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猫の事情
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「それで……神様とサブローさんは何をしていたのですか?」
「あ、いや……」
「と、特になんも……」
ミイコはため息をついて、帰り道を歩き出した。
「まぁ、帰ってからゆっくり聞きましょう」
何とも言えない空気感が襲う。ミイコの後ろをサブローととぼとぼと歩いている途中、彼に愚痴を漏らした。
「もう、サブローさんが尾行しようとか言い出すから……」
「なんや、神さんもノリノリやったやんけ……」
「二人とも何話しているんですか?」
「「なんでもありません……」」
神社に帰ると、俺たちは居間に座らされる。今にもミイコが説教をし始めそうな雰囲気なのだが、意外にもミイコは自然に切り出した。
「それで、なんで私を探してたんですか?」
「それは……どこに行っているのか気になって……」
「なるほどですね。付いてきたいなら言えば良かったのに、神社に誰もいなくなっちゃうじゃないですか?」
「だって……」
「せやかて、ミイコも一人で会いに行きたかったんちゃうんか?」
「最初から気になっていたんですけど、サブローさんは何の話をしているのですか?」
「いや、ミイコが花屋の男に恋しとるっちゅうはなしや!」
サブローは開き直りはじめ、本題を切り出した。
「わたしが? 花屋さんに?」
「そうやで? 証拠はあがっとるんやから潔く白状したらええねん!」
「証拠? もしかして花屋さんに行った事を言ってるんですか?
「そうや、ニコニコしてあのイケメンと話しとったやないか?」
「まぁ……話してましたけど……」
「ほらみてみい、認める気になったやろ!」
サブローが自信満々にそういうと、ミイコは笑いをこらえきれなかったのか笑いだした。というか笑いすぎて白猫の姿に戻る。
「サブローさん何をいってるにゃ?」
「猫に戻っても無駄や!」
「わたしは花屋さんに玉串の材料になる榊を頼みに行っただけにゃ?」
「へ? 榊?」
「ミイコ、榊ってあの葉っぱみたいなやつの事?」
「そうにゃ、こないだおじさんに玉串代の話をしていたから用意出来る様に頼んでたのですにゃ」
「なんだよ、サブローさんの早とちりだったのか……」
「ですにゃ」
サブローはそれを聞いて、間が悪そうに不貞腐れている。さんざん勘違いして振り回したのを反省でもしているのだろうか?
「でも、わたしが恋していたら神様はどうする気だったにゃ?」
「どうするって、そりゃ相手を見てふさわしいかを見極めてだな……」
「なんだかそれはお父さん見たいにゃね?」
「まぁ、俺らは家族みたいなもんだからなぁ、気にはなるだろ?」
「ふむふむ、そういうことにゃら今回は許してあげるにゃ」
ミイコはそういうとしっぽが立っていた。これは喜んでいるのだろうか、相変わらず猫というのはいまいち何を考えているのかよくわからない。サブローは縁側にでて外を眺め始める。彼はまだわかりやすい方だけどおじさんが黄昏ている様にしか見えなかった。
一段落ついたと思っていたら、拝殿の方に気配を感じる。いつもみたいに参拝の人かと思ったが今回は何かが違う。俺は、とりあえず部屋を出て様子を見に行くことにした。
「失礼しやす……」
そういって入って来たのは、サブローの舎弟の傷のある黒猫だった。今まで猫では気配を感じることはなかったが、徐々に感覚が成長しているのかもしれない。
「すみません、兄貴いらっしゃいやすか?」
「兄貴……サブローさんの事?」
「ええ……」
「彼なら縁側で黄昏ているけど?」
「ありやす……ちょっと用がありやして」
黒猫は、サブローの方に行くと何かを耳打ちしているのが見えた。彦助と違い仕事のできる幹部のような雰囲気の彼はまるでヤ○ザ映画のワンシーンの様に見える。猫だけど。
「なんやて? そら困ったなぁ……」
声の漏れるサブローがボスというのが何となく気になるところなのだが、何か一大事でもあったのだろうか?
