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無力の神様
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ミイコが先代の話を出すのは珍しいと思う。サブローもそうなのだが、何処か気を使ってくれている様なそんな雰囲気があった。
少し、まを開けてからミイコは話し始めた。
「サブローさんを慕う猫たちは、いろいろな猫がいるんです」
「見た感じだと野良猫だけじゃなさそうだよな?」
「はい、半分野良猫から家猫になっている飼い猫迄色々です」
「それと今回の件は何か関係があるのかよ?」
「その……」
ミイコは言葉を詰まらせる。
「その、慕う猫の飼い主が病気で飼えなくなったみたいなんです……」
事情はそれぞれあるのかもしれない。だけど、飼えないから捨てると言うのは確かに言いずらい事なのかもしれない……。
「でも、それならまた俺の力で飼い主を探せばいいじゃないか?」
「それは出来ません……」
「なんでだよ?」
「神の力は、願いが無いと力を使う事が出来ないのは知っていますよね?」
「願う奴がいないから、出来ないってことか?」
「……はい」
たしかに願いが無い以上、俺が力を使えるのは過去を見たり猫と話したりという能力になる。実際願いの力が無いと大きな事を起こすことは出来ないだろう。
「それなら、またおじさんに頼めば……」
「子猫ならまだしも、成猫ですよ? それに何度もおじさんに頼むのは」
「まぁ、そうだよな……それでサブローさんはどうする気なんだ?」
「野良猫として生きていける様に協力すると言っていました」
彼は多分、餌をとれるようにしたり寝床なんかを確保してあげるつもりなのかもしれない。
「それで、俺には話すなと……」
「はい、きっと神様は何かしようとするだろうと……」
「でも、今後もそういった事はあります。それにすべて神様が協力するのは良くないと考えているのだと思います」
サブローが言った猫の問題というのはそういう事だったのか。だけど、何もしないわけにはいかないと思う。今まで家猫として過ごしてきた猫が外の環境でどのくらい生きていけるのだろう。そんなことをどうしても考えてしまっていた。
「そうだ、ミイコ拝殿にむかって願ってみてくれよ?」
「わたしが?」
「そうだよ、願いがあればかなえられるんだろ? それならミイコが願っても大丈夫なんじゃないか?」
ミイコは少し黙ってしまった。いったいどうしたと言うのだろう、自分でも結構いいアイデアだと思っていただけに何故黙っているのかが分からない。
「やっぱりミイコは言うてしもたか……」
「サブローさん?」
ふと、扉の近くをみるとサブローさんがいる。ミイコが話すと思って戻ってきたのだろう。
「神さん、それは無理なんや……」
「なんでだよ、願い事には変わりないだろ?」
「ちがうんや……」
「本気で願わないといけないとしても、ミイコも助けたいと考えている」
サブローは部屋の中に入ると、机の上に上り俺と目線を合わせた。
「あのな、神さんの叶えられる願い事っちゅうのは人間の願いだけなんや……」
「そんな、なんでだよ……」
「神さんはわしらが喋れるのが不思議に思ったことはないんか?」
「そりゃ、最初から変だと思っているけど……」
サブローが何を言いたいのかが分からない。いったいだからなんだと言うのだ。
「神さんも、わしらも人間の願いから生まれたものなんや……」
「人間の願い? 要は願い事で出来たってことなのか?」
「ちょっとちがうんやけどな。もしかしたら猫は喋っているかもしれない、こんな時には助けてくれる何かがいるはずだ。そういった思いが集まって生まれとるんや」
「それと、猫の願いがかなえられないのとは関係ないだろ?」
サブローは悲しそうな目で俺を見る。
「そんなん、人間が猫の願いが叶うように願ってると思うか?」
「それを言ったら、猫を操る神とかも……」
「それは想像するやろ? 猫と話せたらええな、そんな事が出来るのは神様しかいないと自然なながれや……」
そういわれると確かに猫が願い事をすること自体、話せる事すら知らない普通の人には想像できるものじゃないと思った。
「先代が泣いたと言うのは……」
「なんや、ミイコはそこまで話とるんか。そうや、猫の願いが叶えられない理不尽さに悩んではったんやろなぁ……」
「ほんまはな、そいつの新しい住居を探すのが目的ちゃうねん」
「なんだよそれ、そもそもの話がかわ……」
「いや、聞いてくれるか。別に引っ越したり生きながらえたりは二の次で、タマは飼い主を元気にしてほしいんや……」
「タマって、その猫なのか?」
「そうや、ワシの舎弟はどうも人情を大切にするのが多いみたいでなぁ、最後の最後まで一緒に居ろうとする奴が多いんや」
「それで、サブローが説得して……」
「そうや、野良猫になる様に説得するんや」
野良猫になるのを説得するところから始めなければいけないのか……もしかしたら家猫が捨てられて寿命が短いと言うのは適応できないんじゃなくて、そういうところからなのかもしれないな。
「サブローさん、やっぱり俺行きますよ……」
「だから、神さんには……」
「"神様には"でしょ? 俺は人間の超能力者神代恵太として、どうにかするよ」
「なんか策でもあるんか?」
「いや、こればっかりはみて見てやってみないとわからないけど、別に願いの力を使わなくたって、俺にも色々出来ることはあると思うんだよね」
