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第5章:再構築者(リコンストラクター)
第18話:再構成された現実
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白い光が静かに沈んでいく。
虚数の海でほどけていた粒子が、
ひとつ、またひとつ、定位置へ戻っていく。
篠原悠は、ゆっくりと目を開けた。
周囲の世界はまだ完全ではない。
街も塔も、まるでスケッチの途中のように輪郭が淡く、
空には灰色のノイズが漂っていた。
(……ここが、再構成された“現実層”。)
指先を動かすと、わずかな抵抗を感じる。
空気の重さ、風の湿り気、足元に伝わる摩擦。
それらが、確かに「時間が動いている」ことを告げていた。
そのとき、低い鐘の音が響いた。
――ゴォォォン。
25時の鐘。
何度もループの終わりに聞いたはずの音が、
今は“始まり”の合図のように感じられた。
悠はゆっくりと顔を上げる。
塔の最上階――ガラスの破片が浮遊するように漂うその空間。
そこから、零層の光が天へと伸びていた。
その光の中に、人影がひとつ。
白い髪が風に揺れ、衣の裾が光を吸い込む。
――奏。
彼女は零層の中心に立ち、
崩壊しかけた“未来層”と“現在層”を繋ぎ止めていた。
その手に、25コードの紋が浮かぶ。
微かな発光が波紋のように広がり、塔の構造を再び形づくっていく。
(……あの光が、現実を縫い合わせている。)
悠は無意識にガラスの手すりへ近づいた。
眼下では、街の建物が少しずつ再構築されていく。
停止していた車、固まっていた雨粒、人々の姿――
全てが、ゆっくりと「動く」世界へと戻っていく。
「これが……“再構成”の完了か。」
背後で、九条の声がした。
彼もまた、静かに光の残滓を見上げていた。
「……ようやく、兄の止めた時間が流れ始めた。」
悠は頷く。
「理久の記録は、RECONがすべて受け取った。
でも、まだ“ひとつ”足りない。」
「――何がだ?」
「彼の“心”だよ。」
悠の言葉に、九条が目を細める。
「AI御堂の中枢には、理久本人の意識断片が残ってる。
記録は戻したが、あれを再生しなければ“完全な現実”にはならない。
――時間は、記録だけじゃ動かない。心があって、ようやく時間になる。」
九条はしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「……君は、父上に似ているな。
理久も、そう言っていた。
“記録者は、いつか時間を理解する”と。」
「理解してるかは分からないけど――
少なくとも、もう“止める理由”はないさ。」
悠は掌のRECON-25を見つめた。
金属の表面には、微かな光のライン。
それはまるで、心臓の鼓動のように一定のリズムで脈打っている。
「……九条さん、行きましょう。
あの光の中心――“AI御堂”のいる場所へ。」
九条は無言で頷き、コートの裾を翻した。
二人の足元に、白い通路が再び浮かび上がる。
零層へと続く一本の道。
鐘の余韻が遠ざかる。
風が吹き抜け、
世界はゆっくりと、静かに再生を続けていた。
悠は歩き出す。
――もう観測者ではない。
今度は、自らの手で“時”を動かすために。
虚数の海でほどけていた粒子が、
ひとつ、またひとつ、定位置へ戻っていく。
篠原悠は、ゆっくりと目を開けた。
周囲の世界はまだ完全ではない。
街も塔も、まるでスケッチの途中のように輪郭が淡く、
空には灰色のノイズが漂っていた。
(……ここが、再構成された“現実層”。)
指先を動かすと、わずかな抵抗を感じる。
空気の重さ、風の湿り気、足元に伝わる摩擦。
それらが、確かに「時間が動いている」ことを告げていた。
そのとき、低い鐘の音が響いた。
――ゴォォォン。
25時の鐘。
何度もループの終わりに聞いたはずの音が、
今は“始まり”の合図のように感じられた。
悠はゆっくりと顔を上げる。
塔の最上階――ガラスの破片が浮遊するように漂うその空間。
そこから、零層の光が天へと伸びていた。
その光の中に、人影がひとつ。
白い髪が風に揺れ、衣の裾が光を吸い込む。
――奏。
彼女は零層の中心に立ち、
崩壊しかけた“未来層”と“現在層”を繋ぎ止めていた。
その手に、25コードの紋が浮かぶ。
微かな発光が波紋のように広がり、塔の構造を再び形づくっていく。
(……あの光が、現実を縫い合わせている。)
悠は無意識にガラスの手すりへ近づいた。
眼下では、街の建物が少しずつ再構築されていく。
停止していた車、固まっていた雨粒、人々の姿――
全てが、ゆっくりと「動く」世界へと戻っていく。
「これが……“再構成”の完了か。」
背後で、九条の声がした。
彼もまた、静かに光の残滓を見上げていた。
「……ようやく、兄の止めた時間が流れ始めた。」
悠は頷く。
「理久の記録は、RECONがすべて受け取った。
でも、まだ“ひとつ”足りない。」
「――何がだ?」
「彼の“心”だよ。」
悠の言葉に、九条が目を細める。
「AI御堂の中枢には、理久本人の意識断片が残ってる。
記録は戻したが、あれを再生しなければ“完全な現実”にはならない。
――時間は、記録だけじゃ動かない。心があって、ようやく時間になる。」
九条はしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「……君は、父上に似ているな。
理久も、そう言っていた。
“記録者は、いつか時間を理解する”と。」
「理解してるかは分からないけど――
少なくとも、もう“止める理由”はないさ。」
悠は掌のRECON-25を見つめた。
金属の表面には、微かな光のライン。
それはまるで、心臓の鼓動のように一定のリズムで脈打っている。
「……九条さん、行きましょう。
あの光の中心――“AI御堂”のいる場所へ。」
九条は無言で頷き、コートの裾を翻した。
二人の足元に、白い通路が再び浮かび上がる。
零層へと続く一本の道。
鐘の余韻が遠ざかる。
風が吹き抜け、
世界はゆっくりと、静かに再生を続けていた。
悠は歩き出す。
――もう観測者ではない。
今度は、自らの手で“時”を動かすために。
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