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11話 久しぶりの人
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2時間くらい歩いたら人のいる所に出る。
そう言われて出発したのに、俺はまだ森にいる。
人が歩いているような道が見つからないことを思えば、今日も野宿は決定かもな。
もう魔獣と戦っても簡単にはやられなくなったけど、急に出てきた大きい動物に襲われるのはやっぱりまだ怖えんだよ。
寝る準備は早い方がいいに決まってんだろ。
木を切って平らな場所を作ると、鞄の中からテントを取り出した。カンカンと地面に打ち付けて、紐を木に結び固定する。
馬鹿力って本当助かるよなー。
このテント、ちょっとした魔術が仕込まれてんだぜ?
動物、魔獣避けの魔術がな。
冒険者道具って便利過ぎる。
完璧ではねえけど、これでちょこっとは安心して寝られるってわけ。
もう獣に怯えて木の上で寝なくても大丈夫なんだ。
テントができたら今度は食事の用意だ。
倒した木を小さく切り、乾燥させて水分を抜く。
少し大きめな石を集めてかまど状にすると、中に木を敷き詰めた。
馬鹿力バンザイ!!
使えるようになった魔法で火を起こすと、簡単に木に着火した。
「おお、なんかいい感じだ~」
1人っていうのが寂しいけど、なんかキャンプっぽくていい。
孤独なキャンプとか、大人な男感ある。
道中、食べられそうな果実や木の実を拾いながら歩いてきたから、今日は肉以外の食料もあるし、塩味のスープでも作るか。
というか夕食として食べられる味は塩味ぐらいしかねえんだけどな。
スパイスはあるけど、調合に成功したことはまだない。なんか微妙な味になっちまう。
何が足りないんだろうな。
醤油とかソース的な調味料は買うしかねえし、どう頑張っても作ることはできなかった。
元々料理は、手を出されると後片付けが大変になるという理由で嫁さんが全てやってくれてたから、全くわからない分野だからなー。
味付けなんか自分の味覚だけが頼りだ。やってみて、美味しいかまずいかの2択だ。
まあでもトマトっぽいものを見つけたから、最初にくらべたらレパートリーは広がったんだけどな!
トマトは割となんでも美味しくしてくれるのだ。
冒険者の道具の中から鍋を取り出すと、かまどの上に置いた。
肉をサイコロ切りにして入れて、トマトっぽいのも入れて葉っぱも入れる。
生活魔法で水を入れたらあとは煮込むだけだ。
グツグツと鍋が煮え立つといい匂いが辺りに広がった。
その時、草むらからガサリと音がしたかと思うと、木の棒を持った人が殴りかかってきた。
とっさに棒を捕まえて、手をひねる。
「い"だっ痛痛い痛い痛い!」
そこそこ大きな人影だったから身構えたけど、意外と弱かった。
馬鹿力バンザイ!
う~ん。
荷物の中にロープみたいのあったよな。
左手で暴漢を押さえつけたまま、右手で荷物を漁ってロープを取り出すと手と足をグルグルと縛って転がしておいた。
悪い奴の扱いなんてこんな感じでいいに決まっている。
さ~て、ご飯を食べるのに小さいのでいいから机と椅子が欲しいな~。
地べたで食事はなんか嫌だ。
どうしようか考えながらパシパシと斧を手のひらで叩くと閃いた。
倒れてる木の上から斧を打ち込む。
うむ、椅子の出来上がりだ。
俺1人しかいないけど3つ作る。なんとなく気分だ。
俺と母さんと父さんの分。1人は味気ねえもんな。
机はどうしようかな。木を縦に割って、下を切り株で支えたらそれっぽくなりそうか?
できた机の周りに椅子を並べると、それっぽくなった。
ちゃんとテーブルセットに見えるぜ。
お皿に出来上がった物をよそって、いただきま~す!
ふむ、普通にうまい。
「グ~、キュルキュル」
音の方を見ると、死んだ目でこっちを見てる暴漢がいた。
「腹空いてんのか?」
よく見ると俺より背はでかいけど、細くって汚い。
ずっと森で生活していたんだろうか?
マジで?
何ヶ月も森で過ごしてきた俺がいうのもなんだが、すげえな。
暴漢の目はスープに釘付けのまま、ウンともスンとも言わない。
食べにくいんですけど……。
俺は新しいお皿にスープを盛ると、横たわっている暴漢の口の前にスプーンを差し出した。
ゴクリと喉を鳴らすと、俺の手まで食うかっていうくらい食いついた。
「怖っ!」
慌てて離れる。
「フ~、フ~」
彼が唸るのと同時に、彼の腹もグルグルと鳴り出す。よっぽど腹が空いていたらしい。
俺はもう一度スプーンを差し出して、少し離れたところで止まった。
ギラギラとした目が怖えよ。
「お前の名前は?教えてくれたら一口やる」
「……リク」
「リク、あーん」
スプーンを口元に運ぶとパクリと食べた。
飲み込んだところで、リクを持ち上げて座らせる。
寝たまま食べたら牛になっちまうからな!
