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結局――なんのアイデアもないままパーティー当日になってしまった。
「ねえ、もうストレートに聞いてみたらいいのではないかしら?」
フェアリスはフェアリスに髪を結って貰いながら、鏡越しに彼女を見た。
「ストレートでございますか?」
「そうでございます。『対価として、私が出来ることならなんでもやりますので』って言ってみてはどうかしら?」フェアリスはフェアリスの髪にオイルを塗り込みながら、そう言って笑う。
「……そ、そんなこと……言えるでしょうか」フェアリスはポッと頰を染めた。ただでさえ、子作りをしてくれだなんて……大胆なことを言うのに。恥ずかしそうに俯くフェアリスにフェアリスはクスクス笑いながら「私ならそうですよね……」と愛おしそうな眼差しをフェアリスに向けた。
「この結い上げドレス……私も素敵だと思っておりましたの!」フェアリスはフェアリスが選んだドレスを見て、目をキラキラさせている。
「そうでございますよね、そうでございますよね。一人では着れませんもの……私もあなたが来てくれなければこのデザインは無理でした」
フェアリスはニコニコ笑いながら「当たり前ですが、好みが一緒で嬉しい♡なんだか親友が出来たみたいでございます♡」とご機嫌で背中を結い上げている。
「別の日あなたも着てみて?どんな風に他人から見えるか見てみたいもの」二人はキャッキャとはしゃぎながら準備を進めていく。
「多分大丈夫だと思いますが……人が来たら隠れてくださいましね」
「わかっているわ」
フェアリスは小さな声でそう言うと、フェアリスに小さく手を振り部屋を出る。
ホールに出ると既に待っていたバルギアスが、玄関に向かって歩き出したのでフェアリスはその後を早歩きでついて行った。
「……リボンの結び目が緩んでいる」
バルギアスが馬車に乗り込むフェアリスに冷たい声でそう告げる。
「あ、すみません……馴れていないものですから」フェアリスは突然話しかけられたことにも驚いたけれど、ふと先ほど聞いた自分の未来の話を思い出していた。
(髪がほつれていなかったから、リボンを注意されたんだわ)フェアリスは手を後ろに回すと、手探りでリボンをきつく引っ張り結んだ。
もしかしたら不格好かもしれないが仕方がない。
フェアリスは出来るだけ髪の毛でそこが隠れるように、後ろ髪を手で払う。
令嬢のフェアリスの力では少し弱かったのかもしれない。
でもフェアリスはその結び目がとても心強かった。
(一人じゃないわ……)
フェアリスは彼女の想いを胸に秘め、ゆっくりと流れていく外の風景を眺めた。
もしフェアリスが来てくれておらず自分だけだったのならば、こんなに凛と座っていられただろうか?きっとバルギアスの様子が気になってしかたがなかったことだろう。
――――ねえ、もし失敗したら二人で逃げましょう――――
もう一人のフェアリスはそう言って笑ってくれた。
それが……フェアリスの心を強くしてくれているような気がした。
バルギアスのエスコートを受けて馬車を降りると、フェアリスは「う……」と思わず声を上げるところだった。今回のパーティーは王宮で開催されるものだ。
夜の月明かりに照らされた王宮は……まさに王の住処そのものの威厳が、威圧感のように感じられた。それに思わず圧倒されているとバルギアスの視線を感じ、フェアリスは平静を装う。
みっともない所を見せては、今以上に公爵家での扱いが悪くなっては堪らない。
「……まずはあいさつ回りをする」
「かしこまりました」
これも既にフェアリスから予習済みだ。
――――「私はどうすればいいか分からなくて、内心ドキドキしていたんだけどね。ただ、旦那様の後ろでニコニコして会釈をしたり……聞かれたことに答えればいいから。王族への挨拶の時は、旦那様に合わせてお辞儀をして…………」――――
フェアリスは自分に聞いた通りニコニコしていることにした。
――――「旦那様のエスコートは、肘に手を触れるだけでいいわ。あまり近寄りすぎると嫌な顔をされるわよ」――――
フェアリスは適切な距離感を保ち……ニコニコ笑っていた。
しかし終盤――――「奥さん、まだ若いのに……気の毒ね。男性を紹介しましょうか?」マルキエール公爵家の令嬢にそう冷ややかな目をフェアリスは向けられた。彼女はバルギアスのいとこにあたるようで、軽口を言い合うような仲なのだろう。
フェアリスは「ありがとうございます。機会があれば是非、ふふふ」と笑いながら言った。
今までならば泣きそうな顔をして俯くか、ニコニコ笑い無言を貫いただろう。でも……フェアリスは『失敗したら一緒に逃げてくれる』自分がいるのだ。
黙って殴られているのは嫌だった。
「私、爽やかで……細身の男の人が好ましいんです。今流行の舞台俳優のような」
フェアリスは思いっきりバルギアスとは正反対の男性像を告げる。
別に本当にその男性がタイプなわけではない。
でも、バルギアスを素敵だと思っていると思われているのもなんだか癪だったのだ。
「ははははは!面白い女性と結婚したなバルギアス」
マルキエール公爵が大きな声で笑うとそう言って、顔歪めているご令嬢の背中を抱き「それでは失礼」と言ってその場を去った。
バルギアスが何やら言いたげにこちらを見ているような気がしたけれど……フェアリスはそれに気づかないフリをしてただニコニコ笑った。
