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本編
第4話
しおりを挟む『それでは続いての商品に参りましょう!』
順調にオークションが進んでいく中、俺は必死に檻の抜け道を探す。
ここは普通じゃないらしい。
地獄の被検体やらオークの肉便器やら、続々と進んでいくオークションからは不穏な言葉ばかりが聞こえてくる。
たまったもんじゃない。
それなら臓器の一つや二つを失った方が余程マシだろう。
どうにかして逃げ出さないと…。
いや、もしかしたら既に地球ですらないのかもしれない。
不吉な考えばかりが脳裏をよぎる。
薄暗くて視界が上手く定まらない中手探りで檻の欠陥を探していると、突然俺の後ろでチャリンと鍵同士がぶつかり合うような音がした。
驚いて振り返り目を凝らすが、人のいる気配は感じられない。
だが、そこには先程までなかったはずの2つの鍵が、キーチェーンに繋がれてポツリと置かれてあった。
不思議に思いながらも恐る恐るキーチェーンを掴む。
よく見てみると片方の鍵は長細く、柄には蔦が絡まりついたかのようなデザインが施されてある。
もう片方の鍵は短く先が曲がっており、持ち手の先には片羽を失った蝶の絵が彫られてあった。
「これって…」
鍵に細工された蔦のデザインは檻の扉の鍵穴にも施されており、俺は鍵と鍵穴を見比べる。
もしかしたら逃げられるんじゃ…
淡い期待とは分かりつつも自分の命がかかっているのだ、これに賭けない手はない。
恐る恐るキーチェーンを握り直し、檻の扉の鍵穴に震える手で鍵を差し込む。
カチャッ キイィィ…
上手く差し込めず尻込みしたものの、扉が音を立ててゆっくりと開く。
さらに首輪の中央にある差し込み口にもう一対の鍵を差し込むと、そちらもゴトリと音を立てて床に落ちていった。
俺はぎゅっと肩にかかった毛布を握りしめ、足音を立てないように走り出す。
心臓が興奮でバクバクと張り裂けそうになる。
早くここから出て自由になるんだ。
先のことは分からないけど、これであのバカ親父からは開放される。
異世界だろうがなんだろうが、自由になればこちらのものだ。
しばらく走ると、目の前にチラチラと一筋の光が現れ始める。
俺はさらに足を速め、光に向かって全速力で走り寄った。
「ハァッハッ、ハァッ」
だんだんと光が近づく度に、高揚で息が荒くなる。
あと少しだ、あと少しで…っ!
目の前に現れた背の高いカーテンを勢いよく横に押しやり、カーテンの隙間から漏れ出ていた光の中へ一気に身体を押し込める。
ついに俺は自由になれるんだ!
「やっ!……た………?」
「おやおや?最後の商品が自ら足を運んでくるなんて!」
高揚した俺の目の前にただ広がったのは、ステージの上で光を浴びるあのピエロと、客席に無数に浮かび上がった不気味な仮面だけだった。
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