「サブローさん、なにかあったんですか?」
「ああ……ちょっとなぁ……」
「何か手伝えることがあれば協力しますよ?」
「ええねん、今回は神さんは関係ない。気にせんといてくれや……」
そういうと、彼はミイコにも耳打ちをする。意外と内緒話も出来る様で、囁き終えるとサブローは黒猫と一緒にどこかへ行ってしまった。いったい何があったのだろうかと気になるが、猫の問題なのだろう。
だが、残されたミイコの表情が暗くなっている様に感じた。
「ミイコ、なんかあったのか?」
「いえ……」
「まぁ、猫の問題かもしれないけどさ、俺も一応猫神なんだし出来ることがあれば手伝うよ?」
「……」
そうは言ったものの、ミイコも何も答えてくれなかった。神様になって半月以上たったが、まだまだ知らない事が沢山ある。神社のルールなんかはもちろんだけど、周りの人間関係というか、猫関係がいまいちよくわからない。人間同士でもわからない事だらけなのだから仕方がないのかもしれないのだけど。
それからまた、とりあえずパソコンを開いてみる。だけど、さっきの事が気になって作業に身が入らないまま夕ご飯の時間になった。
「ミイコ、今日のご飯は?」
「精進料理ですにゃ……」
「ここはお寺かよ?」
「嘘ですよ、玉ねぎの入っていないビーフストロガノフですよ?」
「それはそれでなんでそのチョイスになったのかを聞きたい」
お金が無いはずなのに、牛肉の料理というのが少しきになるが出てきたものは白くよくわからないカレーの様な物だった。
「えっと……白いカレー?」
「ビーフストロガノフですよ?」
スプーンですくい、口に入れると今まで食べたことは無い味なのだけどおいしい。ハヤシライスに続いて別ジャンルのカレーの様で気に入った。
「うまい!」
「でしょ? 花屋のお兄さんに勧めてもらったんです!」
「え?」
「あ、いや……神様がカレーが好きだから、他にないかなって……」
やっぱり猫はツンデレなのか? もしかしてその話で盛り上がっていたのではないだろうかとおもうとミイコが愛おしく感じる。
「あの……神様……?」
「どうした?」
少し、緊張感のある雰囲気で言われドキドキする。もし、ミイコに好きとか言われたらこれから意識しないと言い切れる自信がない。
「サブローさんの件なんだけど……」
肩透かしを食った。だけど、気になっていた事ではある。
「多分、俺に言えない事なんだよね?」
「言えないというか……神様を傷つけてしまうかもしれないから……」
「俺を? なんでだよ?」
だけど、それを聞いてサブローの違和感に納得した。あの人が何もなく秘密にしたりはしない。だから俺も気になっていたんだ。
「あまり前の話はしたくないのですけど、先代の神様を泣かせたことがある事なんです」
「あ、いや……」
「と、特になんも……」
ミイコはため息をついて、帰り道を歩き出した。
「まぁ、帰ってからゆっくり聞きましょう」
何とも言えない空気感が襲う。ミイコの後ろをサブローととぼとぼと歩いている途中、彼に愚痴を漏らした。
「もう、サブローさんが尾行しようとか言い出すから……」
「なんや、神さんもノリノリやったやんけ……」
「二人とも何話しているんですか?」
「「なんでもありません……」」
神社に帰ると、俺たちは居間に座らされる。今にもミイコが説教をし始めそうな雰囲気なのだが、意外にもミイコは自然に切り出した。
「それで、なんで私を探してたんですか?」
「それは……どこに行っているのか気になって……」
「なるほどですね。付いてきたいなら言えば良かったのに、神社に誰もいなくなっちゃうじゃないですか?」
「だって……」
「せやかて、ミイコも一人で会いに行きたかったんちゃうんか?」
「最初から気になっていたんですけど、サブローさんは何の話をしているのですか?」
「いや、ミイコが花屋の男に恋しとるっちゅうはなしや!」
サブローは開き直りはじめ、本題を切り出した。
「わたしが? 花屋さんに?」
「そうやで? 証拠はあがっとるんやから潔く白状したらええねん!」
「証拠? もしかして花屋さんに行った事を言ってるんですか?
「そうや、ニコニコしてあのイケメンと話しとったやないか?」
「まぁ……話してましたけど……」
「ほらみてみい、認める気になったやろ!」
サブローが自信満々にそういうと、ミイコは笑いをこらえきれなかったのか笑いだした。というか笑いすぎて白猫の姿に戻る。
「サブローさん何をいってるにゃ?」
「猫に戻っても無駄や!」
「わたしは花屋さんに玉串の材料になる榊を頼みに行っただけにゃ?」
「へ? 榊?」
「ミイコ、榊ってあの葉っぱみたいなやつの事?」
「そうにゃ、こないだおじさんに玉串代の話をしていたから用意出来る様に頼んでたのですにゃ」
「なんだよ、サブローさんの早とちりだったのか……」
「ですにゃ」
サブローはそれを聞いて、間が悪そうに不貞腐れている。さんざん勘違いして振り回したのを反省でもしているのだろうか?