「ねえ、もうストレートに聞いてみたらいいのではないかしら?」
フェアリスはフェアリスに髪を結って貰いながら、鏡越しに彼女を見た。
「ストレートでございますか?」
「そうでございます。『対価として、私が出来ることならなんでもやりますので』って言ってみてはどうかしら?」フェアリスはフェアリスの髪にオイルを塗り込みながら、そう言って笑う。
「……そ、そんなこと……言えるでしょうか」フェアリスはポッと頰を染めた。ただでさえ、子作りをしてくれだなんて……大胆なことを言うのに。恥ずかしそうに俯くフェアリスにフェアリスはクスクス笑いながら「私ならそうですよね……」と愛おしそうな眼差しをフェアリスに向けた。
「この結い上げドレス……私も素敵だと思っておりましたの!」フェアリスはフェアリスが選んだドレスを見て、目をキラキラさせている。
「そうでございますよね、そうでございますよね。一人では着れませんもの……私もあなたが来てくれなければこのデザインは無理でした」
フェアリスはニコニコ笑いながら「当たり前ですが、好みが一緒で嬉しい♡なんだか親友が出来たみたいでございます♡」とご機嫌で背中を結い上げている。
「別の日あなたも着てみて?どんな風に他人から見えるか見てみたいもの」二人はキャッキャとはしゃぎながら準備を進めていく。
「多分大丈夫だと思いますが……人が来たら隠れてくださいましね」
「わかっているわ」
フェアリスは小さな声でそう言うと、フェアリスに小さく手を振り部屋を出る。
ホールに出ると既に待っていたバルギアスが、玄関に向かって歩き出したのでフェアリスはその後を早歩きでついて行った。
「……リボンの結び目が緩んでいる」
バルギアスが馬車に乗り込むフェアリスに冷たい声でそう告げる。
「あ、すみません……馴れていないものですから」フェアリスは突然話しかけられたことにも驚いたけれど、ふと先ほど聞いた自分の未来の話を思い出していた。
(髪がほつれていなかったから、リボンを注意されたんだわ)フェアリスは手を後ろに回すと、手探りでリボンをきつく引っ張り結んだ。
もしかしたら不格好かもしれないが仕方がない。
フェアリスは出来るだけ髪の毛でそこが隠れるように、後ろ髪を手で払う。
令嬢のフェアリスの力では少し弱かったのかもしれない。
でもフェアリスはその結び目がとても心強かった。
(一人じゃないわ……)
フェアリスは彼女の想いを胸に秘め、ゆっくりと流れていく外の風景を眺めた。
もしフェアリスが来てくれておらず自分だけだったのならば、こんなに凛と座っていられただろうか?きっとバルギアスの様子が気になってしかたがなかったことだろう。
――――ねえ、もし失敗したら二人で逃げましょう――――
もう一人のフェアリスはそう言って笑ってくれた。
それが……フェアリスの心を強くしてくれているような気がした。
バルギアスのエスコートを受けて馬車を降りると、フェアリスは「う……」と思わず声を上げるところだった。今回のパーティーは王宮で開催されるものだ。
夜の月明かりに照らされた王宮は……まさに王の住処そのものの威厳が、威圧感のように感じられた。それに思わず圧倒されているとバルギアスの視線を感じ、フェアリスは平静を装う。
みっともない所を見せては、今以上に公爵家での扱いが悪くなっては堪らない。
「……まずはあいさつ回りをする」
「かしこまりました」
これも既にフェアリスから予習済みだ。
――――「私はどうすればいいか分からなくて、内心ドキドキしていたんだけどね。ただ、旦那様の後ろでニコニコして会釈をしたり……聞かれたことに答えればいいから。王族への挨拶の時は、旦那様に合わせてお辞儀をして…………」――――
フェアリスは自分に聞いた通りニコニコしていることにした。
――――「旦那様のエスコートは、肘に手を触れるだけでいいわ。あまり近寄りすぎると嫌な顔をされるわよ」――――
フェアリスは適切な距離感を保ち……ニコニコ笑っていた。
しかし終盤――――「奥さん、まだ若いのに……気の毒ね。男性を紹介しましょうか?」マルキエール公爵家の令嬢にそう冷ややかな目をフェアリスは向けられた。彼女はバルギアスのいとこにあたるようで、軽口を言い合うような仲なのだろう。
フェアリスは「ありがとうございます。機会があれば是非、ふふふ」と笑いながら言った。
今までならば泣きそうな顔をして俯くか、ニコニコ笑い無言を貫いただろう。でも……フェアリスは『失敗したら一緒に逃げてくれる』自分がいるのだ。
黙って殴られているのは嫌だった。
「私、爽やかで……細身の男の人が好ましいんです。今流行の舞台俳優のような」
フェアリスは思いっきりバルギアスとは正反対の男性像を告げる。
別に本当にその男性がタイプなわけではない。
でも、バルギアスを素敵だと思っていると思われているのもなんだか癪だったのだ。
「ははははは!面白い女性と結婚したなバルギアス」
マルキエール公爵が大きな声で笑うとそう言って、顔歪めているご令嬢の背中を抱き「それでは失礼」と言ってその場を去った。
バルギアスが何やら言いたげにこちらを見ているような気がしたけれど……フェアリスはそれに気づかないフリをしてただニコニコ笑った。
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