【R18】9番目の捨て駒姫

mokumoku

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「……好いた男とでございますか?」
「く…そ、そうだ…」
「私の?誰ですか?」


私は首を傾げる。
私が好いた男性…?

「…もう隠さんでもよい…ティシュア…お前はセドリックを好いておる」
「え?」
「もういいのだ。………お前は寝言でセドリックセドリックと…おまけに細身で容姿端麗の俳優が素敵だと言うし…前は『セドリック大好き』と寝言を言っておったぞ!ぐぐぐ…………くそ…落ち着くのだ。……俺もツヴァイもよく人間の気持ちがわからん…すまんかったな。二人を引き裂いたのではないか?俺たち兄妹が…」

王様はそう言うと私を抱く手を緩めた。


「ツヴァイも大層反省しておってな…もう王宮を出ていくと言っておるのだ」「え!?」それまで黙っていたセドリックが大きな声を出した。
私はそんなに動揺しているセドリックを見たことがなかったので驚きそちらを向く。「セドリックにも悪いことをした。とツヴァイも気にしていた。子にとっては父親なのは変わらんが…そもそもアイツもセドリックから愛までもらおうとは「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!ツヴァイは?ツヴァイは!?ツヴァイは今どこに?」セドリックは慌てたように質問を繰り返し王様に迫っている。
「ああ、まだ今は王宮の離れにいるがツヴァイがお前と話して別居の手続きが済んだら「済まんくていい!ああ!ツヴァイ!ちょっと待て俺はツヴァイがいないと…」セドリックは頭を掻きむしりながら叫ぶと扉を出て行った。いつもピシッとしているセドリックが頭をモジャモジャにして出て行った…ふふふ…
「おい!待て!ティシュアを置いていくな!」
王様がセドリックの背にそう声を掛けたので「いえ、いいのです。任務より奥様を大事にするのが一番でございます」と私は王様の腕に触れた。

「任務だと?…お前は辛くないのか?」
「…?セドリックがいなくてですか?」
「そうだ。だってお前は」
「私…セドリックがいないより、アインス様がいないことのほうが辛いです。私…今日はこちらに着いてから全然ワクワクしないし…楽しくありませんでした」
私は先ほどの気持ちを思い出して鼻がツンとなる。
「前までは…私の家族はセドリックだけでした。………でも…今はもうアインス様がいないと胸が苦しい」
私は胸の前で手をギュッと握るとアインス様を見上げた。


「ティシュア…?」
「アインス様は私がいなくても平気ですか?私は恋をしたことがないのでよくわかりませんが…アインス様には特別な感情を抱いている気がします…」

今回セドリックと一緒に劇場に来て…セドリックには悪いけど全然ワクワクはしなかった…
一緒にお出掛けする喜びも…

「アインス様といるとドキドキします。セドリックには…しない。セドリックは好きだけど…私たちは恋じゃないです」




ブーとけたたましい機械音がした。
恐らく劇が始まるのだろう。



「アインス様、劇が始まりますね」
「あ、ああ…」
ポツポツと電気が消えていく

「あなたは私がいなくても平気ですか?」先ほどまでそこにいた王様はすっかり闇に飲み込まれてしまった。
彼には私が見えているのだろうか、私には見えていないけれど




「………平気なわけがないだろう…!!」王様はそう言うと私を強く抱いた。暗闇の中、私はそれに身を委ねる。
そこには私の体重程度ではびくともしない頼もしい夫が立っている。「私たちは夫婦なのに…なぜなんでも勝手に決めてしまうのですか?アインス様も…私も…」私は王様の背中に手を回すと胸に頬を寄せた。
「………人間は我慢するもんだ。人間は相手の気持ちを考える…一番大事なものの幸せを」「じゃあ…私の幸せはアインス様のお側にいることでございます」私がそう言うと王様は私の口に噛み付くようなキスをした。





役者が愛の歌を歌っている。
それを聞きながら私たちは舌を絡め合った。

私の膝は快感に震えているけれど王様が支えてくれた。
「気持ちがいいです…私…媚薬がなくてもいやらしい女でございます」
「何を言っている。お前は世界で一番いい女だ」
王様はそう言うとソファにドスンと座り私を膝に乗せた。
「羽のように軽い…乗っていないようだ。…それなのになぜこんなに重く…俺の心に入り込むのだ」
「アインス様」
「お前が望むのならば…もう俺は一生お前を手放さん。嫌だと言っても…愛し続けてやる」



