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北条新九郎氏政
北条の若武者達
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膨大な数の将兵があっても業正は憂鬱であった。主君憲政の兵も松山城の扇谷上杉の兵も敵を侮りすぎているのである。 川越を守る北条綱成は北条一の戦巧者・・3千対8万という圧倒的な戦力差があるが武蔵野の要所である川越を守る北条の兵は精鋭である。
時間をかければ北条本軍が付くだろう・・・間者の知らせだと北条は富士川で今川と和解して直ぐに引き返したという。 北条氏康・・・父氏綱に負けぬ先を見る目があると見える・・・
そして若干13歳の氏政という氏康の嫡男が聡明であり、腕もたつと聞く・・・強き若武者はそれだけで軍の勢いを増す、ましては跡取りがそうであれば大軍をひっくり返す勢いを持つ・・・
古河公方足利晴氏の軍などは一番多いが・・・論外だ・・・こいつらは居るだけの兵だ・・・
こういう死ぬ覚悟のない兵が一番厄介なのだ・・戦う男の顔ではない
関東享禄の内乱では氏綱を引き入れ古河公方にのし上がったが・・この坂東に幕府の力なぞは屁でしかない・・・
豪族共は強き者につく・・晴氏ではこの坂東を支配する力はないだろう・・
そして憲政様もそうだ・・・関東管領という地位に胡坐をかいている・・・兵も寄せ集めでしかない・・・
8万という大軍は張りぼてである・・・しかしまずは氏康が来る前に川越城を落とさねばならぬ・・・
案の定、川越の守りは固く8万の軍勢をもってしてもなかなかに落ちない・・・
そもそも兵共が先陣を嫌がる・・・将もである・・
結局我ら沼田の兵が先陣を切るが後詰が来ない・・・これでは落とせない・・・不機嫌な顔をして陣で待つ業正の元に憲政が返ってくる
「話はまとまったぞ!先陣は扇谷が行う後詰が我らだ」
「公方殿は動かぬのか?」
「敵は3000 扇谷と我らだけでも3万はある、仮に来るかもしれぬ氏康に対するのも必要であろう・・しかし山猿め・・氏康は1年は富士川で動けぬはずといったが・・・使えぬのう・・・」
「武田晴信を信用してはなりませぬ・・・それに武田にとって地理的に相模は敵ではござらぬ・・それは今川も同じ・・期待する方がおかしい」
「お主の言ったとおりになったのぅ・・だが氏康とて精々2万が精一杯だろう・・・我ら8万の敵ではない」
「・・・・・・」
歴戦の北条家と寄せ集めの我ら、6万の差はあるが・・・楽な戦いではないだろう・・・
だが関東管領として関八州の王となる憲政様にとって北条軍がいなくなれば現実味が増す・・・
余裕の表情を浮かべ座り込む憲政をみて・・・一抹の不安もよぎる
そして間者の知らせが入る。氏康本軍2万川越に向けて進撃
江戸を超え明後日にも川越に到着・・・予想より早い・・・さすがは氏康・・・
「殿、間者の知らせが入りました」
「なんだ業正」
「氏康軍、明後日には到着する模様」
「そうか、随分と早いな・・・ならば明日中に川越は落とさねばならぬな」
「はい・・ですから公方殿にも城攻めの兵を」
「ふむ・・・そうであるな・・・よしならばこれより軍議を行う」
「ならば私も」
「ならぬ・・・お主は嫌われているからのぅ・・・」
苦・・・今は味方だというのに前戦の恨みを持ち込むか・・・烏合の衆とはよく言ったものだ
憲政がいなくなると業正は間者を呼ぶ、しかし間者は既にいなくなっていた。
「どういうことだ?」
「それが・・・よくわからないのですが‥申し訳ありませぬ」
「探し出せ!」
「はい」
業正は兵たちを見渡す・・・
