わがままな婚約者

はる

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3話

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元父親の執事程度の男と結婚したくない気持ちも分かる。


きっと彼女は俺をただの権力、身分、お金欲しさに結婚するぐらいにしか理解していないだろう。


だが、俺は違う。彼女が好きだ。


だから、彼女のやりたいことはやらせてあげるし、彼女の思うようにできる限り寄り添ってきた。


もちろん、婚約者としての優しさやおおらかさ、気遣いも忘れずに…




しかし、彼女の俺への当てつけのような行動は日に日にどんどん酷くなっていく。


『ねぇ、今夜はどこに行ってきたの?』


「別にどこでもいいでしょ?」


『もう婚約は決まった仲だよ?どこに行ってたかぐらいは教えて?』


「なんで?そこまで干渉して来ないでよ」


そんな言い合いが耐えない毎日。


ある日、俺の使用人兼友達のモイーズ・カーソノとお話している時だった。


「そういえば彼女とどんな感じ?」


『………うまくはいかないよ…』


「そっか……そうだよな…」


『……………』



俺と彼の仲は長い。俺が小さい頃から仲良くて気づいたら使用人として身近な存在となっていた。


家族同然の仲で会話中に気まづくなる事なんてないし、会話が止まることなんて今まで全くなかった。


しかし、彼女との話になった時はどーしても会話が止まり止まりになってしまう。





それもそーだろう。


彼女に一目惚れしたことを知る唯一の友人である彼。


彼女を好きになってから、彼女のお父さんからまさかの結婚申し込みがあり、今の婚前生活があるまですべて知っている。




『そろそろ仕事戻ろーかな……』


『あっ、ちょっと待って』


『ん?』


「ちょっと、座って座って…」


『え、何?』


「こんな状況の時にさこんなこと言うの申し訳ないんだけどさ……」


『え、うん』





「彼女が男友達と遊んでる所前見たんだけど……」


『え………?』


「……ごめん…」


『…なんでおまえが謝るんだよ…』


「傷ついたよね………伝えるべきかすごい悩んで………」


「こんなことで悩ませてごめん」


『いや……』


「とりあえず彼女と帰って話してみるよ」


『………おう』


「………じゃあ、」




行く時と帰ってくる時と変わる匂い。


なんとなくだが薄々気づいていた。


でも、直接見たという話を聞くとやっぱりダメージは大きい。


自分の好きな人がしかも結婚も決まっている人が男友達と夜に飲み歩いてる?


そんな馬鹿な話が無いだろう…


そんなことをぶつくさと考えながら仕事をしていた。

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