「でも、わたしが恋していたら神様はどうする気だったにゃ?」
「どうするって、そりゃ相手を見てふさわしいかを見極めてだな……」
「なんだかそれはお父さん見たいにゃね?」
「まぁ、俺らは家族みたいなもんだからなぁ、気にはなるだろ?」
「ふむふむ、そういうことにゃら今回は許してあげるにゃ」
ミイコはそういうとしっぽが立っていた。これは喜んでいるのだろうか、相変わらず猫というのはいまいち何を考えているのかよくわからない。サブローは縁側にでて外を眺め始める。彼はまだわかりやすい方だけどおじさんが黄昏ている様にしか見えなかった。
一段落ついたと思っていたら、拝殿の方に気配を感じる。いつもみたいに参拝の人かと思ったが今回は何かが違う。俺は、とりあえず部屋を出て様子を見に行くことにした。
「失礼しやす……」
そういって入って来たのは、サブローの舎弟の傷のある黒猫だった。今まで猫では気配を感じることはなかったが、徐々に感覚が成長しているのかもしれない。
「すみません、兄貴いらっしゃいやすか?」
「兄貴……サブローさんの事?」
「ええ……」
「彼なら縁側で黄昏ているけど?」
「ありやす……ちょっと用がありやして」
黒猫は、サブローの方に行くと何かを耳打ちしているのが見えた。彦助と違い仕事のできる幹部のような雰囲気の彼はまるでヤ○ザ映画のワンシーンの様に見える。猫だけど。
「なんやて? そら困ったなぁ……」
声の漏れるサブローがボスというのが何となく気になるところなのだが、何か一大事でもあったのだろうか?
「サブローさん、なにかあったんですか?」
「ああ……ちょっとなぁ……」
「何か手伝えることがあれば協力しますよ?」
「ええねん、今回は神さんは関係ない。気にせんといてくれや……」
そういうと、彼はミイコにも耳打ちをする。意外と内緒話も出来る様で、囁き終えるとサブローは黒猫と一緒にどこかへ行ってしまった。いったい何があったのだろうかと気になるが、猫の問題なのだろう。
だが、残されたミイコの表情が暗くなっている様に感じた。
「ミイコ、なんかあったのか?」
「いえ……」
「まぁ、猫の問題かもしれないけどさ、俺も一応猫神なんだし出来ることがあれば手伝うよ?」
「……」
そうは言ったものの、ミイコも何も答えてくれなかった。神様になって半月以上たったが、まだまだ知らない事が沢山ある。神社のルールなんかはもちろんだけど、周りの人間関係というか、猫関係がいまいちよくわからない。人間同士でもわからない事だらけなのだから仕方がないのかもしれないのだけど。
それからまた、とりあえずパソコンを開いてみる。だけど、さっきの事が気になって作業に身が入らないまま夕ご飯の時間になった。
「ミイコ、今日のご飯は?」
「精進料理ですにゃ……」
「ここはお寺かよ?」
「嘘ですよ、玉ねぎの入っていないビーフストロガノフですよ?」
「それはそれでなんでそのチョイスになったのかを聞きたい」
お金が無いはずなのに、牛肉の料理というのが少しきになるが出てきたものは白くよくわからないカレーの様な物だった。
「えっと……白いカレー?」
「ビーフストロガノフですよ?」
スプーンですくい、口に入れると今まで食べたことは無い味なのだけどおいしい。ハヤシライスに続いて別ジャンルのカレーの様で気に入った。
「うまい!」
「でしょ? 花屋のお兄さんに勧めてもらったんです!」
「え?」
「あ、いや……神様がカレーが好きだから、他にないかなって……」
やっぱり猫はツンデレなのか? もしかしてその話で盛り上がっていたのではないだろうかとおもうとミイコが愛おしく感じる。
「あの……神様……?」
「どうした?」
少し、緊張感のある雰囲気で言われドキドキする。もし、ミイコに好きとか言われたらこれから意識しないと言い切れる自信がない。
「サブローさんの件なんだけど……」
肩透かしを食った。だけど、気になっていた事ではある。
「多分、俺に言えない事なんだよね?」
「言えないというか……神様を傷つけてしまうかもしれないから……」
「俺を? なんでだよ?」
だけど、それを聞いてサブローの違和感に納得した。あの人が何もなく秘密にしたりはしない。だから俺も気になっていたんだ。
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