「明日は俺が一番槍だ!・・・」
「ないない、母ちゃんの尻に敷かれている奴がよくいう」
はははははは
「北条綱成なんて、俺の槍がひとつきよ!」
将兵たちの談笑が聞こえる
「父上・・・将兵たちの士気は高いようですね」
「𠮷業よく聞け・・敵を恐れぬ者は弱い・・敵を恐れてなお向かっていく者が強いのだ・・・この者たちは死を恐れる・・優位な立場にいる時は士気は高いように見える・・しかしいったん崩れだすと死を恐れる者共は総崩れになる。敵を恐れるが死を恐れぬ者こそが本当の強者である」
「はい・・しかし戦力差を見ますと・・」
「お主も若い・・・しかしこの川越城・・平山城だが北条家も改修を重ね堅城に仕上がっている、北条綱成・・相模一の猛将は流石だ・・・結局この城を囲うまでに4か月・・囲ってからはどうだ?2か月だぞ・・・時間をかけすぎだ・・・たとえ1万の将兵を失っても直ぐに落とさなければいけないのに・・・」
「しかし城も既にかなりボロが来ています・・先日我らの猛攻が効いています」
「うむ・・もう一押しである・・・そうなってから本軍が動くとはな・・・烏合の衆故に・・・」
「確かに・・・我らの犠牲が・・扇谷の手柄になるのは癪ですが・・・」
「ふん・・勝てばいい・・手柄などは勝てばいくらでも稼げる・・」
「はい・・」
----------------
「父上!兵達が酒盛りをしています・・・」
「何!どこの愚か者だ!」
「それが公方殿からの差し入れだとか・・・明日決着する決戦の前祝いだとかで・・」
「く!憲政様の元に行く!」
---------------
「く・・・これでは・・夜襲されたら一大事ではないか・・・」
「しかし今夜は氏康本陣は来ないようですが・・」
「侮るな!・・・わしが放った間者は一人とて戻ってはおらぬ・・・見知らぬ間者の報告など信じるな」
「はい・・・しかし・・」
「𠮷業!沼田衆が酒を飲んでいれば首を跳ねよ!」
「は!」
***********************
「ふむ・・・ここまでか・・・氏康・・・すまねえな・・・先に行くかもしれんな」
北条綱成が守る川越城の将兵は満身創痍であった、包囲されるまでのゲリラ戦などで既に500の兵を失い、先日の猛攻で城内は怪我人であふれていた・・・まともに戦えそうなのは1500ほど・・・しかし今の城門は長くは耐えれそうにない・・・
俺が攻め手なら明日総攻撃だ・・・動くなら今夜だが・・そこまで奴らは愚かではないであろう。
しかし、城から見る上杉方は酒を煽っていた
どういうことだ・・罠か・・・敵には長野業成がいる・・罠も十分あり得る
「綱成様!あれは綱房様ではないでしょうか?」
兵たちが指をさす方向に1騎 そして風魔衆と思われる従者・・・
「綱房だ…どうやって・」
「あ、敵を切った」
「綱房を迎えろ!門を開けい!弓隊 援護せい!」
「おう!」
「兄者!朗報じゃ!今夜夜襲を仕掛ける 我らがこの城に入ると 知らせが飛ぶ!」
「この暗闇どういう知らせだ?」
「見てくれ・・氏政様が作られた知らせだ・・この赤い石をこの筒に入れて ここを押すと」
筒から火の玉が夜空に打ちあがる
「さあ兄者氏康様からの書状じゃ!」
書状を松明に近づけ読み取る!
「勝った!勝った!この戦!勝ったぞ!」
*********************
「知らせが上がりました」
「ほぅ・・氏政なんだあれは?」
「はい・・鉄砲の原理で火の玉を空にあげました・・私しか作れませぬが・・」
「ふっ!可笑しな奴だ・・・全軍太鼓を鳴らしながら突撃しろ、この戦勝つぞ!」
「「「おおおおおおおお」」」」
ドン!ドン!ドン!ドン!