アインス様は私をソファに押し倒すともう一度キスをした。
私たちはキスだけで溶け合うようにお互いを強く抱き寄せた。




「とてもとても素敵なお話でした」私は王様に密着しながら彼を見上げた。彼もまた私の腰をガッチリと抱いている。
「そうか、護衛役がよかったか?」今日の演劇は護衛と姫の恋物語だ。王様ったら…私とセドリックの仲を勘違いしてらっしゃったから…
私はフルフルと頭を横に振ると「護衛の友人の…大きな男性の俳優が素敵でした」と耳打ちした。
「次は私…また獅子王のお話が観たいな」





「王様…恥ずかしい!」
「はははは…そ、そうか!そうだな!!」
王様が私を横に抱き上げると走って外へ飛び出そうとしたので私は笑いながらそれを阻止する。
「落ち着いてくださいまし」私は王様の唇をそっと指で突くと彼は顔を真っ赤に染めた。





「帰ったら風呂に入るだろ?そうしてお前が痛くなければ…あの、その…なんだ…その…」
「ふふ、もう痛くありません」王様は馬車に乗り込むと私を膝に乗せる。「治ったか!よかったよかった…あ…し、しかし…俺がするとまた痛くなるのではないか?」王様は思いっきり眉を下げている。「お前が痛くなるのはちょっとなあ…」
私は王様の耳に口を寄せると「じゃあ予防のために『治療』してから閨ごとをするのはいかがですか?」と囁いた。







「わあ…」
私が入浴を終えて寝室に行くとベッドには薔薇の花びらが敷き詰められていた。「いやぁ…はははは…は、初めてはな…あ、あんな形になってしまったが…ほ、本当は…もっとちゃんと…したかったんだ。ほら、女はこういうのが好きだろ?ははははは」
「とてもキレイ!いい香りがするし…嬉しいです!」
私は王様の方を向くと彼は顔を真っ赤にした。

「す、すまんな。本当に…あんなに雑にするつもりは…じょ…女のああいうのは特別だろ?」
「…いいえ、それは男性も同じでございます」
私…勝手に王様の男性器を私に挿れてしまった…了承も得ず…

「…?許してくれるのか?」
「許すもなにも…」王様は私の隣に立つとそっと手を握った。
いつもの灯りの代わりにろうそくが灯されていてその炎が時折ゆらゆら揺れる。

私はその手をキュッと握り返すと「夫婦ではありませんか」と彼を見上げた。







王様は腰を屈めると私の口にキスをした。
唇を舌でなぞられたので口を開ける。


にゅるりと私のものではない粘膜が入り込んでくる。私はその粘膜を静かに受け入れる。なんだかたどたどしい舌の動きでそれでもとても優しくて私の舌をとても大切そうに触れた。
指輪をしている時より王様の熱が伝わってくる感じがして思わず身を捩る。

王様が口を離すと「俺は…俺がお前をひと目見たときに」と小さな声で言い私を抱え上げるとベッドに腰を掛ける。
ふわりと薔薇の香りが広がった。

「忘れられなくなった。寝ても覚めてもずっとお前が欲しくて堪らなかった」「…?初めて会った時でございますか?」

「違う…見た時だ」


王様はそう呟くと私をベッドに横たえて覆いかぶさり首筋にキスをした。「俺はずっとお前が欲しかった。他の女など望んでいない。そのようなふざけた奴は処罰せねばならんな」「え?」「俺と婚姻を結んでくれてありがとう…俺の妻になってくれて…」王様はそう言うと私の夜着のボタンを1つずつ外した。
「俺は…こんなにか、か…かわいらしい妻と…夫婦になれるなど…思ってもいなくて…俺は…はははは、俺はほら、デカイから…」王様は身体を小さくするとボソボソと話す。

「……ほら、あまりデカイと釣り合わないではないか…世間一般では容姿端麗な…ほら、スリムで背の高い男が人気だよな。俺は背ばかり高くて…ははははははは……恐ろしいだろう?」王様は背を丸めるとそう呟いた。

「…私…自分が小さいので…」
「あ、ああ…そうだな。お前は小さい……そこもかわいらしいのだ」王様はボタンを外し切ると私の腰に手の平を添わせた。
「え!?そ、そんな…あの…私もあまり自分の背が低いのが好きじゃなくて…あの…だから…私。多分…大きい人が好きなんです…きっと…わ、わからないけど…一人しか知らないので…あの…私…お、おおお王様は素敵です。私にとって…」
私は王様の頬に手を寄せた。
大きくてゴツゴツしてて…傷だらけだ。
顔にすらうっすらと傷がある。

「な、なんだと?」
「私…王様が大きいの…素敵なんです。だから悩まないでくださいまし…」王様も私の顔を両手で包む。大きな手だ。
「なんだこの顔の小ささは…俺の1/4程しかないではないか!」彼はそう大きな声を出すと私の唇に吸い付いた。
そんなには違わないと思います…

私はそう思いながら目を瞑った。








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