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第二章 ナミディアの領主
2-04 厄日
しおりを挟む今日は朝から雨模様であった。
雨の音を聞いているのは好きだが、雨の日に外に出かけるのは嫌だ。
そんな訳でレヴィンは朝から少し不機嫌であった。
午前中の黒魔法の授業の時、レヴィンは魔法に関して興味深い事を知る。
彼は自分で魔法を覚える事に一生懸命過ぎて、今まで他人がどんな魔法を覚えているかなどあまり興味を持っていなかった。
聞くところによると、何度やっても対象の魔法がうまく発動できない生徒が増えてきたらしいのだ。それらの生徒は、職業レベルも職業点も条件を満たし、魔法陣も覚えているという。
先生の言うところによれば、それらの条件をいくら満たしていても、魔法陣を上手に描く事が出来なければ発動に至らないとの事であった。
そりゃ、あんな難しい幾何学模様の魔法陣をイメージの中で確実に描けと言われて、すぐに、はいできましたとはならないであろう。
自分は異世界人という事もあって、もしかしたらその点、優遇されているのかも知れない。
レヴィンは冒険者ギルドで聞いた話を思い出す。
多くの冒険者はランクCまでしかなれない。
冒険者ランクBとランクCの間には大きな壁が存在しているというものだ。
魔法を上手く発動できるか否かで高ランクになれるか否かも変わってくるのだろう。そしてこれは魔法ほどではないが剣技や戦技にも同じ事が言えるという。簡単に言えばイメージも重要な要素だという事である。
自分は今まで魔法の習得に全く手間取った事がなかったので、気づかなかったのだ。これも異世界転生の恩恵なのだろうか? 今まで異世界人とはあの神様になった男としか出会った事がないのでよく解らない。これから出会う機会はあるのだろうか?期待と不安で胸が締め付けられる感じがした。
そして昼休みとなり、いつものメンバーで食堂で昼食を摂っていると、変なのに絡まれた。
やれやれ今日も災難ががが……と頭が痛くなってくる。
それはレヴィンを見つけると、ビシィッと人差し指を突きつけて言った。
「あなたが爆裂のレヴィンねッ? ようやく見つけたわよッ!」
人を指差さない。そんな事も解らない変人の襲来に気が滅入る思いだ。
あと、なんて言った? 爆裂のレヴィン?
何その恥ずかしい二つ名は! 後、単純すぎない!?
レヴィンはこめかみを押さえつつ、尋ねてみる。
「ど、どちら様でしょうか?」
「ふッ! よく聞いてくれたわね! わたくしの名はエレノーラ。エレノーラ・フォン・ノルツァームと言う者よッ!」
もちろんそんな知り合いはいない。
隣りのアリシアも不審者を見る目をしている。
「その貴族様が何か御用でしょうか?」
「ふッ! あなた、生徒会に入りなさいッ! そしてその能力を存分に発揮しなさいッ!」
ふッってあんた、腹式呼吸でもしてんのかと心の中で突っ込みつつ、レヴィンはもちろんお断りの返事をする。
「お断りします」
頭の中がAAで埋め尽くされる。
それを聞いて崩れ落ちるエラノーラ。
「わたくしの誘いを断るなんて……。爆裂のレヴィンと異名を持っているからって調子に乗らない事ね……」
「そう呼んでるのはあなただけでは?」
冷静な突っ込みがエレノーラを襲う。
「そもそもどうして僕なんか誘うんですか?」
「有能な者の義務とでも呼ぶべきかしらねッ!」
ノブレス・オブリージュみたいなもんかと思っておこう。貴族じゃないけど。
「こう見えて結構忙しいんで」
「ふッ! 知っているわよ。あなた、いつも図書館にいるって話じゃない。本の虫のようね」
「学生の本分は勉強では?」
ぐうの音もでない正論にエレノーラは思わず怯む。
するとそこに新たな闖入者が現れる。
「そこまでだ。エレノーラ、止めるんだ。皆注目しているぞ? レヴィン君も迷惑しているようだし」
「か、会長! わたくしはただ、有能な者を埋もれさせておくのはもったいないと……」
ちょっと評価良すぎませんかね?
