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第8話 周囲の国も意外と焦っていたりする
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――アルトア王国 アルクセイ大陸 南の漁村
日の出と共にアルトアの朝は始まる。
最初に異変に気付いたのはアルトア島南にある漁村に暮らす漁師であった。
さて今日も大漁だといいなぁと、漁船で沖に出る準備をしていた時のことだ。
「ん?」
「んんん……?」
目視でもその大きさが分かるくらいに大きな陸地がそこには存在した。
昨日までそんなものはなかったのだから気づかない方がおかしい。
その漁師はすぐに村長の家に駆け込んだ。
村長が慌てて船着き場に現れた時には、辺りには人だかりができていた。
経験したこともない出来事に村人たちは混乱していたが、村長は何とかなだめることに成功する。
現実に目を背けて漁に出ようとしていた漁師たちを説得し家に帰らせると、村長はすぐに息子を近くの兵士詰所へ向かわせた。自身で出向いた方が良いのだろうが、万が一向こうから誰かが村へやってきた場合、対応せねばならない。王国の兵士が常駐している訳でもない小さな漁村でなのである。
何かあれば村人をまとめて導かなければならないと、村長は強く決意した。
―――
――
―
――聖ゼノ暦4215年1月2日 バーグ王国 バーグ城
実質的にユースティアに侵攻したバーグ王国では会議が紛糾していた。
もちろん、勘違いで無関係な国に戦争を仕掛けたとは誰も思っていない。
軍関係者のみならず、国王や王国高官たちも顔を揃えている。
「一体何がどうなっているのだッ!?」
バーグ王国大将軍が国王の前と言うことも忘れ、斥候部隊長に怒鳴り散らしている。もうずっと強い重圧を受け続けている斥候部隊長は、何度も説明したことをまた言わなきゃいかんのかと内心苛立っていた。国王は難しい顔をして腕組みしたまま動かないし、高官たちはほとんどの者が青い顔をしている。
「さ、先程も申し上げた通りです。アルトア侵攻軍とは一切の連絡が取れておりません」
「アルトアの兵力は多くても3万程度と聞いていたが?」
「従軍していた部下からの報告も上がってきていない状況です」
「となると何か? その程度の兵力で10万以上の我が軍が一方的にやられたとでも言うのか?」
「それに船の漕ぎ手も含めると15万だぞ? その全てと連絡できないのはおかしくないか?」
「(だから侵攻軍と本国の連絡自体がつかねぇって言ってんだろ)」
斥候部隊長が内心、そんな悪態をついても仕方のないことだろう。
報告済みなのだが、大将軍の頭からは既に抜け落ちているのだろうと彼はそっと溜め息をつく。
「そう言われましても戦闘を目撃した者もいなければ、戦闘の痕跡すら発見できておりません」
それどころか「侵攻軍はまだか?」との督促する魔力通信さえ来ていないのだが、既に繰り返し説明したことなのでこれ以上は言わないでいた。
「では我が軍はどこに消えた?」
「上陸軍だけでなく、上空支援の飛龍部隊も行方知れずとなると……」
「飛龍も無料ではないんだぞ……(勘弁してくれよ)」
一転して静かになる会議室
バーグ王国にとって飛龍は貴重な航空戦力である。
龍族の亜種とは言え、口から火炎弾を撃ち出して空中格闘戦ができるし、地上にばら撒いて爆撃することもできる。
「10万ですか……兵力の損失は痛いですなぁ……。特に飛龍の……」
国庫を管理している文官の呟きが広い部屋に響く。
いや今は予算の心配してる場合じゃねぇだろと、この場にいる多くの者が思ったが誰も何も言わない。
バーグ王国は東西に長いオースティン大陸の極東部に位置する国家の1つで、周辺国とは常に勢力争いをしている。戦争は日常であり、攻めるのも攻められるのも慣れてしまっている。
一応、バーグ王国を始め周辺国家は大陸東の大国であるタイカ大帝國に朝貢して地方の王として認めてもらっている。朝貢国家同士ではあるが、別に仲間と言う訳でもないので争いが絶えることはない。今回の件でバーグ王国が大損害を被ったとなれば、各国から攻め込まれてもおかしくない状況である。
「「「(我々は何と戦ったのだ?)」」」
再び静かになった室内で皆が思うことは同じであった。
その時、扉がノックされ軽装備の兵士が入室し、斥候部隊長に耳打ちする。
彼の疲れた表情に拍車をかけるとは余程の内容であるようだ。
「報告します。えぇ……アルトア王国の南に大きな島が見つかったと言うことです」
更にこめかみを押さえながら言葉を続けた。
「上陸しようと近づいた者がその島周辺に現れた巨大船に拿捕……捕縛されたようです」
「島? 新しく島が発見されたと? しかし連絡がつかないはずなのにどうやって報告が上がってきたのだ?」
「魔力通信が使えなかったので伝書鳩を使ったようです」
「「「(ああ……そう言うことね)」」」
この場にいる者たちの顔が曇る。
皆、何かを察したような表情をしている。
「はぁ……。とにかく引き続き情報収集しつつ防備を固めろ。戦いになるだろう」
