきますわよ」

 号令を発したのは、天剣三姉妹の長女ミヤビ。
 言うなり白銀の大剣は急降下し、貨物船の右側面の海中へドボン。

「……行ってくる」

 次に動いたのは次女のアン。
 激しく回転しながら漆黒の大鎌は目標の左側面の海中へと没する。
 海中へと潜ったミヤビとアン。勢いのままに向かったのは大型貨物船の船底。真一文字に斬り裂くようにしていっきに抉る。
 スパンと銀閃、ざっくり黒閃。
 ちょうど船体の真ん中の底あたりに、二本の筋が深々と刻まれる。
 ひと仕事を終えたミヤビとアンたち。各々、突入した位置から船を挟んだ反対側の水中より宙へと飛び出す。
 それを見届けてから、今度は三女ツツミが入れちがいに海へと突っ込む。
 水中を進み船底へとりつくなり、ツツミは姉たちが刻んだ斬傷の間をガツンとぶん殴った。

  ◇

 底が抜けた大型貨物船は大量の浸水により足を止めた。
 じきに大穴を起点にして船体がバキバキ裂けはじめ、ついにはくの字にべっきり、二つに折れてしまう。船自体の強度のほかにも、どうやら過積載が仇となったらしい。
 福ふくした女性のお尻のような船尾が渦を発生させながら海中へと没する。
 続いて船首部分が天へと向けてバンザイの格好のまま、燃えながら静々と沈んでゆく。
 やがてすべての紅蓮が海の青に呑み込まれた。
 焦げ臭い残り香が潮風に乗って、岸より事態を見守っていたわたしのところにまで届く。
 フム。少し油くさい。それもあまり質がよろしくない。ねっとりギトギトした感じからして、廃油でも満載していたのかもしれない。
 だとすると、あと始末がたいへん。
 こりゃあ当面、掃除のために港は封鎖かなぁ。派手に沈めておいてなんだけど、残骸も引き上げて撤去しないと。湾内を往来する船が危ないだろうし。
 やれやれ。人的被害こそは未然に防げたものの勝利にはほど遠い。
 結果として記念式典に汚点を残したのにはちがいなく、これを仕切る公房会の面目もおおいにつぶしたことになるので、過激派の目論見はあるていど達成された。
 だからせいぜい痛み分けといったところか。
 なんぞと考えていたら、ふいに、足元がぐらりと揺れる。
 何ごとかとおもえば、沈没したはずの大型貨物船が海底にてドカン!
 最後に特大の水柱をあげてみせた。
 水飛沫が雨となって周囲に降り注ぐ。
 陽光を受けてきらめき、なかなか大きな虹が出た。
 いろいろとヒドイ事件だったけど、最後はほのぼのにて、わたしは「なんだかなぁ」

  ◇

 最後の最後で台無しにされた。
 というほどではないけれども、ケチがついたのはたしかな今回の記念式典。
 明るい未来どころか、なにやら暗雲が垂れ込めたような微妙な空気にて幕を閉じる。
 ずさんで適当なものから、わりと緻密に深刻なものまで。九十九もの悪だくみは目くらまし。
 すべては百件目の大型貨物船での炎の襲撃を成功させるための仕込み。
 ……というのは、少々うがった見方らしい。
 事実はいささか異なっている。
 調査にて早々に判明したのは、実行犯たちが船に火を放った直後に巻き込まれて死んでいたということ。
 近くの海上を放浪していた一隻の小型船が発見され、これが犯行一味のものであったのだが、残された資料などから当初の計画では大型貨物船を暴走させたあとは、すみやかに脱出して現場を離れる算段であったらしい。
 が、想定以上に爆発炎上が激しくて、あっさり焔に呑み込まれてしまったと。
 これだけならば「マヌケな連中」ですむ話。でもことはそう簡単にすみそうにない。
 問題は大型貨物船に仕掛けられたからくり。
 設定した時間がきたら自動で爆発するモノらしいのだけれども、残された仕様書にあったよりもはるかに大きな爆破が起こっていた。しかも起動直後に。
 だから実行犯たちも、よもや自分たちが死ぬだなんてみじんも考えていなかった節がある。
 たまたまだとしたら、ご愁傷さま。
 でも意図したものであれば、実行犯はわざと消された可能性が大。
 今回の北部の過激派の活動。その裏に深く関与していた第三者の存在がちらりちらり。
 魔道長連車の機関車へと侵入し制御を奪った技術やら、秘密裏に可燃物満載の大型貨物船を用意したりと、一連の騒動につぎ込まれた資金は相当なもの。
 懐古主義に固執し、己の怠惰を棚に上げて経済格差をあげつらい、南部の金持ちを妬んでいるばかりの北部の過激派。
 不毛に見える彼らの活動だけれども、複雑にからみあう現代社会と人界の連鎖の妙によって生まれる利権やら、利益やらのおかげで、恩恵を受けている人たちもいるせいか、ひそかに支援している者たちも一定数存在している。対立や衝突すらもがメシのタネになるのが人間の業の深いところ。
 だからこそ過激派は活動を続けていられる。
 とはいえ、今回の件に関しては支援の域をはるかに超えている。何もかもがケタちがい。
 よって、わたしが真っ先に疑ったのは、帝国と親密な関係を築いているロイチン商会なんだけど……。


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