【R18】9番目の捨て駒姫

mokumoku

文字の大きさ
上 下
24 / 62

24

しおりを挟む
「王妃様お待たせいたしましたー!」グレースがランタンを片手に靴を鳴らしてこちらにやってきた。
「あ、グレース」
「は!お、王様!失礼いたしました」グレースは王に気付いて頭を下げている。手ぶらなようなので新しい書物はなさそうだ。
「ああ…ご苦労だな。なんだ?王妃は何か本を探しているか?」王様の言葉を受けてグレースがどう答えていいのか悩んだのかこちらを見たので「もう解決いたしましたので…王様のお陰でございます。ありがとうございます」と微笑んだ。

嘘じゃない。
王のお陰で私が処刑されても使用人に危害が加わらないことがわかったので私は心が落ち着いた。
「そ、そうか!よかった!な、なあ今日の夕めしなんだがな?」
「はい」
「なにか…何か食いたいものはあるか?お前の国の料理だとか…あの、ほら恋しくないのか?お前は何か好きなものはないのか?なんでも言え。お前は何か希望とか要望はないのか?」恋しいもの…男性器かしら…

「ふふふ…私は羊腸の肉詰めが欲しいです」
「羊腸の肉詰めか。わかった!料理長に伝えておこう」
「あ、あの…でも私何もお礼はできません…お礼が必要なら
いりません。実はあの…私あまり食に興味がなくて…あちら特有の食べ物は本でしか見たことがないのです」
実は羊腸の肉詰めも食べたことはない。本で見てから先端のない男性器みたい!と興奮したのを覚えているわ…どんな味がするのかしら?また詮索されているのかと興味がないと表現したけれど…私って本当にあまり予算が貰えてなかったから食事も質素だったのよね。しつこいようだけど、母親の実家から援助も期待できなかったし…あまり嘘をつきすぎては良くないわ。

「すいません…実は腸詰めも食べたことはなくて、美味しそうだな。と思っただけなんです。だからお礼が必要なら何もお返しできないので…」私には男性を歓ばせる手技しかないし…でも王様にとってそれは嫌がらせになってしまうものね。

じゃあ私なんかには何もできないわ。
どこかを切り取られるのも痛そうで嫌だし…

「あ、あの…別に特に食べたい物とか要望はなくて…今のままで充分ですから」しいて言えば私専用の男娼がほしいけど…それはこの前怒られてしまったし…
男娼以外欲しい物なんかないかな。

あーあ…男娼が欲しい…
男性器をぶち込まれたいわ!
どんな気持ち良さなのかしら…
自分で陰核を揺するだけでもあんなに気持ちがいいのですもの!きっと挿入はかなり気持ちがいいに違いないわ!

「……礼など…いらん、わかった。そうだな…」王様は何やら考える素振りを見せるとグレースに何やら指示を出している。
彼女は「かしこまりました」と一言いうとまた本棚の影へと消えた。
「あ…グレース…」
「心配いらん、本を持ってきてもらうだけだ」王様はそう静かに言うと「俺も王妃がいた国には行ったことがない。共に戦った傭兵の中にはお前の国から来た者もいたが…まあ、当時はこんなことになるとは思ってもいなかったからな。そんな話はしないし…俺も軽い知識しかない」腕を組み椅子に座り直している。
ギシリと王様の重みで木が軋む音がした。

「……はい」
私は会話の意図がよく分からず曖昧に返事をした。
グレースが本を一冊持って戻ってくる。
「ありがとう」王様はそう言うとグレースから本を受け取り、彼女に着席の指示をした。私の隣の椅子をひいて腰を下ろす。
その大きくて分厚い本は私の元いた国の言語で書かれているようだ。
テーブルの中央にそれを置くと王様は表紙を捲る。
「俺は少ししかこの文字が読めん。王妃、代わりに読んでくれないか?」「は、はい…」「共に学ぼうではないか、お前の国について…俺も興味があるんだ」王様はそう言うと目次を指さした。

「そのページは主に作物や、料理、家畜のことが書いてありますね」「ほう、ならそこを読むか」王様はのんびりとそう言いながら身を乗り出した。
「ふふ…ちょうどお話していましたものね」私がそう言うとグレースも控えめながら興味深そうな顔をしているのが見えた。私は少し体を横にずらして場所を譲る。

「ここには色んな国の本があるんですか?」
「ああ、たくさんある」
「王様は何カ国語理解してらっしゃるんですか?」先ほどうちの言葉は少ししか…とおっしゃっていたわ。
少しならわかるという意味でもある。元々は王族じゃないのよね…?すごいわ。
「……どうかな、忘れた。まあ、この宮殿には色んな国の出身者がいるからな。なんとかなるだろ」
「ふふ…?そうですか」
「大体のことはなんとかなるもんだ」
王様は私の読むペースに合わせてゆっくりページを捲ってくれる。「あ、これか?腸詰めは…」王様が挿絵を指さして顔を本に寄せた。

