38 / 43
37
しおりを挟む
「クロード様ご存じですか?このお花の葉っぱには三つ葉のものと、四葉のものがあるんですよ?」
「……なるほど」
フォルテナを膝の上に乗せてクロードは自分の周りにある野草を眺めた。ただ小さな葉っぱがたくさんあるようにしかない野草たちにはどうやら葉の枚数が決まっているらしい。
「私……あまり部屋の外に出ることを許されていなかったのですが」
「……?そうなのか……」クロードはフォルテナがそう言うのを少し不思議に思った。屋敷の外に出ることを制限されるならまだしも……なぜ部屋から出ることを許されていなかったのか……?
「たまにリリーと一緒に庭へ行くことは許可されていたのでその時にうちの敷地内にある野原まで歩いていくことになったのです。うちもここのように庭の先にまだ整地されていない野原があって……」フォルテナはシロツメクサ摘むと小さなブーケを作り、クロードの膝から立ち上がって地面を眺めている。
クロードはその背に「何か探してる?」と尋ねた。
「はい、リリーが教えてくれたの……」
フォルテナはそこで言葉を切ると何かを摘んでブーケに加えクロードの方を向いた。
秋の日の光に照らされたフォルテナはとても美しい。
クロードもまたその様子に目尻を下げていた。
デレデレのドロドロだった。
「クロード様、どうぞ。これはシロツメクサという野草なの」
フォルテナはクロードにシロツメクサのブーケを渡す。
「え?お、俺に?」
「そうです。あなたのために摘んだの。私の気持ちです」
クロードはフォルテナの様子にうっとりしながらブーケを受け取る。「ありがとうフォルテナ殿……」
「シロツメクサの花言葉を調べてみてください」
フォルテナは頰を赤く染めると少し俯き気味に言った。
「うぐぐぐぐ……」クロードは夕食前書庫でうめき声を上げた。
シロツメクサの項目に書かれた花言葉が『幸運』『約束』『私のものになって』だったからだ。
特にこの『私のものになって』がクロード的に最高だった……
クロードはフォルテナに全てを握られて言いなりになる様を思い浮かべるとすっかり固くなった男性器がぶるりと震えるのを感じた。開放された時……すごい快感が待っているに違いないぞ……
後一日だ……
クロードは部屋に屋敷で一番上等な花瓶に活けたシロツメクサを思い浮かべると「約束……約束……」と呟き書庫の扉を開けた。
「クロード様」
寝室で先にベッドに入っていたであろうフォルテナがクロードの入室に起き上がり声を上げた。
クロードはデレデレと目尻を下げるとフォルテナの横に座る。
「フォルテナ殿……執務が終わらず……先に寝ててくれ」
クロードは妻の頭を撫でながらそう言った。
「……寂しくございます」
フォルテナが少し口先を尖らせる。
クロードはその先に吸い付きぐちゃぐちゃにしたい気持ちを押し殺して「できるだけ早く終わらせるから……」とフォルテナを抱き寄せた。
「申し訳ない。待たせました」
クロードは執務室にいるメイソンとリリーに軽く謝罪をする。
二人はとんでもない、と言いクロードに促されて着席した。
「リリー、話したいことがあるか」
クロードは話す機会が欲しいと申し出た妻の専属メイドリリーを見た。
リリーは深々とお辞儀をして「はい、本日は旦那様にお願いがございましてお時間をいただきました」と静かな声で言った。
「どうした?何かあったか?なんでも言ってみろ。お前は妻のために良く働いてくれている」クロードはニッコリ笑うとリリーが恐縮してしまわないように柔らかい口調を心がけた。
リリーは顔を上げてクロードをじっと見つめた後、目を伏せて「奥様……いえ、お嬢様のことでお伝えしたいことがございます」と小さな声で言った。
フォルテナの父はフォルテナがまだ乳児の頃に流行り病で亡くなった。風邪のような症状がドンドン重篤化して呼吸が止まる。
フォルテナの父は死に際に息も絶え絶えな様子で母の手を握り「フォルテナ……」とだけ呟いて息を引き取った。
母はそれに大層ショックを受けたのだ。
父の葬儀が終わり暫く経ってもフォルテナの母はフォルテナの育児を再開させようとはせず、フォルテナの専属メイドであったリリーに四六時中任せきりだった。
「奥様は……お嬢様の事を大切に想っているはずですよ?今は心が閉じていますが、きっとその扉が開けば奥様は一番にお嬢様の下に駆けつけるはずでございます」リリーはまだ小さくて言葉も話せないフォルテナに一生懸命そう語りかけた。
フォルテナは手のかからない赤子だった。
大人しくおっとりとしていて「うちの娘とは大違いだわ」とリリーはフォルテナがすやすやと寝息を立てる様を眺めた。
リリーの娘は疳が強くて一日中泣いてばかりいたので夜も寝ているのか寝ていないのかわからず疲れ切っていたものだ。とリリーは懐かしくなった。
リリーとて母乳はあげられない。
授乳のときだけはフォルテナの母のところに行って乳をもらう。
その時もフォルテナの母は終始遠くを眺めていて、一度もフォルテナを見ることはない。
リリーはそんなフォルテナの母の乳をフォルテナに咥えさせると落ちないように手で支えた。
そして女の身体は不思議なものだ。と思う。
母性が消えて何もわからなくなったとしても身体は乳を作るのだと。
「……なるほど」
フォルテナを膝の上に乗せてクロードは自分の周りにある野草を眺めた。ただ小さな葉っぱがたくさんあるようにしかない野草たちにはどうやら葉の枚数が決まっているらしい。
「私……あまり部屋の外に出ることを許されていなかったのですが」
「……?そうなのか……」クロードはフォルテナがそう言うのを少し不思議に思った。屋敷の外に出ることを制限されるならまだしも……なぜ部屋から出ることを許されていなかったのか……?