「「「「おおおおおお」」」」」
「父上!私にも戦果を上げさせてください」
「おう氏政!嫡男だからって安全な場所には置かぬぞ!敵を切ってこい」
「は!」
「氏康様・・・氏政様にはまだ早いのでは」
「盛昌!氏政の下には氏照もいる・・問題はない、それにこの中に氏政に剣で勝てる奴はいるか?」
「たしかに・・・氏政様に敵う者などすでに北条にはいません・・・わかりました・・政繁!氏政様に負けるな!」
「おう!」
大道寺政繁も氏政を追う
当然氏康も氏政を一人で行かせているわけではない
風魔一番の使い手で棟梁である風魔小太郎にその護衛を任せている・・そして
「我も行くぞ!良いですな義父上!」
「ふ!阿修羅姫の実力を見せてこい!」
「有難き幸せ!」
「北条阿修羅衆我に続け!」
「「「「おおおおお」」」」」
紅姫率いる女武者隊50も勇ましく騎馬にのり戦に繰り出す
「時代は変わりましたなあ・・女武者に先陣を走る跡取り…いやはやそれに・・・・」
「では我らも行きましょう・・紺碧衆よ集まりなさい!」
「はい!」
「魔法使えないからこれ使う・・・美味しいご飯を食べる為・・・一人でも多くを殺すの」
「はい!」
こちらも女武者隊、手に持つボーガンは弓を弾く力のない女でも扱える弓である。
それでいて命中度も高い
そしてそれを率いるのは碧である
「父様をお助けするのです!紺碧衆!」
「はい!」
「あれも氏政様が・・」
「うむ・・・あれなら女子供すら弓を弾ける・・・恐ろしい武器じゃ」
「わしも戦場に立ちたいものだな!」
「それはなりませぬ・・氏康様・・ここは若様にお任せしましょう」
「うむ・・・退屈じゃな」
********************
若様の力これほどとは・・・既に首級は50を超えるぞ・・・風魔小太郎は氏政の戦いぶりを見ていた
そして氏政が向かうは敵の大将首の一つ扇谷上杉朝定の陣・・・
大将首を狙うか・・・面白い!
「風魔衆 若の援護をしろ!」
「おう!」
その風魔小太郎の武器は素手である、2mはある大きな巨体に殴られた敵兵はそれだけで息を引き取る
「若に負けるな!新玉縄衆よ!」
「おう!」
玉縄を綱成から引き継いだ大道寺一門を率いるのは、若武者政繁。
大槍を操り既に首級は10を超える、その様子を見た小太郎は北条の未来に夢を見る
これは北条の天下もあり得るぞ!
伊豆衆から駆け付けた若武者
清水新七郎こと政勝も元服をし、この戦に暴れている
彼はその怪力で大きな丸太を振り回し敵兵を次々と再起不能に貶める
「おらおらおら!弱えぞ!」
北条の若武者の大暴れである
************
まだ酔いが覚めぬ上杉朝定・・何が起きているのかわかっていない
「朝定さま!夜襲ですお逃げ下さい・・・おあ!」
一人の将が陣に駆け込むと同時に年の頃13歳くらいの若武者がその将の首を跳ねて陣に乗り込む
「貴様が扇谷上杉朝定か!」
「いい、いかにも!お前は・・」
「俺は北条氏政!尋常にその首をもらい受ける」
「な!かかれ!・・・こんな子供など!北条の跡取りぞ!褒美を遣わす!」
しかしその声が発せられる頃には動ける近従は一人もいなかった
「・・・な・・・うわあああああ」
朝定は刀を抜き氏政に襲い掛かるが刀を振り下ろした頃には既にその首が宙を待っていた
「うむ!敵大将!扇谷上杉朝定!北条家嫡男氏政様が打ち取ったぞ!」
風魔小太郎の大声は戦場にこだまする
「まだ大将首は2つあるな!どうせついてくるのだろう小太郎!」
「おう!若様!ついていくぞ!」
氏政は山内上杉憲政の陣に突き進む
**************************
「いったい何事じゃ!何が起きたのじゃ!」
古河公方足利晴氏もまたその戦況を理解していなかった。近従でさえ逃げ惑う・・そこに駆け付ける深紅の軍団、率いるのは赤髪女武者
「見つけたぞ!大将首!神妙にお首を頂戴する!」
「ひ~我は降る・・・降るから命だけは・・・」
「ち!情けない・・・それでよく大将が務まるな!阿修羅衆!このクソ虫を縛り上げろ!氏康様の義兄弟であることに恩に着ろ」
「は!」
古川公方足利晴氏は紅によって捕縛される
女に捕縛された大名として永遠と語り継がれていくことになる
**********************
「勝った勝った!」
川越城を守る北条綱成と動ける城兵は門を開けて敵陣に突っ込む
酔っぱらって眠り呆けた上杉軍は突然の襲撃に慌てふためく、そして四方八方から太鼓の音が鳴る、扇谷上杉の軍勢は混乱の極みに入った
6か月も劣勢を守っていた綱成率いる川越衆はここぞとばかりに上杉兵を切り捨てていく!