「そうですね。これだと思います。美味しそう…」口いっぱいに頬張りたいわ…!ああ!肉の棒!最高!!
「ふーん…焼いたり茹でたりして食うのか。うちにも豚の腸詰めならある。そっちは羊肉が主流だからな、腸詰めも羊の腸を使うのか」私はある一文を指さして「豚の腸よりもパリパリと歯ごたえがと書いてありますね」と言いつついつも朝食に出る腸詰めを思い浮かべる。


なんだか挿絵なら人肌色だけど…焼いたらあのような感じになるのかもしれない…男性器感が…


「私やっぱりいりません」
「な!なんでだ!どうした?おい!礼などはいらんから!遠慮するな!王妃は食べたいと申していたではないか!おい、グレース!料理長に伝えて来い!今日の夕めしには羊の腸詰めを出せと」「あ…は、はい!」グレースが慌てて書庫を出て行った。

「あ、グレース…」
「どうした?急に…国を思い出したか?」王様は私の顔を覗き込む。その顔が私を心配しているように見えて私は頭を振った。

心配してる…わけはないわ。
恐らくランタンの光の加減だ。
私は結婚初日を思い出し腕を擦った。…もし、王様があの時の気持ちのままならば…この会話も、何か意図があるはず…
なぜ私の国の書籍をピンポイントで指示して持ってこさせることができたのかしら…

私の知識が正しければ…王様がこの地位に就いたのは私と婚姻する数ヶ月前だったはず…元々私たちの国からなぜ妻を娶ったのかしら…
私を生かしておく利点は…?一体…
「いえ、違います。なんだか思っていた腸詰めと違って…ふふ。もっと太いのがよかったのです。こちらの方が太いかも」
「そ、そうか太いのがよかったのか」

「はい」私はなんだか目が霞んできたような心地がして目を擦る。「…疲れたか?ここは暗いからな。少し外へ出てなんか飲むか」王様はそうポツリと言うとランタンを手に立ち上がった。
珍しく王様は剣を挿しておらず、私は安堵のため息をつく。

「足元に気をつけろよ」
「はい」

私が立ち上がり椅子をしまうと王様が笑い出しました。私は盛大に肩をビクつかせる。「は…はははははははは!はははははははは!いや、なんだ!あ、危ないからな!はははははははははははははははは!暗いし!危ないから!ははははははは…………………………手を繋ぐか」
「え?」なぜ?寝室以外でも?健康法?
「え?いや、その、あの…」
「……」
「……」
「な、な、なーんてな!!!はははははははは!冗談だ!冗談!ほら!先に行け!俺が照らしてやるから!はははははははは!!はははははははは!まさかな!手を繋ぐなんてなぁ?そんな必要はないよな!はははははははは!だってなぁ?前を行けばいいだけだもんなあ?そこでわざわざ手を繋ぐか?なんて下心がなあ?変だよな!はははははははははははははははは!まさかそんなことを本気で言うはずがないだろ!おい!こら!はははははははははははははははは!」
「ふ…ふふふ…そ、そうですわよね」
「はははははははははははははははは!そうに決まってるだろー!!何を考えているんだ!はははははははは!!」
なんだか私が言い出したような雰囲気になっていませんか?違います!違います!!私は手なんて繋ぎたくないわ。怖いもの!


私はどうしたら良いかわからずとにかくただただ地面を見つめた。……なんだかよく見るとどこの床板にもたくさんの模様が描かれているわ。見えない所もこだわっているなんて…流石王宮の書庫ね。




「わーパリパリしていて美味しいですね」夕飯には先ほど伝えた通りソーセージが食卓に上がった。こんがり焼けた表面からは美味しそうな香りが立ち上がっていてそこにそっとナイフを入れるとパリパリッと小気味良い音がする。
「ふむ…うまいな。王妃の言うようにちと細いが…」王様もソーセージを口にするとそうおっしゃった。確かに…細いわ。
でも羊は豚より腸が長い分細そうだものね。草食だもの…身体も小さいような気がするし…

「でも初めては細めがいいかもしれませんね」
「……?そうか?……??そうだな!」
そうですよ!最初からあまり太いと痛いかもしれないではありませんか!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

詩集「支離滅裂」

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:398pt お気に入り:2

王妃は離婚の道を選ぶ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,203pt お気に入り:29

異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:547pt お気に入り:945

この悲しみも。……きっといつかは消える

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:30,076pt お気に入り:903

私の婚約者が完璧過ぎて私にばかり批判が来る件について

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,966pt お気に入り:5,607

幼馴染みと元サヤ婚約破棄

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:87

婚約破棄を告げられた伯爵令嬢は元婚約者に復讐を誓う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:85

処理中です...