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第2章 花精霊族解放編
第37話 解放のため
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アスターゼは村の入り口でシャルルと別れると、沼地の祠の方角へと足を向けた。その付近の森林地帯で時を待つつもりなのだ。アスターゼが村を去ったからと言って、ヒュドラがすぐに行動を起こすとも限らない。森にいれば、大事が起こるまで時間が掛かったとしても、獣を狩って糊口を凌ぐこともできる
彼女には、別れ際にアルテナ騎士団のメンバーに渡していた物と同じ、青の輝石を渡してある。危急の知らせがあれば、すぐに飛んで行くことができるだろう。
程なくして、アスターゼは沼地へと到着した。
村からここまで大した距離ではない。
特性の【疾走】を使えば何かあっても何とか間に合うだろうと思われた。
沼のその水面には波紋一つなく穏やかさを保っている。
陽光が反射して眩しく、むしろ美しいとも言える様子だ。
アスターゼは長年この沼地で惨劇が起こってきたことに憐れみを隠せなかった。
優し過ぎるばかりに人間に蹂躙され搾取され続けてきた花精霊族。
彼らを縛る枷を破壊すべき時が来たのだ。
森に入ったアスターゼであったが、特にやることもないので、今までのことを振り返りつつ、今後自分が取るべき道をシュミレートしておくことにした。
コンコールズでのことを思い返すアスターゼ。
恐らく襲撃した者の中に時空魔術士がいたのだろう。
その人物が時空魔術であの部屋にいた全員をどこかに強制テレポートさせた。
恐らくランダムテレポートなのだろうが、術者にすらどこへ飛ばすか分からないとしたらアルテナたちはさぞ難儀していることだろう。
せめて言葉の通じる場所であって欲しいものだとアスターゼは思う。
特にアルテナは魔物に不覚を取る心配はないとは思うが、彼女は案外寂しがり屋で脆いところがある。
出来ることなら一刻も早く合流したいものだ。
しかし、今はとにかく向き合わねばならない問題に直面している。
これを解決しなければ先には進めない。
「ヒュドラは恐らくあの人物だ……」
仮に滅ぼすとしても他の者たちに、証拠を提示した上で納得させなければならない。花精霊族にも人間にも。念のため、シャルルにはその人物の動向に気を配っておくように言い聞かせておいた。
「ヒーロー物の悪役みたいに一から十まで悪事を説明してから死んでくんねーかな」
アスターゼは自分で言っておいて思わず鼻で笑ってしまう。
手負いのヒュドラに負けるとは思っていないが、逃亡されるのだけは絶対に阻止せねばならない。
「いや、あいつがいなくなれば、それで奴がヒュドラであったと言う証明になるんじゃないか?」
ヒュドラを倒したとして問題はその後だろう。
次は人間の支配から花精霊族を解放してやらねばならないのだ。
ご丁寧にお願いしたところで、あの傲岸不遜な人間たちが素直に了承するはずがない。あの手合いは、自分より下だと判断した相手にはとことん強気に出てくるものだ。
今のところ、ヤツマガ村の人間の中に強者がいる気配は感じられなかった。
武器さえあれば反抗作戦は成功するはずだ。
そう思うが、念のため事前にアスターゼが調べる必要はあるだろう。
とにかく、花精霊族をヒュドラと人間から解放するために一肌脱ごうと心に誓うアスターゼであった。
彼女には、別れ際にアルテナ騎士団のメンバーに渡していた物と同じ、青の輝石を渡してある。危急の知らせがあれば、すぐに飛んで行くことができるだろう。
程なくして、アスターゼは沼地へと到着した。
村からここまで大した距離ではない。
特性の【疾走】を使えば何かあっても何とか間に合うだろうと思われた。
沼のその水面には波紋一つなく穏やかさを保っている。
陽光が反射して眩しく、むしろ美しいとも言える様子だ。
アスターゼは長年この沼地で惨劇が起こってきたことに憐れみを隠せなかった。
優し過ぎるばかりに人間に蹂躙され搾取され続けてきた花精霊族。
彼らを縛る枷を破壊すべき時が来たのだ。
森に入ったアスターゼであったが、特にやることもないので、今までのことを振り返りつつ、今後自分が取るべき道をシュミレートしておくことにした。
コンコールズでのことを思い返すアスターゼ。
恐らく襲撃した者の中に時空魔術士がいたのだろう。
その人物が時空魔術であの部屋にいた全員をどこかに強制テレポートさせた。
恐らくランダムテレポートなのだろうが、術者にすらどこへ飛ばすか分からないとしたらアルテナたちはさぞ難儀していることだろう。
せめて言葉の通じる場所であって欲しいものだとアスターゼは思う。
特にアルテナは魔物に不覚を取る心配はないとは思うが、彼女は案外寂しがり屋で脆いところがある。
出来ることなら一刻も早く合流したいものだ。
しかし、今はとにかく向き合わねばならない問題に直面している。
これを解決しなければ先には進めない。
「ヒュドラは恐らくあの人物だ……」
仮に滅ぼすとしても他の者たちに、証拠を提示した上で納得させなければならない。花精霊族にも人間にも。念のため、シャルルにはその人物の動向に気を配っておくように言い聞かせておいた。
「ヒーロー物の悪役みたいに一から十まで悪事を説明してから死んでくんねーかな」
アスターゼは自分で言っておいて思わず鼻で笑ってしまう。
手負いのヒュドラに負けるとは思っていないが、逃亡されるのだけは絶対に阻止せねばならない。
「いや、あいつがいなくなれば、それで奴がヒュドラであったと言う証明になるんじゃないか?」
ヒュドラを倒したとして問題はその後だろう。
次は人間の支配から花精霊族を解放してやらねばならないのだ。
ご丁寧にお願いしたところで、あの傲岸不遜な人間たちが素直に了承するはずがない。あの手合いは、自分より下だと判断した相手にはとことん強気に出てくるものだ。
今のところ、ヤツマガ村の人間の中に強者がいる気配は感じられなかった。
武器さえあれば反抗作戦は成功するはずだ。
そう思うが、念のため事前にアスターゼが調べる必要はあるだろう。
とにかく、花精霊族をヒュドラと人間から解放するために一肌脱ごうと心に誓うアスターゼであった。
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