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第1章:過去の残響(リバーブ・オブ・ザ・パスト)
第1話:止まった実験室 Part 1
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「……嘘だろ、これ。」
誠の声がかすれた。
室内には、古びた計器とガラス管が並び、壁の時計は11時35分で止まったままだった。
計測用のアームが中途半端な位置で静止し、空気の流れすら――凍りついている。
俺――篠原悠は息を呑んだ。
目の前に広がる光景は、確かに“時間が動いていない”のに、確かに“存在している”現実だった。
中央の実験台には、白衣を着た数人の研究員が立っていた。
だが、彼らは生きている人間ではなかった。
同じ動作――ペンを取り、ボタンを押し、記録をつける。
まるで映像のループのように、数秒間の行動を繰り返している。
誠が怯えた声で言う。
「録画……じゃないよな?」
「空気がある。温度もある。……けど、時間が動いてない。」
俺は腕時計を確認する。
秒針がぴたりと止まっている。
体温は感じる。だが、“世界”が止まっている。
(ここは……記録じゃない。再現だ。)
照明が一瞬だけ明滅した。
その瞬間、壁の端末が自動的に起動する。
スクリーンに浮かび上がった文字。
No.25 – Memory Loop
ザザッ、とノイズ。
古いスピーカーから、かすれた女性の声が流れ出した。
「……カナデ、あなたは――」
(カナデ?)
その名を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。
まるで誰かが自分の記憶を覗き込んだような感覚。
誠が慌てて足元のコードを踏み、ガラス装置が明滅を繰り返す。
――低い音が響いた。
警告音でも機械音でもない。
まるで、心臓が鼓動するような“世界の音”。
そして、扉の向こうから声がした。
「危ないっ!」
振り向く。
その瞬間、白い閃光が走り、空間がねじれた。
光の中心に――ひとりの女性が立っていた。
冷たい瞳、整った横顔。
肩までの黒髪がふわりと揺れ、白衣の裾が風に舞う。
その胸元には、透明なペンダントが光を反射していた。
中には、小さな歯車のような機構が封じられている。
「……あんた、誰だ?」
彼女は静かに俺たちを見据え、言葉を選ぶように答えた。
「如月奏。――この施設で、25年前に両親を失った人間です。」
誠が息を呑む。
「25年前……? そんなバカな。」
奏はまっすぐ彼を見た。
「ここは、時間が閉じた場所。“過去”が消えずに、再生し続けている層(レイヤー)。」
その言葉に、俺の背筋が冷たくなった。
(……再生?)
彼女の瞳の奥に、悲しみと覚悟が見えた。
その瞬間、背後の影が動く。
暗がりから、無表情の男が現れた。
白いコート、光を反射する灰色の瞳。
九条蓮――彼は、時が止まった実験室をゆっくりと見渡し、低く、まるで独り言のように呟いた。
「また……来たのか。」
誠が顔をしかめる。
「“また”? どういう意味だよ?」
九条は答えない。
ただ、壁の計器のひとつを指先でなぞった。
「時間は、円のようなものだ。
誰かが“終わり”を選ばない限り、再び始まる。」
奏が静かに続けた。
「あなたたちは、この円の中に迷い込んだの。ここにあるのは、“25年前の事故が終わらなかった世界”。」
誠:「なに言ってんだ……?」
悠:(25年前――父が関わった、TIME-LAB計画。)
その時、床のラインが青く光り始めた。
まるで何かを“認識”したように。
【MIDO SYSTEM:HUMAN ENTRY CONFIRMED】
九条が顔を上げる。
「……君たち、外から来たのか。」
「外?」
「この階層に、“外”など存在しない。」
静寂。
次の瞬間、天井の照明が一斉に点滅する。
スクリーンにノイズが走り、再び文字が現れた。
【25層構造:再起動シーケンス開始】
誠が叫ぶ。
「おい悠、これマズいんじゃ――!」
だが、もう逃げられなかった。
白い光が再び走り、世界が震える。
音も温度もすべてが消える。
俺の視界の中で、奏の唇が動いた。