**************************
長野業正の軍は駆け付ける若武者に弓を向ける
「憲政様を逃せ!沼田に引き上げじゃ!殿は俺が引き受ける!」
「父上!なりませぬ!ここは私が!」
「お前じゃ無理だ!憲政様をお守りしろ!」
「その憲政様の命です・・・私の死に場所です!」
「なに!く・・・・簡単に死ぬことを許さぬぞ!𠮷業」
「お任せください!父上に鍛えられましたから」
「沼田衆!憲政様をお守りしろ・・・くそ・・・𠮷業!」
長野𠮷業と沼田の精鋭50騎は氏政を迎い受ける
「北条の若武者、名を名乗れ!」
「俺は北条氏政だ!」
「嫡男の氏政だと?これが北条の戦い方か・・俺は長野業正の嫡男長野𠮷業である、一騎打ちを所望いたす!」
こうして長野𠮷業と氏政の一騎打ちが始まった
沼田の若武者𠮷業は強かった・・・しかし前世で魔王すらも手玉に取る氏政の剣の前にはそれは通用しなかった。
首を跳ねられた𠮷業の顔はどこか満足気でもあった
そして𠮷業が討たれた後、残った沼田の精鋭も果敢に抵抗し上杉憲政の逃亡を許してしまった
しかし
3大名の連合軍8万の軍勢は瓦解し、扇谷上杉朝定は打ち取られ、古河公方足利晴氏は捕縛される
2万の軍勢が8万の大軍を打ち破る戦国時代きっての大戦は一晩で終結したのである
北条家は武蔵野平野を平定し古川公方足利晴氏は息子に古河公方の職を渡し、北条家に幽閉される、伊豆相模武蔵野の3郡を制した北条家は戦国最大規模の勢力を誇ることになる。
時間をかければ北条本軍が付くだろう・・・間者の知らせだと北条は富士川で今川と和解して直ぐに引き返したという。 北条氏康・・・父氏綱に負けぬ先を見る目があると見える・・・
そして若干13歳の氏政という氏康の嫡男が聡明であり、腕もたつと聞く・・・強き若武者はそれだけで軍の勢いを増す、ましては跡取りがそうであれば大軍をひっくり返す勢いを持つ・・・
古河公方足利晴氏の軍などは一番多いが・・・論外だ・・・こいつらは居るだけの兵だ・・・
こういう死ぬ覚悟のない兵が一番厄介なのだ・・戦う男の顔ではない
関東享禄の内乱では氏綱を引き入れ古河公方にのし上がったが・・この坂東に幕府の力なぞは屁でしかない・・・
豪族共は強き者につく・・晴氏ではこの坂東を支配する力はないだろう・・
そして憲政様もそうだ・・・関東管領という地位に胡坐をかいている・・・兵も寄せ集めでしかない・・・
8万という大軍は張りぼてである・・・しかしまずは氏康が来る前に川越城を落とさねばならぬ・・・
案の定、川越の守りは固く8万の軍勢をもってしてもなかなかに落ちない・・・
そもそも兵共が先陣を嫌がる・・・将もである・・
結局我ら沼田の兵が先陣を切るが後詰が来ない・・・これでは落とせない・・・不機嫌な顔をして陣で待つ業正の元に憲政が返ってくる
「話はまとまったぞ!先陣は扇谷が行う後詰が我らだ」
「公方殿は動かぬのか?」
「敵は3000 扇谷と我らだけでも3万はある、仮に来るかもしれぬ氏康に対するのも必要であろう・・しかし山猿め・・氏康は1年は富士川で動けぬはずといったが・・・使えぬのう・・・」
「武田晴信を信用してはなりませぬ・・・それに武田にとって地理的に相模は敵ではござらぬ・・それは今川も同じ・・期待する方がおかしい」
「お主の言ったとおりになったのぅ・・だが氏康とて精々2万が精一杯だろう・・・我ら8万の敵ではない」
「・・・・・・」
歴戦の北条家と寄せ集めの我ら、6万の差はあるが・・・楽な戦いではないだろう・・・
だが関東管領として関八州の王となる憲政様にとって北条軍がいなくなれば現実味が増す・・・
余裕の表情を浮かべ座り込む憲政をみて・・・一抹の不安もよぎる
そして間者の知らせが入る。氏康本軍2万川越に向けて進撃
江戸を超え明後日にも川越に到着・・・予想より早い・・・さすがは氏康・・・
「殿、間者の知らせが入りました」
「なんだ業正」
「氏康軍、明後日には到着する模様」
