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第二章 ナミディアの領主
2-30 村回り
しおりを挟む『南斗旅団』のアジトでのお宝を分捕り、もとい、押収した後、重量感を増した荷馬車がポロロ村に向って疾走している。
行きよりもスピードは出ていない。もしかしたら二日から三日かかるかも知れない。行きよりも揺れと音の少ない車内でレヴィンはごちる。
「一瞬で意志の疎通が可能な魔導具があればいいのに」
「なんだ? 藪から棒に。そんなのがあったら戦争が変わるぞ」
「いちいち、報告や情報伝達のために、長い日数拘束されるのは勘弁願いたいです」
「それは確かにそうだな。今回だって、エクスに着くまで五日だったか? 往復で十日だろ。遠いよなぁ」
「そうですよ! 僕等はまだ学生で長期の休みしか冒険者として動けないし、時間は大切です」
そうなのである。元々夏休みは魔の森でレベリングするつもりだったのだ。
まぁ、エクス公国に行く決断をしたのはレヴィンなのだが……。
「そう言う時こそ、時空魔法の出番だろ。高位の魔法には転移できるものがあるらしいぞ?」
「そんな高位魔法の魔導書なんて手に入れるのも難しいですよ……実際使い手はいるんでしょうか?」
「使える魔導士は聞いた事ねーな」
「魔導書って洞窟の宝箱の中とかに入ってないんですかね?」
「お前、洞窟に宝箱ってそんな都合のいいもんがある訳ねーじゃねーか」
イザークが何言ってんだと、ため息をつきながら答える。
「でも地下迷宮ならあるかも知れねーな? 確かインペリア王国にあったろ地下迷宮。俺も行ってみたいと思ってたんだよ」
「僕も聞いた事はありますね。どこら辺にあるんでしょうか?」
「噂で聞いたな……確か、モンテールって都市じゃなかったか」
レヴィンは、しばらくは行く時間がないだろうが、とりあえず覚えておく事にした。
それから三日を費やしてポロロ村に帰ってきた。
二十一台もの荷馬車に食糧やお宝を満載にしていたのにも関わらず、野盗の類に襲われる事はなかった。
やはり、盗賊のネットワークでレヴィン達の事は共有されているのかも知れない。
久しぶりにまともな食事にありつけそうだ。
基本、旅は保存食のようなものを食べる事が多い。
分捕ってきた食糧は腐らせるのも悪いので、村の皆で食べる事にした。
保存が利かなそうなものは魔法で凍らせておいたのだ。
村の広場で村民と食事をしながらレヴィンは今後の事件の推移について考えていた。
「さて、そろそろ、ベネディクト達が首都エクスに到着している頃合だと思うけど、どうなりますかね?」
「上手くいっていれば、騎士団が派遣され捕虜がエクスに護送されるだろう。それに旅団を壊滅させた君達も出頭要請があるだろうね」
ホンザが事もなげに予想を話す。
「でも、ホンザさん、他の村にも食糧を届けたいんですよね? どうするんですか?」
「とりあえず、こちらの使者が戻ってくるまでまだ時間があるだろう。隣り村のカナックに行きたいと思っている」
「まぁ、到着してもすぐに大公に会える事はねーだろうし、時間はあるだろうな」
イザークがホンザの言葉に同調する。
その隣りでイーリスもうんうんうなずいている。
「カナック村まで二日程度だ。予定通り、引き続き護衛を頼みたい」
「この村にも誰か残った方が良いのでは?」
ヴァイスが気を利かせて発言する。
「じゃあ、お前ら行って来いよ。俺がお宝と村を護っておく」
イザークはついてくるつもりはないようだ。
逃げたな……。
結局、『無職の団』のみで護衛をする事となった。
一部食糧を残していく事もあり、荷馬車に人が乗るスペースがある。
今回は護衛も荷馬車に乗って、爆走していく予定である。
そして、あっけないくらいあっさりとカナック村に到着する。
道中が平和なようで何よりである。
村に入るが、この村も村内に人気がなかった。
各家を周り、村人の安否を確認していく。
時間が経過して分、ポロロ村より悲惨な状況のようだ。
幼子など、一部の村人に餓死者が出ているという。
早速、炊き出しを行う一行。
ホンザの店の者を中心に、弱った体でも受け付けるような料理を作っていく。
村の集会所に全員を集め、介抱しながら食事を与える。
レヴィンやシーンとしては、こういう時、回復魔法が効けばいいのにと思ってしまう。しかし、まだまだ解っていない魔法も多いのだ。栄養失調から回復させる魔法もあるかも知れない。レヴィンはそう期待を寄せるのであった。
数日間、様子を見てカナック村は大丈夫と判断したホンザは、一応、南更に東ゴズ村にも足を延ばす事にした。
カナック村からゴズ村へ行くには、東にドルグスキ山脈があるため、少し南に迂回しなければならず、二日半から三日かかる。
ホンザの目的は、エクス公国民を飢餓から救う事である。
そこに村があるなら、行かねばなるまいと考えるのは当然の事であった。
そして、更に積み荷の減った荷馬車が荒野を爆走する。
ゴズ村に到着すると、村内を村人が闊歩していた。
話によれば、ルドミン・バジナ・ドラン・ホッジス公爵の食糧支援があったようで、不足気味ではあったが餓えはひどくないとの事であった。
隣り村のチェシャ村も同様だという。
「あっちの村と違ってこちらは良い領主に恵まれているようですね」
「そうだな。死人が出てなくてホッとしたよ」
ダライアスも嬉しそうに目を細めている。
「では、食糧を多めに渡してポロロ村に戻ろう」
ホンザはゴズ村の村長に事情を話し、引き返す事にした。
「他に餓えている者がいたら食糧を渡して欲しい」と。
村長は何度も何度もお礼を言っていた。
一行は四日ほどかけてポロロ村に帰還した。
レヴィンはもう既にエクスから騎士団や役人が来ている頃かと思っていたが、到着はまだのようであった。
「あう~。疲れたよ~」
アリシアが限界のようだ。
ずっと野宿と簡素な食事が続いていたため、疲労困憊のようである。
「アリシア、お疲れ様だな。もうひと踏ん張りだぞ! カルマに戻ったらしばらくゆっくりしよう」
「うんッ! 解ったよッ!」
その時、遠くから笛のような音が聞こえてきた。
その音は段々近づいてくるようだ。
そして、村に馬に騎乗した使者が訪れた。
なんだなんだと村の広場に集まり始める村人達。
先触れの使者は出迎えに来た村長に、あと、一時間ほどで騎士団と護送車が到着すると伝えて、再び戻って行った。
使者の首にかけられていたのは角笛のようなものだった。
それを吹いていたのだろう。
使者の到着からほぼ一時間が経過し、騎乗した騎士団と思われる集団が村に近づいてきた。
隣りにはベネディクトの姿も見える。
その後ろには、大きな車のようなものを四頭の馬が引いている。それが三台だ。
おそらく捕虜を収容する車なのだろう。
村長をはじめとした村人一同で一行を出迎える。
待ちに待った、首都エクスからの使者ご一行様の到着であった。
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