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しおりを挟む――――オリビア様!――――
彼女の顔は見るからに怒りに満ち溢れていて、ヴェルナーは震え上がる。そして、彼もこの呪いの恐ろしさを目の当たりにした。
(聖食をしないと……オリビア様は小さくなっていくのか!そう言えば初めて会った時……彼女は何歳だったんだ?)
顔から剥がれ落ちそうな人格を押さえつけながらヴェルナーは思う。
「遅いです」
オリビアはリベルナの手前……静かにそう言ったけれど、ヴェルナーにはその怒りが充分伝わっている。
(ヴェルナー!あんた何を考えてるの!?)
目がそう訴えかけてくる……
ヴェルナーはとんだ誤解に眉を下げる。
こちらも会えずに困っていたのだ!
「待っていました。ずっと」
オリビアは怒りを抑えながらゆっくりとこちらに歩み寄り「すみません、ちょっとここで待っていて貰えませんか?この人とお話があって……」とリベルナの方を見て丁寧な口調で言った。
「てめえ!こら!」
「す、すみません!オリビア様!落ち着いてください……!」
怒り狂ったオリビアは剥がれてきたヴェルナーの人格を引きちぎり口に入れながら彼を蹴っている。
ヴェルナーは「俺もお会いしたかったのですが……なんだか会えなくて……!」とオリビアに怒りをぶつけられながら言い訳をした。ヴェルナーだってわざと会わなかったわけではないのだ。
「ち……わかってるわ。私だって何度もあんたに会いに行ったのに……!まるで邪魔されてるみたいだった。誰だ……?国に気付かれた?」オリビアはガツガツのヴェルナーを喰らいながら訝しげに眉を潜める。
「国……?」
「……なんでもない」
オリビアは少し気まずそうにそう言うと、無言でヴェルナーを食べた。
「……全然元に戻らないわ」
ヴェルナーを完食してもなお、オリビアは子どものままだ。強いて言うならば4歳から5歳程度に成長したかもしれない。
ヴェルナーは愕然とした。
そしてオリビアもその状況に絶望しているのか「今まで空いた時間が長すぎたのかもしれない……会ったばかりの時のように頻繁に摂取しなければならないのかも」と彼女にしては弱々しい声で言った。
こうして二人は一緒に暮らさねばならなくなる。
ヴェルナーはそうしている端から人格が剥がれてきていたし、オリビアは小さいままだ。
お互いのために頻繁に聖食を行う必要があった。
そんなどちらも乗り気ではない同居を経て、ヴェルナーは手に入れたこともあった。
(妻は子どもにとても優しい……)
ヴェルナーは不謹慎にも、小さいオリビアに接するリベルナを見て癒やされていた。(俺達の子どもができたら……)そんなことを想像するとドンドン欲が貯まっていき、いつもより更にリベルナと夜を過ごしたい欲も増える。
「うぅ……ん……旦那様……」
少し遠慮がちに声を漏らすリベルナの陰部に舌を這わせると、トロ……っと愛液が溢れ出しヴェルナーをより興奮させた。
もうぷっくりと顔を覗かせている陰核を剥き出しにするとヴェルナーはそこに舌をつけ、ゆらゆら……と揺する。
リベルナは腰をくねらせて「んん……」とため息のような吐息を吐く。
ヴェルナーはそんなかわいい彼女の姿が堪らなく好きだった。だからそれは仕方がないことだったのかもしれない。
(なぜこんなに早く達してしまうのか……)
ヴェルナーは悩み悲しんでいた。
(なまじ女性経験がないばかりに……)
彼はとんと女性に縁のない人生を送っていた。
若い頃は矯正施設にいたし、出てからは鍛錬や当時名も知らぬリベルナに夢中だった。
職場には女性もいたけれど、リベルナより素敵な女性を見出だすことは出来ず……気が付けば経験もないまま今に至る。
(なんと情けない……)
ヴェルナーが悩んでいた時、ふと思い出す。
(明日は光祭か)と。
そういえば以前、リベルナを誘おうと思っていたイベントだ。前は色々重なり伝えそこねてしまったが……
「なぁ、明日光の祭典がある」
「光の……左様でございますか」ヴェルナーはリベルナの手を握りながら言った。くったりとベッドに沈むリベルナは目をトロンとさせている。
光祭に伝わる伝説を話すと彼女は目をキラキラさせたので、ヴェルナーは「じゃあ行くぞ」とかなり勇気を出して彼女を誘う。
明日愛の告白をしますよ、と言っているようなものだ……とヴェルナーは思った。耳が熱くなるのを感じる。
「はい、ぜひ」リベルナはヴェルナーが不安を感じているのも気付かない位にあっさりとそれを許諾してくれた。
ヴェルナーは胸が苦しくなるほど嬉しい。
(……つ、妻も俺のことを……)
「そ、そうか!では明日正午に出発するからな?」ヴェルナーはギュッとリベルナの手を握る。
「はい!かしこまりました!」
(そんな元気いっぱいに!ありがとう……ありがとう妻!)ヴェルナーは思わず彼女の唇に自身の唇を重ねそうになり、彼女の笑顔にハッとする。(いかんいかん……まだ想いを告げてないぞ……)
ところがところが…………
「なんだと?妻が外出を?」
「はい、朝食後お出かけになりましたけど……」
「え?」
エルダの言葉に……ヴェルナーは愕然とした。
しかし、妻の後を追い……たどり着いた先で自分の前世を知るとは…………ヴェルナーは前世が悪い。とそう思った。
全ては前世のせいなのだ、と。
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