一体何を聞いたのか知らないけれども、どうせ尾ひれのついた話を聞いたんだろうなぁ……。
「先輩、強引な勧誘は悪手です」
「書記ちゃんまでッ!?」
どうやら生徒会の会長と書記のようだ。
「こういうのは外堀から埋めていくものです」
本人の前でいけしゃあしゃあと。
「挨拶が遅くなったね。僕の名前はエドガー。生徒会の会長をしている。で、こちらは書記のユニーだ。うちの副会長が迷惑をかけました。申し訳ない……」
レヴィンはハァ……と、曖昧な返事をする。
すると、また来るわと言って、エドガー達に両腕をつかまれながらエレノーラは去って行った。嵐のような人であった。もう来なくていいですよ、と小さな声でつぶやいておいた。
そしてふと、一緒にいたはずのアリシア達に目を向けると、彼女達は恥ずかしそうに縮こまっていた。
毎度お騒がせします……。レヴィンはいつかのテレビドラマのような事を心の中でつぶやきつつ謝っておいた。
今日も帰りに冒険者ギルドに立ち寄った。
例の件の進捗確認である。
館内に入ると、いつも通りの賑わいがそこにはあった。
こいつらいつも飲んでんな、と思いつつ受付を目指す。
受付や職員の席を探したが、今日はレオーネはいないようだ。
例の件の進捗状況を聞くだけだし誰でも構わないか、と適当な受付嬢のところへ行く。そして、今までの経緯を話すと、現状を教えて欲しいと伝えた。
「なッ!? 君、どうしてその件を知っているのッ!?」
何故だか驚かれるレヴィン。
「え……? いやだって僕が目撃情報を持って来たんですし」
「またまたー。お姉さんを騙そうったってそうはいきませんからねッ!」
「いやだから」
「君のような子供が豚人の情報を入手して、さらに豚人から逃げ切れる訳がないじゃないッ!」
あかん。また変な人や。
なんだろ。今日は変な人に絡まれる日なんだろうか?
とりあえず、首にかけている冒険者タグを受付嬢に見せる。
「ほらまだランクDじゃない。そんな君が豚人の集落に潜入したって言うの? からかうのもいい加減にしなさいッ!」
ああ。この人、俺が潜入したって勘違いしてんのか。
「あの僕は潜入したんじゃなくて、あくまで第一発見者なんですって」
「自分に都合が悪くなったからって言ってる事をコロコロ変えちゃだめよ?」
「」
ああ、頭がハッピーセットな人だ……。
そう思ったところで他のギルド職員から横やりが入った。
その人は受付嬢の頭をファイルでスパーンと叩くと、レヴィンに謝る。
「後ろで話は聞かせてもらったわ。ごめんなさいね。コレが迷惑をかけたみたいで」
「ちょッ! 何するんですか? ベティさんッ! 私はこの子にッて痛ーーッ!」
ベティはうむを言わさずもう一度、頭を叩く。
「あ ん た は 黙 っ て な さ い!」
「」
ようやく黙ったのを見て、ベティに同じ事を質問する。
「はい。あの件はですね。討伐依頼として討伐隊の募集が行われているところです。もう掲示板に貼り出されているから見てみてください」
もう依頼がかかってたのか。掲示板見るの忘れてた。
「もう何人からか募集はありましたか?」
ベティは手元の書類をペラペラとめくる。
「んー。まだ少ないですね。今、王都には高ランクの冒険者が不在なんです」
「え? 依頼のランクはいくつなんですか?」
「ランクはBですね。ランクBの豚人王とランクCの豚人将軍が確認されましたから。ただ、豚人の数が多いので多くの冒険者を募集する必要もあり、ランクCとランクDの冒険者にも声をかけております。少し時間がかかるかも……」
「解りました。ありがとうございました」
帰り際に一応、掲示板を確認する。
まだ一組のパーティの名前が書かれているだけだ。
今日はなんだか疲れる日だった。
帰ってゆっくり休もうと心に誓うレヴィンであった。
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