【R18】フォルテナよ幸せに

mokumoku

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「クロード様ご存じですか?このお花の葉っぱには三つ葉のものと、四葉のものがあるんですよ?」
「……なるほど」
フォルテナを膝の上に乗せてクロードは自分の周りにある野草を眺めた。ただ小さな葉っぱがたくさんあるようにしかない野草たちにはどうやら葉の枚数が決まっているらしい。
「私……あまり部屋の外に出ることを許されていなかったのですが」
「……?そうなのか……」クロードはフォルテナがそう言うのを少し不思議に思った。屋敷の外に出ることを制限されるならまだしも……なぜ部屋から出ることを許されていなかったのか……?

「たまにリリーと一緒に庭へ行くことは許可されていたのでその時にうちの敷地内にある野原まで歩いていくことになったのです。うちもここのように庭の先にまだ整地されていない野原があって……」フォルテナはシロツメクサ摘むと小さなブーケを作り、クロードの膝から立ち上がって地面を眺めている。

クロードはその背に「何か探してる?」と尋ねた。

「はい、リリーが教えてくれたの……」
フォルテナはそこで言葉を切ると何かを摘んでブーケに加えクロードの方を向いた。

秋の日の光に照らされたフォルテナはとても美しい。
クロードもまたその様子に目尻を下げていた。
デレデレのドロドロだった。

「クロード様、どうぞ。これはシロツメクサという野草なの」
フォルテナはクロードにシロツメクサのブーケを渡す。
「え?お、俺に?」
「そうです。あなたのために摘んだの。私の気持ちです」
クロードはフォルテナの様子にうっとりしながらブーケを受け取る。「ありがとうフォルテナ殿……」
「シロツメクサの花言葉を調べてみてください」
フォルテナは頰を赤く染めると少し俯き気味に言った。



「うぐぐぐぐ……」クロードは夕食前書庫でうめき声を上げた。
シロツメクサの項目に書かれた花言葉が『幸運』『約束』『私のものになって』だったからだ。
特にこの『私のものになって』がクロード的に最高だった……

クロードはフォルテナに全てを握られて言いなりになる様を思い浮かべるとすっかり固くなった男性器がぶるりと震えるのを感じた。開放された時……すごい快感が待っているに違いないぞ……

後一日だ……
クロードは部屋に屋敷で一番上等な花瓶に活けたシロツメクサを思い浮かべると「約束……約束……」と呟き書庫の扉を開けた。


「クロード様」
寝室で先にベッドに入っていたであろうフォルテナがクロードの入室に起き上がり声を上げた。
クロードはデレデレと目尻を下げるとフォルテナの横に座る。
「フォルテナ殿……執務が終わらず……先に寝ててくれ」
クロードは妻の頭を撫でながらそう言った。

「……寂しくございます」

フォルテナが少し口先を尖らせる。
クロードはその先に吸い付きぐちゃぐちゃにしたい気持ちを押し殺して「できるだけ早く終わらせるから……」とフォルテナを抱き寄せた。







「申し訳ない。待たせました」

クロードは執務室にいるメイソンとリリーに軽く謝罪をする。
二人はとんでもない、と言いクロードに促されて着席した。

「リリー、話したいことがあるか」
クロードは話す機会が欲しいと申し出た妻の専属メイドリリーを見た。
リリーは深々とお辞儀をして「はい、本日は旦那様にお願いがございましてお時間をいただきました」と静かな声で言った。
「どうした?何かあったか?なんでも言ってみろ。お前は妻のために良く働いてくれている」クロードはニッコリ笑うとリリーが恐縮してしまわないように柔らかい口調を心がけた。
リリーは顔を上げてクロードをじっと見つめた後、目を伏せて「奥様……いえ、お嬢様のことでお伝えしたいことがございます」と小さな声で言った。




フォルテナの父はフォルテナがまだ乳児の頃に流行り病で亡くなった。風邪のような症状がドンドン重篤化して呼吸が止まる。
フォルテナの父は死に際に息も絶え絶えな様子で母の手を握り「フォルテナ……」とだけ呟いて息を引き取った。

母はそれに大層ショックを受けたのだ。

父の葬儀が終わり暫く経ってもフォルテナの母はフォルテナの育児を再開させようとはせず、フォルテナの専属メイドであったリリーに四六時中任せきりだった。

「奥様は……お嬢様の事を大切に想っているはずですよ?今は心が閉じていますが、きっとその扉が開けば奥様は一番にお嬢様の下に駆けつけるはずでございます」リリーはまだ小さくて言葉も話せないフォルテナに一生懸命そう語りかけた。

フォルテナは手のかからない赤子だった。
大人しくおっとりとしていて「うちの娘とは大違いだわ」とリリーはフォルテナがすやすやと寝息を立てる様を眺めた。

リリーの娘は疳が強くて一日中泣いてばかりいたので夜も寝ているのか寝ていないのかわからず疲れ切っていたものだ。とリリーは懐かしくなった。

リリーとて母乳はあげられない。
授乳のときだけはフォルテナの母のところに行って乳をもらう。

その時もフォルテナの母は終始遠くを眺めていて、一度もフォルテナを見ることはない。

リリーはそんなフォルテナの母の乳をフォルテナに咥えさせると落ちないように手で支えた。
そして女の身体は不思議なものだ。と思う。

母性が消えて何もわからなくなったとしても身体は乳を作るのだと。
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