【R18】さよなら、婚約者様

mokumoku

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「ディオス様」
「訓練場には来るなと言った」
ハルヴァがディオスの為に飲み物を差し入れようと訓練場を訪れるとかなり仏頂面をしたディオスが同僚に呼び出されてやってきた。
彼は首から掛けたタオルで顔を拭うとハルヴァの顔を見ずにそっぽを向いている。
「す、すみません。近くに用事があったものですから…」
ハルヴァは(嫌われたものだ…)と内心ションボリした。

蛙化現象をご存知でしょうか…
今まで望んでいたものが手に入った瞬間キモくなるあれですよ…

婚約当初ハルヴァは父親から「先方が望んで」と言われていた。ハルヴァはそれがとても嬉しくて姿絵も見ずに婚約を了承したのだ。自分のことを必要としている人なら…どんな人でも受け入れよう。そう思っていたからだ。しかし、初対面の頃ハルヴァは彼の姿がこんなに素敵だとは思っていなくて頬を染めてしまった。

自分などを欲しがる男はかなり年上か、ちょっとどこかに欠陥があるに違いない、そう思っていたからだ。
それがどうだろう…正面に座る男性はハルヴァより少し年上程度の金色の短髪に凛々しい顔つきのとてもイケてるメンズだったのだ。そして更に経歴を尋ねると上等兵なのだ。彼は
(え?なんでこの方が私を…?)
ハルヴァは見覚えのない顔に若干首を傾げる。

「先方が望んで」ならハルヴァはどこかで会っている人ではないか、そう思ったのだけれど…
ハルヴァが顔を上げるとディオスは眉を寄せハルヴァの方を見ずに顔を背けたけれど、能天気なハルヴァはあまり気にしていなかった。(たまたま目を逸らしただけだよね)と。


それも全て今思うと(もしかして実際に会ったら冷めちゃったのかも)とハルヴァは思うのだ。
遠くから見たことはあって、近くで見たら意外と違ったのかもしれないし、もしくはハルヴァの動作や表情がキモかったのかも…と。



「なんだかそういう時ってさ…相手が気を使えば気を使うほど気持ち悪く感じて心が離れない?」
目の前でフルーツパフェを頬張る友人のサラがそう言った。
「た、確かに…」
ハルヴァは自分のパフェを食べるでもなくぐちゃぐちゃとかき混ぜると今までの自分の行動がいかに間違えであったか反省した。
ハルヴァはどうにかしてディオスの気持ちを取り戻したくて事あるごとに連絡を取り、会いに行き、自分の作ったお弁当だとかを渡していた。尽くせばまた自分を好ましいと思ってもらえるかもしれない、と。

「……確かにキモい人にそんなことされると気持ち悪くて堪らないかも…私、もうディオス様に連絡しない!ギャアアアああ!」

ハルヴァは息が苦しくなっていくような気がした…
恥ずかしくて穴を掘って生き埋めになりたくなった。


ハルヴァは大反省した。
今まで毎日のように送っていた手紙も、連絡も全て止めることにした。(迷惑だと思われていたのかもしれない)ハルヴァは顔を全力で真っ赤にすると部屋で悶えた。
「ああああああ…」
「落ち着いてハルヴァ!大丈夫よ…さあ、私のイケおじコレクションを見て落ち着いて!まずは職業別コレクションからね…」今日は泊まって行ってくれるというサラがハルヴァがションボリするのを見て分厚いフォトブックを渡してくれたので受け取る。
「ありがとうサラ」
「イケおじも悪くないもんよ…いや、最高なのよ!まずは1ページ目をご覧ください!」その日二人は蝋燭の火が消えるまでお喋りを、…サラおすすめの写真を見せられた。




「退役軍人のオジサマ素敵ぃ…」
「でしょ!?でしょ!この人たちはちょっと若いけどね」ハルヴァがすっかりサラの思惑通りイケおじの波に飲まれていった…そしてサラの若いの基準がよくわらなくなっていくのである。


ハルヴァとサラは職場が同じで、一般兵の看護をしている。
入ってきたばかりの新人やあまり出世しなかった兵士たちが怪我をするとここに送られてくる。まあ要は捨て駒がここに集まるのだ。
「包帯を変えますね」
ハルヴァは切り傷が膿んでぐちゃぐちゃになってしまった兵士の包帯を変える。傷口に包帯がくっついて痛々しい。
「いててて…」
「痛いですよね…でもお医者様がこの貼り付いた部分は取った方が治りがいい、と言うことなので…頑張っていきましょうね」ハルヴァは傷口を見つめると慎重にそこを剥がしていく…とあるところで勢いよく引っ張った。

「ぎゃー!」
兵士の悲鳴をBGMに、ビリリッと固まった化膿部分が剥がれて新しい皮膚が再生しているのが見えてハルヴァはにっこり笑った。
「もう少しでよくなりそうですね」と


午前中、サラとハルヴァは兵士たちの包帯を取り替えたり身周りの世話を終えて大量の包帯や汚れ物を入れたバケツを両手に洗い場へと向かう。




「おい」
「はい」少し横暴な呼び方ではあるが、患者の兵士かな?とハルヴァは笑いながら振り返った。するとそこにはディオスが立っていたのでハルヴァは目を丸くしてしまった。
相変わらず不機嫌そうな彼はハルヴァから目を逸らしながら「……久しぶりだな」と声を掛けてきた。
「え?ああ…そうですかね…久しぶりですね」
三日前に会いに行って嫌がられたような…もっと前だった?

「…………」
「…………」

ハルヴァはこのいつ終わるともわからない沈黙に…早く包帯を洗いたくてソワソワしてしまった。
「あ、あの…仕事中ですので…そろそろ…ディオス様はなにかここにご用事が?誰かお呼びしますか?看護長かお医者様でしょうか…」ハルヴァがそう言いながら顔を覗き込むようにするとディオスはそっぽを向いて「じ、自分で呼ぶからよい」と不機嫌そうに言った。
ハルヴァは(こう言うのがキモいのかも…)と反省しつつ、せめて去り際は爽やかにしよう、と「そうでしたか!それでは!」とその場を去った。
(さ、爽やかにできてた?なんかこうして悩んでいることもキモくない?)ハルヴァはもうキモくしないでおこうと努力すればするほど自己嫌悪に陥るキモキモモードに突入してしまったのだ。
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