サブローはそれを聞いて顔を伏せた。嬉しかったのか、自分の無力さを悔やんでいるのかはわからないけど、サブローはしばらくしてから「頼むわ……」といったのが聞こえた。
少し、まを開けてからミイコは話し始めた。
「サブローさんを慕う猫たちは、いろいろな猫がいるんです」
「見た感じだと野良猫だけじゃなさそうだよな?」
「はい、半分野良猫から家猫になっている飼い猫迄色々です」
「それと今回の件は何か関係があるのかよ?」
「その……」
ミイコは言葉を詰まらせる。
「その、慕う猫の飼い主が病気で飼えなくなったみたいなんです……」
事情はそれぞれあるのかもしれない。だけど、飼えないから捨てると言うのは確かに言いずらい事なのかもしれない……。
「でも、それならまた俺の力で飼い主を探せばいいじゃないか?」
「それは出来ません……」
「なんでだよ?」
「神の力は、願いが無いと力を使う事が出来ないのは知っていますよね?」
「願う奴がいないから、出来ないってことか?」
「……はい」
たしかに願いが無い以上、俺が力を使えるのは過去を見たり猫と話したりという能力になる。実際願いの力が無いと大きな事を起こすことは出来ないだろう。
「それなら、またおじさんに頼めば……」
「子猫ならまだしも、成猫ですよ? それに何度もおじさんに頼むのは」
「まぁ、そうだよな……それでサブローさんはどうする気なんだ?」
「野良猫として生きていける様に協力すると言っていました」
彼は多分、餌をとれるようにしたり寝床なんかを確保してあげるつもりなのかもしれない。
「それで、俺には話すなと……」
「はい、きっと神様は何かしようとするだろうと……」
「でも、今後もそういった事はあります。それにすべて神様が協力するのは良くないと考えているのだと思います」
サブローが言った猫の問題というのはそういう事だったのか。だけど、何もしないわけにはいかないと思う。今まで家猫として過ごしてきた猫が外の環境でどのくらい生きていけるのだろう。そんなことをどうしても考えてしまっていた。
「そうだ、ミイコ拝殿にむかって願ってみてくれよ?」
「わたしが?」
「そうだよ、願いがあればかなえられるんだろ? それならミイコが願っても大丈夫なんじゃないか?」
ミイコは少し黙ってしまった。いったいどうしたと言うのだろう、自分でも結構いいアイデアだと思っていただけに何故黙っているのかが分からない。
「やっぱりミイコは言うてしもたか……」
「サブローさん?」
ふと、扉の近くをみるとサブローさんがいる。ミイコが話すと思って戻ってきたのだろう。
「神さん、それは無理なんや……」
「なんでだよ、願い事には変わりないだろ?」
「ちがうんや……」
「本気で願わないといけないとしても、ミイコも助けたいと考えている」
サブローは部屋の中に入ると、机の上に上り俺と目線を合わせた。
「あのな、神さんの叶えられる願い事っちゅうのは人間の願いだけなんや……」
「そんな、なんでだよ……」
「神さんはわしらが喋れるのが不思議に思ったことはないんか?」
「そりゃ、最初から変だと思っているけど……」
サブローが何を言いたいのかが分からない。いったいだからなんだと言うのだ。
「神さんも、わしらも人間の願いから生まれたものなんや……」
「人間の願い? 要は願い事で出来たってことなのか?」
「ちょっとちがうんやけどな。もしかしたら猫は喋っているかもしれない、こんな時には助けてくれる何かがいるはずだ。そういった思いが集まって生まれとるんや」
「それと、猫の願いがかなえられないのとは関係ないだろ?」
サブローは悲しそうな目で俺を見る。
「そんなん、人間が猫の願いが叶うように願ってると思うか?」
「それを言ったら、猫を操る神とかも……」
「それは想像するやろ? 猫と話せたらええな、そんな事が出来るのは神様しかいないと自然なながれや……」
そういわれると確かに猫が願い事をすること自体、話せる事すら知らない普通の人には想像できるものじゃないと思った。
「先代が泣いたと言うのは……」
「なんや、ミイコはそこまで話とるんか。そうや、猫の願いが叶えられない理不尽さに悩んではったんやろなぁ……」
「ほんまはな、そいつの新しい住居を探すのが目的ちゃうねん」
「なんだよそれ、そもそもの話がかわ……」
「いや、聞いてくれるか。別に引っ越したり生きながらえたりは二の次で、タマは飼い主を元気にしてほしいんや……」
「タマって、その猫なのか?」
「そうや、ワシの舎弟はどうも人情を大切にするのが多いみたいでなぁ、最後の最後まで一緒に居ろうとする奴が多いんや」
「それで、サブローが説得して……」
「そうや、野良猫になる様に説得するんや」
野良猫になるのを説得するところから始めなければいけないのか……もしかしたら家猫が捨てられて寿命が短いと言うのは適応できないんじゃなくて、そういうところからなのかもしれないな。
「サブローさん、やっぱり俺行きますよ……」
「だから、神さんには……」
「"神様には"でしょ? 俺は人間の超能力者神代恵太として、どうにかするよ」
「なんか策でもあるんか?」
「いや、こればっかりはみて見てやってみないとわからないけど、別に願いの力を使わなくたって、俺にも色々出来ることはあると思うんだよね」
サブローはそれを聞いて顔を伏せた。嬉しかったのか、自分の無力さを悔やんでいるのかはわからないけど、サブローはしばらくしてから「頼むわ……」といったのが聞こえた。
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