「そうか、随分と早いな・・・ならば明日中に川越は落とさねばならぬな」
「はい・・ですから公方殿にも城攻めの兵を」
「ふむ・・・そうであるな・・・よしならばこれより軍議を行う」
「ならば私も」
「ならぬ・・・お主は嫌われているからのぅ・・・」
苦・・・今は味方だというのに前戦の恨みを持ち込むか・・・烏合の衆とはよく言ったものだ
憲政がいなくなると業正は間者を呼ぶ、しかし間者は既にいなくなっていた。
「どういうことだ?」
「それが・・・よくわからないのですが‥申し訳ありませぬ」
「探し出せ!」
「はい」
業正は兵たちを見渡す・・・
「明日は俺が一番槍だ!・・・」
「ないない、母ちゃんの尻に敷かれている奴がよくいう」
はははははは
「北条綱成なんて、俺の槍がひとつきよ!」
将兵たちの談笑が聞こえる
「父上・・・将兵たちの士気は高いようですね」
「𠮷業よく聞け・・敵を恐れぬ者は弱い・・敵を恐れてなお向かっていく者が強いのだ・・・この者たちは死を恐れる・・優位な立場にいる時は士気は高いように見える・・しかしいったん崩れだすと死を恐れる者共は総崩れになる。敵を恐れるが死を恐れぬ者こそが本当の強者である」
「はい・・しかし戦力差を見ますと・・」
「お主も若い・・・しかしこの川越城・・平山城だが北条家も改修を重ね堅城に仕上がっている、北条綱成・・相模一の猛将は流石だ・・・結局この城を囲うまでに4か月・・囲ってからはどうだ?2か月だぞ・・・時間をかけすぎだ・・・たとえ1万の将兵を失っても直ぐに落とさなければいけないのに・・・」
「しかし城も既にかなりボロが来ています・・先日我らの猛攻が効いています」
「うむ・・もう一押しである・・・そうなってから本軍が動くとはな・・・烏合の衆故に・・・」
「確かに・・・我らの犠牲が・・扇谷の手柄になるのは癪ですが・・・」
「ふん・・勝てばいい・・手柄などは勝てばいくらでも稼げる・・」
「はい・・」
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「父上!兵達が酒盛りをしています・・・」
「何!どこの愚か者だ!」
「それが公方殿からの差し入れだとか・・・明日決着する決戦の前祝いだとかで・・」
「く!憲政様の元に行く!」
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「く・・・これでは・・夜襲されたら一大事ではないか・・・」
「しかし今夜は氏康本陣は来ないようですが・・」
「侮るな!・・・わしが放った間者は一人とて戻ってはおらぬ・・・見知らぬ間者の報告など信じるな」
「はい・・・しかし・・」
「𠮷業!沼田衆が酒を飲んでいれば首を跳ねよ!」
「は!」
***********************
「ふむ・・・ここまでか・・・氏康・・・すまねえな・・・先に行くかもしれんな」
北条綱成が守る川越城の将兵は満身創痍であった、包囲されるまでのゲリラ戦などで既に500の兵を失い、先日の猛攻で城内は怪我人であふれていた・・・まともに戦えそうなのは1500ほど・・・しかし今の城門は長くは耐えれそうにない・・・
俺が攻め手なら明日総攻撃だ・・・動くなら今夜だが・・そこまで奴らは愚かではないであろう。
しかし、城から見る上杉方は酒を煽っていた
どういうことだ・・罠か・・・敵には長野業成がいる・・罠も十分あり得る
「綱成様!あれは綱房様ではないでしょうか?」
兵たちが指をさす方向に1騎 そして風魔衆と思われる従者・・・
「綱房だ…どうやって・」
「あ、敵を切った」
「綱房を迎えろ!門を開けい!弓隊 援護せい!」
「おう!」
「兄者!朗報じゃ!今夜夜襲を仕掛ける 我らがこの城に入ると 知らせが飛ぶ!」
「この暗闇どういう知らせだ?」
「見てくれ・・氏政様が作られた知らせだ・・この赤い石をこの筒に入れて ここを押すと」
筒から火の玉が夜空に打ちあがる
「さあ兄者氏康様からの書状じゃ!」
書状を松明に近づけ読み取る!
