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第7章:時の残響(レゾナンス・オブ・ゼロ)
第37話:零層接続 もう一人の観測者
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白い通路の奥で父の残響が消えたあと、
悠はしばらく立ち尽くしていた。
胸の奥で脈打つ喪失感。
だが同時に、冷たい予感が背中を撫でる。
(……父さんが言っていた“外側の観測者”。
あれは……誰だ?)
その瞬間、空間が低く震えた。
――ビィィィィ……。
零層全体がゆっくりと 「波打つ」 。
まるで、巨大な心臓が動いたように。
そして、耳に届く。
“ザァ……ァ……。”
音ではない。
言語でもない。
“観測波”――誰かの視線そのものだ。
悠は顔を上げ、低く呟いた。
「……来るのか、外側から。」
白い霧が裂ける。
そこに、高密度のノイズの球体が現れ、黒い火花を散らしながら回転していた。
悠の端末が騒がしく点滅する。
【警告:未登録観測波を検知】
【階層識別:不可能】
【干渉率:上昇(42% → 58% → 77%)】
「……なんだ、この波形……!」
そのとき、ノイズ球体の中に
“人のシルエット”が、微かに浮かび上がった。
悠は声を失う。
それは――
子どものように小柄な影だった。
しかし、そのシルエットは
揺らがず、むしろ安定している。
(あり得ない……
外側は“未来素材の海”だ。
そこに“安定した個”が存在できるはずがない……!)
影はゆっくりとこちらへ向き直った。
ノイズがほどけ、輪郭が鮮明になっていく。
最初に現れたのは――
澄んだ瞳だった。
続いて、髪。
頬のライン。
そして――
「……っ……!」
悠の喉がひきつる。
そこにいたのは、
――10歳の少年だった。
しかしその顔立ちには、見覚えがあった。
自分の記憶の最も古い場所に刻まれた影。
(俺……?)
影の少年は、ゆっくりと口を開いた。
だが、声は幼いものではなかった。
『……ようやく見つけた。
“零層の中のもう一人の俺”。』
悠の背筋に冷たいものが走る。
(俺の……“過去”?
いや……違う。時間の外側に過去なんて存在しない……!)
少年の瞳が静かに光り、
背後に無数の波形が立ち上がる。
【観測波形:一致】
【同期率:99.871%】
【識別:――“篠原悠(第一次観測体)”】
悠は息を呑んだ。
「第一次観測体……
……どういうことだよ……?」
少年は一歩踏み出す。
足音はない。
だが、その“存在感”が空間に刻まれる。
『お前は二十五回分の“記録”だ。
だが俺は……』
少年の体から光があふれる。
『――最初に観測を始めた“起源の悠”だ。』
悠は言葉を失う。
(俺が……二人……?
起源の観測者……?
そんなもの、聞いていない……!)
少年は微笑んだ。
それは不思議と“哀しい”笑みだった。
『世界が止まったあの日――
最初に外側へ落ちたのは、俺だ。』
零層が再び震える。
『そして、ここでずっと“待っていた”。
次の未来が、お前に届くのを。』
悠の喉は乾き、声が出ない。
ようやく絞り出した声は、震えていた。
「なんで……教えてくれなかった……
なんで……俺の記憶に……」
少年はゆっくり首を振った。
『記録者は“忘れる”ように作られている。
そうしないと壊れるからだ。』
悠が膝をつく。
25回分の重さ。
観測してきた世界。
父の残響。
九条の涙。
全部が胸に押し寄せる。
その上で――
“起源の自分”までいたのか。
少年は、その涙に似た表情のまま言った。
『……行こう、悠。
この世界はまだ終わらない。
俺たちの“観測”は、ここからが本番だ。』
白い空間に、巨大な波形が立ち上がる。
【外側観測者:起源体(Origin Observer)】
【接続準備:完了】
悠は震える指で、立ち上がった。
「……行こう。
――“俺”。」
二人の観測者が、並び立った。
零層の外側で、
未来がその形を変え始めていた。
悠はしばらく立ち尽くしていた。
胸の奥で脈打つ喪失感。
だが同時に、冷たい予感が背中を撫でる。
(……父さんが言っていた“外側の観測者”。
あれは……誰だ?)