「……25階が、目を覚ます。」
次の瞬間、すべてが白く塗り潰された。
――時間が再び、動き出す。
誠の声がかすれた。
室内には、古びた計器とガラス管が並び、壁の時計は11時35分で止まったままだった。
計測用のアームが中途半端な位置で静止し、空気の流れすら――凍りついている。
俺――篠原悠は息を呑んだ。
目の前に広がる光景は、確かに“時間が動いていない”のに、確かに“存在している”現実だった。
中央の実験台には、白衣を着た数人の研究員が立っていた。
だが、彼らは生きている人間ではなかった。
同じ動作――ペンを取り、ボタンを押し、記録をつける。
まるで映像のループのように、数秒間の行動を繰り返している。
誠が怯えた声で言う。
「録画……じゃないよな?」
「空気がある。温度もある。……けど、時間が動いてない。」
俺は腕時計を確認する。
秒針がぴたりと止まっている。
体温は感じる。だが、“世界”が止まっている。
(ここは……記録じゃない。再現だ。)
照明が一瞬だけ明滅した。
その瞬間、壁の端末が自動的に起動する。
スクリーンに浮かび上がった文字。
No.25 – Memory Loop
ザザッ、とノイズ。
古いスピーカーから、かすれた女性の声が流れ出した。
「……カナデ、あなたは――」
(カナデ?)
その名を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。
まるで誰かが自分の記憶を覗き込んだような感覚。
誠が慌てて足元のコードを踏み、ガラス装置が明滅を繰り返す。
――低い音が響いた。
警告音でも機械音でもない。
まるで、心臓が鼓動するような“世界の音”。
そして、扉の向こうから声がした。
「危ないっ!」
振り向く。
その瞬間、白い閃光が走り、空間がねじれた。
光の中心に――ひとりの女性が立っていた。
冷たい瞳、整った横顔。
肩までの黒髪がふわりと揺れ、白衣の裾が風に舞う。
その胸元には、透明なペンダントが光を反射していた。
中には、小さな歯車のような機構が封じられている。
「……あんた、誰だ?」
彼女は静かに俺たちを見据え、言葉を選ぶように答えた。
「如月奏。――この施設で、25年前に両親を失った人間です。」
誠が息を呑む。
「25年前……? そんなバカな。」
奏はまっすぐ彼を見た。
「ここは、時間が閉じた場所。“過去”が消えずに、再生し続けている層(レイヤー)。」
その言葉に、俺の背筋が冷たくなった。
(……再生?)
彼女の瞳の奥に、悲しみと覚悟が見えた。
その瞬間、背後の影が動く。
暗がりから、無表情の男が現れた。
白いコート、光を反射する灰色の瞳。
九条蓮――彼は、時が止まった実験室をゆっくりと見渡し、低く、まるで独り言のように呟いた。
「また……来たのか。」
誠が顔をしかめる。
「“また”? どういう意味だよ?」
九条は答えない。
ただ、壁の計器のひとつを指先でなぞった。
「時間は、円のようなものだ。
誰かが“終わり”を選ばない限り、再び始まる。」
奏が静かに続けた。
「あなたたちは、この円の中に迷い込んだの。ここにあるのは、“25年前の事故が終わらなかった世界”。」
誠:「なに言ってんだ……?」
悠:(25年前――父が関わった、TIME-LAB計画。)
その時、床のラインが青く光り始めた。
まるで何かを“認識”したように。
【MIDO SYSTEM:HUMAN ENTRY CONFIRMED】
九条が顔を上げる。
「……君たち、外から来たのか。」
「外?」
「この階層に、“外”など存在しない。」
静寂。
次の瞬間、天井の照明が一斉に点滅する。
スクリーンにノイズが走り、再び文字が現れた。
【25層構造:再起動シーケンス開始】
誠が叫ぶ。
「おい悠、これマズいんじゃ――!」
だが、もう逃げられなかった。
白い光が再び走り、世界が震える。
音も温度もすべてが消える。
俺の視界の中で、奏の唇が動いた。
「……25階が、目を覚ます。」
次の瞬間、すべてが白く塗り潰された。
――時間が再び、動き出す。
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