「勝った!勝った!この戦!勝ったぞ!」
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「知らせが上がりました」
「ほぅ・・氏政なんだあれは?」
「はい・・鉄砲の原理で火の玉を空にあげました・・私しか作れませぬが・・」
「ふっ!可笑しな奴だ・・・全軍太鼓を鳴らしながら突撃しろ、この戦勝つぞ!」
「「「おおおおおおおお」」」」
ドン!ドン!ドン!ドン!
「「「「おおおおおお」」」」」
「父上!私にも戦果を上げさせてください」
「おう氏政!嫡男だからって安全な場所には置かぬぞ!敵を切ってこい」
「は!」
「氏康様・・・氏政様にはまだ早いのでは」
「盛昌!氏政の下には氏照もいる・・問題はない、それにこの中に氏政に剣で勝てる奴はいるか?」
「たしかに・・・氏政様に敵う者などすでに北条にはいません・・・わかりました・・政繁!氏政様に負けるな!」
「おう!」
大道寺政繁も氏政を追う
当然氏康も氏政を一人で行かせているわけではない
風魔一番の使い手で棟梁である風魔小太郎にその護衛を任せている・・そして
「我も行くぞ!良いですな義父上!」
「ふ!阿修羅姫の実力を見せてこい!」
「有難き幸せ!」
「北条阿修羅衆我に続け!」
「「「「おおおおお」」」」」
紅姫率いる女武者隊50も勇ましく騎馬にのり戦に繰り出す
「時代は変わりましたなあ・・女武者に先陣を走る跡取り…いやはやそれに・・・・」
「では我らも行きましょう・・紺碧衆よ集まりなさい!」
「はい!」
「魔法使えないからこれ使う・・・美味しいご飯を食べる為・・・一人でも多くを殺すの」
「はい!」
こちらも女武者隊、手に持つボーガンは弓を弾く力のない女でも扱える弓である。
それでいて命中度も高い
そしてそれを率いるのは碧である
「父様をお助けするのです!紺碧衆!」
「はい!」
「あれも氏政様が・・」
「うむ・・・あれなら女子供すら弓を弾ける・・・恐ろしい武器じゃ」
「わしも戦場に立ちたいものだな!」
「それはなりませぬ・・氏康様・・ここは若様にお任せしましょう」
「うむ・・・退屈じゃな」
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若様の力これほどとは・・・既に首級は50を超えるぞ・・・風魔小太郎は氏政の戦いぶりを見ていた
そして氏政が向かうは敵の大将首の一つ扇谷上杉朝定の陣・・・
大将首を狙うか・・・面白い!
「風魔衆 若の援護をしろ!」
「おう!」
その風魔小太郎の武器は素手である、2mはある大きな巨体に殴られた敵兵はそれだけで息を引き取る
「若に負けるな!新玉縄衆よ!」
「おう!」
玉縄を綱成から引き継いだ大道寺一門を率いるのは、若武者政繁。
大槍を操り既に首級は10を超える、その様子を見た小太郎は北条の未来に夢を見る
これは北条の天下もあり得るぞ!