「たまにリリーと一緒に庭へ行くことは許可されていたのでその時にうちの敷地内にある野原まで歩いていくことになったのです。うちもここのように庭の先にまだ整地されていない野原があって……」フォルテナはシロツメクサ摘むと小さなブーケを作り、クロードの膝から立ち上がって地面を眺めている。
クロードはその背に「何か探してる?」と尋ねた。
「はい、リリーが教えてくれたの……」
フォルテナはそこで言葉を切ると何かを摘んでブーケに加えクロードの方を向いた。
秋の日の光に照らされたフォルテナはとても美しい。
クロードもまたその様子に目尻を下げていた。
デレデレのドロドロだった。
「クロード様、どうぞ。これはシロツメクサという野草なの」
フォルテナはクロードにシロツメクサのブーケを渡す。
「え?お、俺に?」
「そうです。あなたのために摘んだの。私の気持ちです」
クロードはフォルテナの様子にうっとりしながらブーケを受け取る。「ありがとうフォルテナ殿……」
「シロツメクサの花言葉を調べてみてください」
フォルテナは頰を赤く染めると少し俯き気味に言った。
「うぐぐぐぐ……」クロードは夕食前書庫でうめき声を上げた。
シロツメクサの項目に書かれた花言葉が『幸運』『約束』『私のものになって』だったからだ。
特にこの『私のものになって』がクロード的に最高だった……
クロードはフォルテナに全てを握られて言いなりになる様を思い浮かべるとすっかり固くなった男性器がぶるりと震えるのを感じた。開放された時……すごい快感が待っているに違いないぞ……
後一日だ……
クロードは部屋に屋敷で一番上等な花瓶に活けたシロツメクサを思い浮かべると「約束……約束……」と呟き書庫の扉を開けた。
「クロード様」
寝室で先にベッドに入っていたであろうフォルテナがクロードの入室に起き上がり声を上げた。
クロードはデレデレと目尻を下げるとフォルテナの横に座る。
「フォルテナ殿……執務が終わらず……先に寝ててくれ」
クロードは妻の頭を撫でながらそう言った。
「……寂しくございます」
フォルテナが少し口先を尖らせる。
クロードはその先に吸い付きぐちゃぐちゃにしたい気持ちを押し殺して「できるだけ早く終わらせるから……」とフォルテナを抱き寄せた。
「申し訳ない。待たせました」
クロードは執務室にいるメイソンとリリーに軽く謝罪をする。
二人はとんでもない、と言いクロードに促されて着席した。
「リリー、話したいことがあるか」
クロードは話す機会が欲しいと申し出た妻の専属メイドリリーを見た。
リリーは深々とお辞儀をして「はい、本日は旦那様にお願いがございましてお時間をいただきました」と静かな声で言った。
「どうした?何かあったか?なんでも言ってみろ。お前は妻のために良く働いてくれている」クロードはニッコリ笑うとリリーが恐縮してしまわないように柔らかい口調を心がけた。
リリーは顔を上げてクロードをじっと見つめた後、目を伏せて「奥様……いえ、お嬢様のことでお伝えしたいことがございます」と小さな声で言った。
フォルテナの父はフォルテナがまだ乳児の頃に流行り病で亡くなった。風邪のような症状がドンドン重篤化して呼吸が止まる。
フォルテナの父は死に際に息も絶え絶えな様子で母の手を握り「フォルテナ……」とだけ呟いて息を引き取った。
母はそれに大層ショックを受けたのだ。
父の葬儀が終わり暫く経ってもフォルテナの母はフォルテナの育児を再開させようとはせず、フォルテナの専属メイドであったリリーに四六時中任せきりだった。
「奥様は……お嬢様の事を大切に想っているはずですよ?今は心が閉じていますが、きっとその扉が開けば奥様は一番にお嬢様の下に駆けつけるはずでございます」リリーはまだ小さくて言葉も話せないフォルテナに一生懸命そう語りかけた。
フォルテナは手のかからない赤子だった。
大人しくおっとりとしていて「うちの娘とは大違いだわ」とリリーはフォルテナがすやすやと寝息を立てる様を眺めた。
リリーの娘は疳が強くて一日中泣いてばかりいたので夜も寝ているのか寝ていないのかわからず疲れ切っていたものだ。とリリーは懐かしくなった。
リリーとて母乳はあげられない。
授乳のときだけはフォルテナの母のところに行って乳をもらう。
その時もフォルテナの母は終始遠くを眺めていて、一度もフォルテナを見ることはない。
リリーはそんなフォルテナの母の乳をフォルテナに咥えさせると落ちないように手で支えた。
そして女の身体は不思議なものだ。と思う。
母性が消えて何もわからなくなったとしても身体は乳を作るのだと。
85
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
婚約者の番
ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。
大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。
「彼を譲ってくれない?」
とうとう彼の番が現れてしまった。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる