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第4話 お昼ごはん
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梅雨入りして雨が降り、晴れて廊下の窓に残った雨粒の影が日差しで床にくっきりと見えるのに癒やされながら、数学の先生に質問する為、職員室前に来た。
この時間に来たのは、お昼休み中なら基本的に職員室にいると、先生本人に教えてもらったから。
日和先生を好きになってから先生の担当科目を得意科目にしようと勉強してる。だけど、先生への気持ちを“学業を疎かにしたから”と無碍にされては困るので、先生の担当科目以外も力を入れて勉強するように変えた。
職員室のドアをノックしてから開け、学年・クラス・名前を言い、数学の先生を探す。ドアを開けた瞬間に香ったのは、コーヒーの香りだ。そのいい香りを堪能しつつ職員室内を見渡すと、隅の方に置いてあるプリンターで印刷しているのを見つけて近づく。
印刷が終わったのを確認して、数学の先生に声をかけて質問すると、快く答えてくれた。
いくつか質問してお礼を言った後、印刷物を運ぶのを手伝おうとしたが断わられてしまい、数学の先生が印刷物を持って職員室を出て行くのを見送る。
職員室に来る口実であった質問を終え、日和先生のデスクへ向かう。
先生のデスクには一本生けられる花瓶が置いてあって、向日葵を生けていた。向日葵の鮮やかで明るい黄色も先生にあってる。バレッタの淡い黄色も似合うし、どの色も先生にあうんだろうな。
六月に咲く色々な花を思い浮かべながら、デスクでお弁当を食べている先生に声をかけた。
「日和先生」
「!」
驚かせない為に少し大きな足音をたてて近づいたけれど、駄目だったようだ。凄い勢いで私の方へ顔を向けられ、私も少し驚く。
「ど、どうしたんですか、花ヶ前さん」
告白してからの先生は私を意識しているのがよく分かる。授業中に目が合うのもそうだけど、話しかけると少しオドオドされる。今もそうだ。
「お弁当、美味しそうですね。先生の手作りですか?」
先生が食べているお弁当は、彩りも良くて栄養バランスも良さそう。
お弁当の中身は卵焼きにひじきに小さく切られた鮭、ほうれん草の胡麻和えと唐揚げ、プチトマトとご飯。美味しそうだなぁ。
「はい、手作りです。手作りと言っても冷凍食品多めですよ。私がした事といえば卵焼きを焼いて、炊いたご飯とおかずを詰めただけです」
先生はそう言ったけれど、毎日お弁当を自分で作るのは大変だ。高校生になってから自分でお弁当を作るようにした。毎日、何を入れるか考えたり栄養バランスを考えたり大変で、中学生のとき彩りと栄養バランスの良いお弁当を毎日作ってくれた母には感謝しかない。学生の私がそうなんだ、働いている先生はもっと大変なはず。
その事を端的に伝えると、凄くないですよ。他の方もそうですよと言って顔を逸らされた。
顔を逸らされたことで、悪戯をしたくなってしまった。思いついた悪戯を実行するために、顔を逸らしたままの先生の耳元に顔を近づけた。
「先生、好きです」
告白したときと同じセリフを、耳元で囁いた。
囁いた瞬間に振り向かれ、私と先生の顔が一気に近づく。耳を真っ赤にしながら、キャスター付きの椅子を後退させて私から距離をとる先生が、可愛くてしかたがなくて頬が緩んでしまう。
先生は何か言おうとするが、プリンターの動く音で職員室にいることを思い出したのか口を閉じる。そして、真っ赤に染まった耳を手で隠し目を閉じて、数回首を横に振っていた。
(可愛い……)
先生は耳がすぐ赤くなる。
この前、園芸部の活動で花壇の花に水やりをしていたら先生が“可愛いね”と花を褒めていて、“可愛いって言ってる先生が可愛いですよ”と周りに聞こえない小さな声で伝えたら、耳を真っ赤にしながらそっぽ向かれてしまった。反応が可愛くてつい“耳が真っ赤ですよ”と伝えたら今のように手で隠して。それからは何かあると手で耳を隠すようになった。
それを思い出して頬を更に緩ませながら、まだ少し動揺している先生に、悪戯する前に聞こうとしていたことを質問する。
「先生の好きなお弁当のおかずってなんですか?」
「え? あ、卵焼きとひじきです。和食が好きで、醤油やダシを使った料理は大体好きですよ」
先生との会話で、できるだけ先生の好きなものを聞き出すようにしている。今みたいに動揺していなくても教えてくれるけど、どうして聞くんですかと聞かれたら、好きだからだと答えるしかない。そう答えたら教えてくれなくなりそう。だから、質問されないようにできるだけ不意をついて聞くようにしている。
他に教えてもらった好きなものは、たい焼きに抹茶プリン。コンビニで買ってよく食べると教えてくれた。
「卵焼きは甘めに味付けしてあるんですか?」
「甘いのが好きなので、そうですよ」
好きなものの話をしている先生はとっても楽しそう。園芸部の活動で花について説明しているときは、最近知った花笑みという言葉がぴったりな笑顔だった。今は小さな笑みだけれど、どの表情の先生も好きだ。
聞きたかったことも聞けたし、気持ちもまた伝えられた。嬉々としながら教室に戻ることを伝える。
「教えてくれてありがとうございました。そろそろ教室に戻ります」
「どういたしまして……?」
戸惑っている先生にお辞儀をして、職員室のドアの前で失礼しますと言ってから職員室を出た。