今まで沈黙を貫いていたバーグ王国国王は沈痛な面持ちで命令を下した。
日の出と共にアルトアの朝は始まる。
最初に異変に気付いたのはアルトア島南にある漁村に暮らす漁師であった。
さて今日も大漁だといいなぁと、漁船で沖に出る準備をしていた時のことだ。
「ん?」
「んんん……?」
目視でもその大きさが分かるくらいに大きな陸地がそこには存在した。
昨日までそんなものはなかったのだから気づかない方がおかしい。
その漁師はすぐに村長の家に駆け込んだ。
村長が慌てて船着き場に現れた時には、辺りには人だかりができていた。
経験したこともない出来事に村人たちは混乱していたが、村長は何とかなだめることに成功する。
現実に目を背けて漁に出ようとしていた漁師たちを説得し家に帰らせると、村長はすぐに息子を近くの兵士詰所へ向かわせた。自身で出向いた方が良いのだろうが、万が一向こうから誰かが村へやってきた場合、対応せねばならない。王国の兵士が常駐している訳でもない小さな漁村でなのである。
何かあれば村人をまとめて導かなければならないと、村長は強く決意した。
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――聖ゼノ暦4215年1月2日 バーグ王国 バーグ城
実質的にユースティアに侵攻したバーグ王国では会議が紛糾していた。
もちろん、勘違いで無関係な国に戦争を仕掛けたとは誰も思っていない。
軍関係者のみならず、国王や王国高官たちも顔を揃えている。
「一体何がどうなっているのだッ!?」
バーグ王国大将軍が国王の前と言うことも忘れ、斥候部隊長に怒鳴り散らしている。もうずっと強い重圧を受け続けている斥候部隊長は、何度も説明したことをまた言わなきゃいかんのかと内心苛立っていた。国王は難しい顔をして腕組みしたまま動かないし、高官たちはほとんどの者が青い顔をしている。
「さ、先程も申し上げた通りです。アルトア侵攻軍とは一切の連絡が取れておりません」
「アルトアの兵力は多くても3万程度と聞いていたが?」
「従軍していた部下からの報告も上がってきていない状況です」
「となると何か? その程度の兵力で10万以上の我が軍が一方的にやられたとでも言うのか?」
「それに船の漕ぎ手も含めると15万だぞ? その全てと連絡できないのはおかしくないか?」
「(だから侵攻軍と本国の連絡自体がつかねぇって言ってんだろ)」
斥候部隊長が内心、そんな悪態をついても仕方のないことだろう。
報告済みなのだが、大将軍の頭からは既に抜け落ちているのだろうと彼はそっと溜め息をつく。
「そう言われましても戦闘を目撃した者もいなければ、戦闘の痕跡すら発見できておりません」
それどころか「侵攻軍はまだか?」との督促する魔力通信さえ来ていないのだが、既に繰り返し説明したことなのでこれ以上は言わないでいた。
「では我が軍はどこに消えた?」
「上陸軍だけでなく、上空支援の飛龍部隊も行方知れずとなると……」
「飛龍も無料ではないんだぞ……(勘弁してくれよ)」
一転して静かになる会議室
バーグ王国にとって飛龍は貴重な航空戦力である。
龍族の亜種とは言え、口から火炎弾を撃ち出して空中格闘戦ができるし、地上にばら撒いて爆撃することもできる。
「10万ですか……兵力の損失は痛いですなぁ……。特に飛龍の……」
国庫を管理している文官の呟きが広い部屋に響く。
いや今は予算の心配してる場合じゃねぇだろと、この場にいる多くの者が思ったが誰も何も言わない。
バーグ王国は東西に長いオースティン大陸の極東部に位置する国家の1つで、周辺国とは常に勢力争いをしている。戦争は日常であり、攻めるのも攻められるのも慣れてしまっている。
一応、バーグ王国を始め周辺国家は大陸東の大国であるタイカ大帝國に朝貢して地方の王として認めてもらっている。朝貢国家同士ではあるが、別に仲間と言う訳でもないので争いが絶えることはない。今回の件でバーグ王国が大損害を被ったとなれば、各国から攻め込まれてもおかしくない状況である。
「「「(我々は何と戦ったのだ?)」」」
再び静かになった室内で皆が思うことは同じであった。
その時、扉がノックされ軽装備の兵士が入室し、斥候部隊長に耳打ちする。
彼の疲れた表情に拍車をかけるとは余程の内容であるようだ。
「報告します。えぇ……アルトア王国の南に大きな島が見つかったと言うことです」
更にこめかみを押さえながら言葉を続けた。
「上陸しようと近づいた者がその島周辺に現れた巨大船に拿捕……捕縛されたようです」
「島? 新しく島が発見されたと? しかし連絡がつかないはずなのにどうやって報告が上がってきたのだ?」
「魔力通信が使えなかったので伝書鳩を使ったようです」
「「「(ああ……そう言うことね)」」」
この場にいる者たちの顔が曇る。
皆、何かを察したような表情をしている。
「はぁ……。とにかく引き続き情報収集しつつ防備を固めろ。戦いになるだろう」
今まで沈黙を貫いていたバーグ王国国王は沈痛な面持ちで命令を下した。
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