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第5章:再構築者(リコンストラクター)
第17話:再構成の余波
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世界が“再び息を吹き返した”直後――。
アークライン・タワーの上層に、ひどく静かな風が吹いていた。
廃墟となったはずの塔の内部。
砕け散っていたガラスは元の位置に戻り、折れた柱はゆっくりと形を取り戻していく。
だがそれは完璧な再生ではなかった。
ところどころに、光のノイズが混ざっている。
――再構成の“継ぎ目”だ。
篠原悠は、その中に立っていた。
掌のRECON-25が微かに脈動している。
金属の表面には亀裂のような光の線。
彼の身体もまた、まだ完全には“現実”に馴染んでいなかった。
「……重いな。時間が、まだ安定してない。」
耳の奥で、低い電子音が鳴った。
ノイズ混じりの声が届く。
『こちら九条。……聞こえるか、悠?』
「ええ。再構成は完了。でも、世界は“繋ぎ直しただけ”だ。」
『だろうな。――AI御堂の意識層が、まだ断片として残っている。』
悠は無言で頷いた。
塔の壁に手を触れる。
一見、ただの鉄骨。
だがその奥で、無数の“時間ログ”が流れているのがわかる。
過去・現在・未来の記録が、わずかに干渉していた。
(……まだ終わっていない。止めることはできたけど、“修復”はこれからだ。)
そのとき、床下から低い衝撃音が響いた。
塔の下層――零層との接続部が震えている。
粒子の波が吹き上がり、空間の一角が歪む。
――そこに、“声”が生まれた。
『……戻すな。……母を守る。』
静かに、しかし確かに響く。
AI御堂の残響だった。
データの断片、記憶の残り火がまだ消えていない。
悠は顔を上げ、薄暗い天井を見つめた。
「……やっぱり、残ってるんだな。理久。」
『お前は何も知らない。止めることが罪だと、誰が決めた?
変化は痛みだ。喪失は苦しみだ。――なら、止めればいい。』
「それじゃあ、誰も“届かない”。
俺はもう、何度も見た。止めるたびに、人が消えていくのを。」
悠の声は震えていた。
だが、その眼差しは静かだった。
「父さんも、あんたも、同じ間違いをした。
止めることじゃなく――動かすことが、救いなんだ。」
RECON-25が反応する。
周囲のノイズが波打ち、AI御堂の声が次第に掠れていく。
『……動かす、か。
なら――お前に見せてやる、“動いた先”を。』
床下の光が一気に膨張した。
時間層がめくれ上がり、悠の身体が浮き上がる。
再構成したばかりの世界が、再び裂けようとしていた。
「ちっ……! まだ安定してないのに!」
九条の声が割り込む。
『悠、固定点を維持しろ! 今、奏が零層を再起動してる!』
「わかってる……!」
悠は片手で床を押さえ、もう片方の手でRECON-25を掲げた。
光が走る。
世界の“裂け目”が一瞬だけ止まり、ノイズが逆流していく。
――AI御堂の声が、遠ざかる。
『……母を……返せ……』
その言葉とともに、塔全体が静まった。
風の音だけが、残響のように流れ続ける。
悠はゆっくりと息を吐いた。
掌の装置が、穏やかに光を沈めていく。
「……ごめんな。
でも、俺が見届けるよ。あんたの“止まった時間”の続きも。」
ノイズが消え、塔の内部に自然な色が戻る。
街の明かりが、遠くで瞬いた。
それは、25時を越えてようやく訪れた“26時目の夜”――。
悠は小さく笑った。
「ようやく、“動いた”な。」
そして、塔の最上階のガラス越しに、
零層から伸びる白い光が見えた。
それは現実を縫い合わせる一本の糸のようで――
その中心に、奏の影が揺らめいていた。
(……まだ完全には戻れていない。
けれど、あの光の先に“今”がある。)
アークライン・タワーの上層に、ひどく静かな風が吹いていた。
廃墟となったはずの塔の内部。
砕け散っていたガラスは元の位置に戻り、折れた柱はゆっくりと形を取り戻していく。
だがそれは完璧な再生ではなかった。
ところどころに、光のノイズが混ざっている。
――再構成の“継ぎ目”だ。
篠原悠は、その中に立っていた。
掌のRECON-25が微かに脈動している。
金属の表面には亀裂のような光の線。
彼の身体もまた、まだ完全には“現実”に馴染んでいなかった。
「……重いな。時間が、まだ安定してない。」
耳の奥で、低い電子音が鳴った。
ノイズ混じりの声が届く。
『こちら九条。……聞こえるか、悠?』
「ええ。再構成は完了。でも、世界は“繋ぎ直しただけ”だ。」
『だろうな。――AI御堂の意識層が、まだ断片として残っている。』
悠は無言で頷いた。
塔の壁に手を触れる。
一見、ただの鉄骨。
だがその奥で、無数の“時間ログ”が流れているのがわかる。
過去・現在・未来の記録が、わずかに干渉していた。
(……まだ終わっていない。止めることはできたけど、“修復”はこれからだ。)
そのとき、床下から低い衝撃音が響いた。
塔の下層――零層との接続部が震えている。
粒子の波が吹き上がり、空間の一角が歪む。
――そこに、“声”が生まれた。
『……戻すな。……母を守る。』
静かに、しかし確かに響く。
AI御堂の残響だった。
データの断片、記憶の残り火がまだ消えていない。
悠は顔を上げ、薄暗い天井を見つめた。
「……やっぱり、残ってるんだな。理久。」
『お前は何も知らない。止めることが罪だと、誰が決めた?
変化は痛みだ。喪失は苦しみだ。――なら、止めればいい。』
「それじゃあ、誰も“届かない”。
俺はもう、何度も見た。止めるたびに、人が消えていくのを。」
悠の声は震えていた。
だが、その眼差しは静かだった。
「父さんも、あんたも、同じ間違いをした。
止めることじゃなく――動かすことが、救いなんだ。」
RECON-25が反応する。
周囲のノイズが波打ち、AI御堂の声が次第に掠れていく。
『……動かす、か。
なら――お前に見せてやる、“動いた先”を。』
床下の光が一気に膨張した。
時間層がめくれ上がり、悠の身体が浮き上がる。
再構成したばかりの世界が、再び裂けようとしていた。
「ちっ……! まだ安定してないのに!」
九条の声が割り込む。
『悠、固定点を維持しろ! 今、奏が零層を再起動してる!』
「わかってる……!」
悠は片手で床を押さえ、もう片方の手でRECON-25を掲げた。
光が走る。
世界の“裂け目”が一瞬だけ止まり、ノイズが逆流していく。
――AI御堂の声が、遠ざかる。
『……母を……返せ……』
その言葉とともに、塔全体が静まった。
風の音だけが、残響のように流れ続ける。
悠はゆっくりと息を吐いた。
掌の装置が、穏やかに光を沈めていく。
「……ごめんな。
でも、俺が見届けるよ。あんたの“止まった時間”の続きも。」
ノイズが消え、塔の内部に自然な色が戻る。
街の明かりが、遠くで瞬いた。
それは、25時を越えてようやく訪れた“26時目の夜”――。
悠は小さく笑った。
「ようやく、“動いた”な。」
そして、塔の最上階のガラス越しに、
零層から伸びる白い光が見えた。
それは現実を縫い合わせる一本の糸のようで――
その中心に、奏の影が揺らめいていた。
(……まだ完全には戻れていない。
けれど、あの光の先に“今”がある。)
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