その瞬間、空間が低く震えた。
――ビィィィィ……。
零層全体がゆっくりと 「波打つ」 。
まるで、巨大な心臓が動いたように。
そして、耳に届く。
“ザァ……ァ……。”
音ではない。
言語でもない。
“観測波”――誰かの視線そのものだ。
悠は顔を上げ、低く呟いた。
「……来るのか、外側から。」
白い霧が裂ける。
そこに、高密度のノイズの球体が現れ、黒い火花を散らしながら回転していた。
悠の端末が騒がしく点滅する。
【警告:未登録観測波を検知】
【階層識別:不可能】
【干渉率:上昇(42% → 58% → 77%)】
「……なんだ、この波形……!」
そのとき、ノイズ球体の中に
“人のシルエット”が、微かに浮かび上がった。
悠は声を失う。
それは――
子どものように小柄な影だった。
しかし、そのシルエットは
揺らがず、むしろ安定している。
(あり得ない……
外側は“未来素材の海”だ。
そこに“安定した個”が存在できるはずがない……!)
影はゆっくりとこちらへ向き直った。
ノイズがほどけ、輪郭が鮮明になっていく。
最初に現れたのは――
澄んだ瞳だった。
続いて、髪。
頬のライン。
そして――
「……っ……!」
悠の喉がひきつる。
そこにいたのは、
――10歳の少年だった。
しかしその顔立ちには、見覚えがあった。
自分の記憶の最も古い場所に刻まれた影。
(俺……?)
影の少年は、ゆっくりと口を開いた。
だが、声は幼いものではなかった。
『……ようやく見つけた。
“零層の中のもう一人の俺”。』
悠の背筋に冷たいものが走る。
(俺の……“過去”?
いや……違う。時間の外側に過去なんて存在しない……!)
少年の瞳が静かに光り、
背後に無数の波形が立ち上がる。
【観測波形:一致】
【同期率:99.871%】
【識別:――“篠原悠(第一次観測体)”】
悠は息を呑んだ。
「第一次観測体……
……どういうことだよ……?」
少年は一歩踏み出す。
足音はない。
だが、その“存在感”が空間に刻まれる。
『お前は二十五回分の“記録”だ。
だが俺は……』
少年の体から光があふれる。
『――最初に観測を始めた“起源の悠”だ。』
悠は言葉を失う。
(俺が……二人……?
起源の観測者……?
そんなもの、聞いていない……!)
少年は微笑んだ。
それは不思議と“哀しい”笑みだった。
『世界が止まったあの日――
最初に外側へ落ちたのは、俺だ。』
零層が再び震える。
『そして、ここでずっと“待っていた”。
次の未来が、お前に届くのを。』
悠の喉は乾き、声が出ない。
ようやく絞り出した声は、震えていた。
「なんで……教えてくれなかった……
なんで……俺の記憶に……」
少年はゆっくり首を振った。
『記録者は“忘れる”ように作られている。
そうしないと壊れるからだ。』
悠が膝をつく。
25回分の重さ。
観測してきた世界。
父の残響。
九条の涙。
全部が胸に押し寄せる。
その上で――
“起源の自分”までいたのか。
少年は、その涙に似た表情のまま言った。
『……行こう、悠。
この世界はまだ終わらない。
俺たちの“観測”は、ここからが本番だ。』
白い空間に、巨大な波形が立ち上がる。
【外側観測者:起源体(Origin Observer)】
【接続準備:完了】
悠は震える指で、立ち上がった。
「……行こう。
――“俺”。」
二人の観測者が、並び立った。
零層の外側で、
未来がその形を変え始めていた。
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