神様の願いを叶えて世界最強!! ~職業無職を極めて天下無双する~

波 七海

文字の大きさ
51 / 174
第二章 ナミディアの領主

2-20 再出発

しおりを挟む

 昨日の夜二十時頃に出発は明日だとの連絡が来た。
 いつでも出発できるように準備しておくように言われていたため、特に問題はなかった。今はカルマへの街道を荷馬車を護衛しながら皆で歩いているところだ。
 しかし、護衛する荷馬車の台数はかなり増えていた。
 昨日までの十台から二十台へ大幅に。

 流石に、多すぎて護衛に手が回らないと反対したのだが、他の冒険者を手配できなかったので仕方ないと言われた。
 報酬に色を付けてもらえる事にはなったが、事情が解らないと納得できない。
 すると、ホンザは理由を教えてくれた。
 エクス公国で蝗害こうがいが発生し、収穫前の小麦がかなりやられたとの事だ。蓄えも少なく、このままでは間もなく飢饉が起こるという。
 それを聞きつけた商人らが小麦を買い占めて、エクス公国で高値で卸そうとしているらしく、危機感を覚えたホンザは急遽、穀倉地帯である、メルディナで高騰しつつある小麦を仕入れたようだ。
 あの伝令は彼の店の者であったらしい。エクス公国は何とかして小麦をかき集めようとしているらしく、公国出身であるホンザにもツテを使って依頼が来たとの事であった。

 明らかに足りない護衛数で一行は進む。
 こんな時に警戒すべきは魔物よりも野盗の類である。
 しかし、大商隊であるにも関わらず、今のところ彼等の捜査網には引っかかっていないようだ。
 襲撃は午前中に豚人オーク十五匹だけであった。
 隊列など何もなく、統率のたいして取れていない魔物など、四組のパーティには敵ではなかった。

「しかし、この商隊は最終的にはエクス公国まで行くのだろう? そこはどうするんだ?」

 昼食の休憩中にダライアスが尋ねてきた。

「まだ、どうしようかと考えている。別に依頼自体はカルマまでの契約だから、そこでおさらばしても問題はないんだけど……」

「お前は時々、勢いで行動する事があるからな。まぁ嫌いじゃないけど」

 レヴィンはエクス公国の民の窮状を訴えるホンザの鬼気迫る表情を思い出していた。



「去年は凶作で不作だったッ! それに加えて今年も蝗害こうがいによる大不作となると、とてもじゃないが民は生きていけない。一刻も早く食糧を届ける必要があるのです!」

「そんな事は俺の知った事ではないッ! 国がどこかに支援を求めれば良い話だろう!」

 イシュタルの無慈悲な言葉がホンザを打ち据える。
 他のパーティも何も言わない。

「国が動くのを待っていたら、下手すれば餓死者がでてしまう! 何とか護衛を延長して欲しい!」

「エクス公国が無能集団なだけだろ。恨むんなら自分の国を恨むんだな。と言うか、お前が仕入れた小麦はもとはと言えばアウステリアの物だろう。盗人猛々しいとはこの事だなッ!」

「若ッ! 言葉が過ぎますぞ!」

 隣りではガルバッシュがイシュタルを諌めている。

「カルマの街で護衛を引き受けてくれるヤツがどれだけいるかな? カルマにいる冒険者は魔の森で金を稼ぐのに夢中だからな」

「ぐ……」

「しかし、エクス公国の民も民だな。蓄えが少ないなど、農民の普段からの努力が足りんだけではないのか?」

「あなたは貴族でしたな……。上がそう言う考えだと下にしわ寄せがいくんだッ! 少しは民の事を考えてみたらどうなのですかッ!」

「他国者に言われる筋合いはないッ!」



 ダライアスは農民だ。
 どちらかと言えば、ホンザの心境に共感しているようだ。
 イシュタルに対しては露骨に文句を言っている。
 レヴィンもイシュタルの本性を知ってどん引きしている。
 危険性に目を向けている部分は理解できるが、その民を民とも思わぬ思想に引いているのである。

 結局、この日は午前中の魔物の襲撃以外は何も起こらなかった。

 その夜、商人のホンザ達が眠っている中、四組のパーティは寝ずの番をしていた。それぞれのパーティ内で順番に見張りを交代しているのだ。
 そんな中、『無職ニートの団』は全員が起きて話し合っていた。

「さて、こんな時間にすまないが、意見を聞きたい」

 レヴィンはそう切り出した。

「エクス公国の首都エクスまでの護衛延長がホンザさんから出されている。どうしたらよいだろう?」

「俺は、護衛を引き受けても構わないと思っている。彼の考えには共感できる」

 ダライアスが口火を切る。

「だが、他に護衛を受けてくれそうなパーティがいないんだろ? 危険じゃないか?」
 
 ヴァイスは危険性を心配している。もっともな意見だ。

「いや、現在カルマで依頼を出しているらしいので、まだどうなるか解らない。しかし、ホンザさんは焦っている。護衛が見つからなくても強行する可能性がある。その場合は確かに危険な護衛となるな」

「彼の目的は餓える可能性のある民に食糧を届ける事なのだろう? それなら、エクス公国の食糧生産をになっている地方の村々を回るつもりなんじゃないか? 首都エクスに直行して、はい、お終いとはならないんじゃないかな?」

 ベネディクトが別の視点から発言する。

「確かに、国に渡すと下に行き渡らない可能性があるからな……。それはホンザさんの望むところではないだろうし」

「エクス公国領に入ってからは特に危険……。食い詰めた野盗が大勢いそう……」

 シーンも反対寄りのようである。

「あたしはレヴィンの意見に従うよ。レヴィンはいつも的確な判断をしてくれるよ」

「アリシア、盲目的に信じるのも危険だぞ? いや信頼してくれているのは嬉しいけどさ」

「レヴィン、肝心の君の意見はどうなんだい?」

「俺は、できれば助けてあげたいと思っている。それに普通に戦えば魔物はもちろん、野盗相手にも後れをとるとは思っていない。ただ、俺以外は人間相手の戦闘をした事がない。皆に人間を殺す覚悟はあるか?」

 全員が押し黙る。

「まぁ最悪、俺一人で護衛をして、皆はカルマに残ると言う手もある。その場合はベネディクトが指揮を取って依頼をこなして欲しい。となると、前衛に職業変更クラスチェンジしたのは痛いな……」

「一人でなんて、それこそ行かせられないッ!」

 ベネディクトが悲鳴のような声を上げる。

「俺は人の悪意には慣れている。そこらの野盗ぐらい確実に仕留められるだろう」

 誰も話そうとしない。皆、迷っているのだろう。

「ではカルマでもう一度聞くよ。考えておいてくれ」

 そして夜は更けてゆく……。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

処理中です...