先生の好きな料理を知れたので、今日から料理にも力を入れよう。
母に料理を教えてもらおうと決め、母にどうお願いしようか考えながら廊下を歩いた。
この時間に来たのは、お昼休み中なら基本的に職員室にいると、先生本人に教えてもらったから。
日和先生を好きになってから先生の担当科目を得意科目にしようと勉強してる。だけど、先生への気持ちを“学業を疎かにしたから”と無碍にされては困るので、先生の担当科目以外も力を入れて勉強するように変えた。
職員室のドアをノックしてから開け、学年・クラス・名前を言い、数学の先生を探す。ドアを開けた瞬間に香ったのは、コーヒーの香りだ。そのいい香りを堪能しつつ職員室内を見渡すと、隅の方に置いてあるプリンターで印刷しているのを見つけて近づく。
印刷が終わったのを確認して、数学の先生に声をかけて質問すると、快く答えてくれた。
いくつか質問してお礼を言った後、印刷物を運ぶのを手伝おうとしたが断わられてしまい、数学の先生が印刷物を持って職員室を出て行くのを見送る。
職員室に来る口実であった質問を終え、日和先生のデスクへ向かう。
先生のデスクには一本生けられる花瓶が置いてあって、向日葵を生けていた。向日葵の鮮やかで明るい黄色も先生にあってる。バレッタの淡い黄色も似合うし、どの色も先生にあうんだろうな。
六月に咲く色々な花を思い浮かべながら、デスクでお弁当を食べている先生に声をかけた。
「日和先生」
「!」
驚かせない為に少し大きな足音をたてて近づいたけれど、駄目だったようだ。凄い勢いで私の方へ顔を向けられ、私も少し驚く。
「ど、どうしたんですか、花ヶ前さん」
告白してからの先生は私を意識しているのがよく分かる。授業中に目が合うのもそうだけど、話しかけると少しオドオドされる。今もそうだ。
「お弁当、美味しそうですね。先生の手作りですか?」
先生が食べているお弁当は、彩りも良くて栄養バランスも良さそう。
お弁当の中身は卵焼きにひじきに小さく切られた鮭、ほうれん草の胡麻和えと唐揚げ、プチトマトとご飯。美味しそうだなぁ。
「はい、手作りです。手作りと言っても冷凍食品多めですよ。私がした事といえば卵焼きを焼いて、炊いたご飯とおかずを詰めただけです」
先生はそう言ったけれど、毎日お弁当を自分で作るのは大変だ。高校生になってから自分でお弁当を作るようにした。毎日、何を入れるか考えたり栄養バランスを考えたり大変で、中学生のとき彩りと栄養バランスの良いお弁当を毎日作ってくれた母には感謝しかない。学生の私がそうなんだ、働いている先生はもっと大変なはず。
その事を端的に伝えると、凄くないですよ。他の方もそうですよと言って顔を逸らされた。
顔を逸らされたことで、悪戯をしたくなってしまった。思いついた悪戯を実行するために、顔を逸らしたままの先生の耳元に顔を近づけた。
「先生、好きです」
告白したときと同じセリフを、耳元で囁いた。
囁いた瞬間に振り向かれ、私と先生の顔が一気に近づく。耳を真っ赤にしながら、キャスター付きの椅子を後退させて私から距離をとる先生が、可愛くてしかたがなくて頬が緩んでしまう。
先生は何か言おうとするが、プリンターの動く音で職員室にいることを思い出したのか口を閉じる。そして、真っ赤に染まった耳を手で隠し目を閉じて、数回首を横に振っていた。
(可愛い……)
先生は耳がすぐ赤くなる。
この前、園芸部の活動で花壇の花に水やりをしていたら先生が“可愛いね”と花を褒めていて、“可愛いって言ってる先生が可愛いですよ”と周りに聞こえない小さな声で伝えたら、耳を真っ赤にしながらそっぽ向かれてしまった。反応が可愛くてつい“耳が真っ赤ですよ”と伝えたら今のように手で隠して。それからは何かあると手で耳を隠すようになった。
それを思い出して頬を更に緩ませながら、まだ少し動揺している先生に、悪戯する前に聞こうとしていたことを質問する。
「先生の好きなお弁当のおかずってなんですか?」
「え? あ、卵焼きとひじきです。和食が好きで、醤油やダシを使った料理は大体好きですよ」
先生との会話で、できるだけ先生の好きなものを聞き出すようにしている。今みたいに動揺していなくても教えてくれるけど、どうして聞くんですかと聞かれたら、好きだからだと答えるしかない。そう答えたら教えてくれなくなりそう。だから、質問されないようにできるだけ不意をついて聞くようにしている。
他に教えてもらった好きなものは、たい焼きに抹茶プリン。コンビニで買ってよく食べると教えてくれた。
「卵焼きは甘めに味付けしてあるんですか?」
「甘いのが好きなので、そうですよ」
好きなものの話をしている先生はとっても楽しそう。園芸部の活動で花について説明しているときは、最近知った花笑みという言葉がぴったりな笑顔だった。今は小さな笑みだけれど、どの表情の先生も好きだ。
聞きたかったことも聞けたし、気持ちもまた伝えられた。嬉々としながら教室に戻ることを伝える。
「教えてくれてありがとうございました。そろそろ教室に戻ります」
「どういたしまして……?」
戸惑っている先生にお辞儀をして、職員室のドアの前で失礼しますと言ってから職員室を出た。
先生の好きな料理を知れたので、今日から料理にも力を入れよう。
母に料理を教えてもらおうと決め、母にどうお願いしようか考えながら廊下を歩いた。
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