伊豆衆から駆け付けた若武者
清水新七郎こと政勝も元服をし、この戦に暴れている
彼はその怪力で大きな丸太を振り回し敵兵を次々と再起不能に貶める
「おらおらおら!弱えぞ!」
北条の若武者の大暴れである
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まだ酔いが覚めぬ上杉朝定・・何が起きているのかわかっていない
「朝定さま!夜襲ですお逃げ下さい・・・おあ!」
一人の将が陣に駆け込むと同時に年の頃13歳くらいの若武者がその将の首を跳ねて陣に乗り込む
「貴様が扇谷上杉朝定か!」
「いい、いかにも!お前は・・」
「俺は北条氏政!尋常にその首をもらい受ける」
「な!かかれ!・・・こんな子供など!北条の跡取りぞ!褒美を遣わす!」
しかしその声が発せられる頃には動ける近従は一人もいなかった
「・・・な・・・うわあああああ」
朝定は刀を抜き氏政に襲い掛かるが刀を振り下ろした頃には既にその首が宙を待っていた
「うむ!敵大将!扇谷上杉朝定!北条家嫡男氏政様が打ち取ったぞ!」
風魔小太郎の大声は戦場にこだまする
「まだ大将首は2つあるな!どうせついてくるのだろう小太郎!」
「おう!若様!ついていくぞ!」
氏政は山内上杉憲政の陣に突き進む
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「見つけたぞ!大将首!神妙にお首を頂戴する!」
「ひ~我は降る・・・降るから命だけは・・・」
「ち!情けない・・・それでよく大将が務まるな!阿修羅衆!このクソ虫を縛り上げろ!氏康様の義兄弟であることに恩に着ろ」
「は!」
古川公方足利晴氏は紅によって捕縛される
女に捕縛された大名として永遠と語り継がれていくことになる
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「勝った勝った!」
川越城を守る北条綱成と動ける城兵は門を開けて敵陣に突っ込む
酔っぱらって眠り呆けた上杉軍は突然の襲撃に慌てふためく、そして四方八方から太鼓の音が鳴る、扇谷上杉の軍勢は混乱の極みに入った
6か月も劣勢を守っていた綱成率いる川越衆はここぞとばかりに上杉兵を切り捨てていく!
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長野業正の軍は駆け付ける若武者に弓を向ける
「憲政様を逃せ!沼田に引き上げじゃ!殿は俺が引き受ける!」
「父上!なりませぬ!ここは私が!」
「お前じゃ無理だ!憲政様をお守りしろ!」
「その憲政様の命です・・・私の死に場所です!」
「なに!く・・・・簡単に死ぬことを許さぬぞ!𠮷業」
「お任せください!父上に鍛えられましたから」
「沼田衆!憲政様をお守りしろ・・・くそ・・・𠮷業!」
長野𠮷業と沼田の精鋭50騎は氏政を迎い受ける
「北条の若武者、名を名乗れ!」
「俺は北条氏政だ!」
「嫡男の氏政だと?これが北条の戦い方か・・俺は長野業正の嫡男長野𠮷業である、一騎打ちを所望いたす!」
こうして長野𠮷業と氏政の一騎打ちが始まった
沼田の若武者𠮷業は強かった・・・しかし前世で魔王すらも手玉に取る氏政の剣の前にはそれは通用しなかった。
首を跳ねられた𠮷業の顔はどこか満足気でもあった
そして𠮷業が討たれた後、残った沼田の精鋭も果敢に抵抗し上杉憲政の逃亡を許してしまった
しかし
3大名の連合軍8万の軍勢は瓦解し、扇谷上杉朝定は打ち取られ、古河公方足利晴氏は捕縛される
2万の軍勢が8万の大軍を打ち破る戦国時代きっての大戦は一晩で終結したのである
北条家は武蔵野平野を平定し古川公方足利晴氏は息子に古河公方の職を渡し、北条家に幽閉される、伊豆相模武蔵野の3郡を制した北条家は戦国最大規模の勢力を誇ることになる。
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新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
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「元気に育ってねぇクロウ」
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そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
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この物語は
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『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
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> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
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神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
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転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
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