いや、牛になった方がいいくらいコイツ細いけど。
「リクって何歳なんだ?」
俺はスプーンを持ち上げて聞く。
「14。もう少ししたら成人する」
14歳にしては小せえな。俺より少し大きいくらいだから、12歳になったかなってないかぐらいだと思ったんだけど。
リクの口にスプーンを突っ込みながら、栄養状態を観察する。
「いつからこんな生活をしてるんだ?」
「気がついたらここにいた。小さい時のことは覚えてない」
ってことは生まれながらの浮浪者かどうかわかんないってことか。
しかし臭い。
うん。
「浄化!」
ひとまず変な臭いはしなくなって小綺麗になったな。
「ロープを取っても暴れないって約束してくれる?大人しくしてくれるなら、スープを分けてあげるけど」
リクがコクンと頷いたのを確認してロープを解いた。
テーブルに2つお皿を用意して、向かい合う。
こんな相手でも1人で食べるよりはやっぱりいい。ていうか、久しぶりの人との会話だったんだな。
俺は食べ終わると軽く片付けをしてテントに戻った。
腹いっぱい食ったんだから、リクも自分の寝床に帰るだろうと放置して。
だから朝起きて、まだそこにリクがいるのを見て驚いても、俺は悪くねえだろ。
ーーーーーーーーーー
攻め様その2
そう言われて出発したのに、俺はまだ森にいる。
人が歩いているような道が見つからないことを思えば、今日も野宿は決定かもな。
もう魔獣と戦っても簡単にはやられなくなったけど、急に出てきた大きい動物に襲われるのはやっぱりまだ怖えんだよ。
寝る準備は早い方がいいに決まってんだろ。
木を切って平らな場所を作ると、鞄の中からテントを取り出した。カンカンと地面に打ち付けて、紐を木に結び固定する。
馬鹿力って本当助かるよなー。
このテント、ちょっとした魔術が仕込まれてんだぜ?
動物、魔獣避けの魔術がな。
冒険者道具って便利過ぎる。
完璧ではねえけど、これでちょこっとは安心して寝られるってわけ。
もう獣に怯えて木の上で寝なくても大丈夫なんだ。
テントができたら今度は食事の用意だ。
倒した木を小さく切り、乾燥させて水分を抜く。
少し大きめな石を集めてかまど状にすると、中に木を敷き詰めた。
馬鹿力バンザイ!!
使えるようになった魔法で火を起こすと、簡単に木に着火した。
「おお、なんかいい感じだ~」
1人っていうのが寂しいけど、なんかキャンプっぽくていい。
孤独なキャンプとか、大人な男感ある。
道中、食べられそうな果実や木の実を拾いながら歩いてきたから、今日は肉以外の食料もあるし、塩味のスープでも作るか。
というか夕食として食べられる味は塩味ぐらいしかねえんだけどな。
スパイスはあるけど、調合に成功したことはまだない。なんか微妙な味になっちまう。
何が足りないんだろうな。
醤油とかソース的な調味料は買うしかねえし、どう頑張っても作ることはできなかった。
元々料理は、手を出されると後片付けが大変になるという理由で嫁さんが全てやってくれてたから、全くわからない分野だからなー。
味付けなんか自分の味覚だけが頼りだ。やってみて、美味しいかまずいかの2択だ。
まあでもトマトっぽいものを見つけたから、最初にくらべたらレパートリーは広がったんだけどな!
トマトは割となんでも美味しくしてくれるのだ。
冒険者の道具の中から鍋を取り出すと、かまどの上に置いた。
肉をサイコロ切りにして入れて、トマトっぽいのも入れて葉っぱも入れる。
生活魔法で水を入れたらあとは煮込むだけだ。
グツグツと鍋が煮え立つといい匂いが辺りに広がった。
その時、草むらからガサリと音がしたかと思うと、木の棒を持った人が殴りかかってきた。
とっさに棒を捕まえて、手をひねる。
「い"だっ痛痛い痛い痛い!」
そこそこ大きな人影だったから身構えたけど、意外と弱かった。
馬鹿力バンザイ!
う~ん。
荷物の中にロープみたいのあったよな。
左手で暴漢を押さえつけたまま、右手で荷物を漁ってロープを取り出すと手と足をグルグルと縛って転がしておいた。
悪い奴の扱いなんてこんな感じでいいに決まっている。
さ~て、ご飯を食べるのに小さいのでいいから机と椅子が欲しいな~。
地べたで食事はなんか嫌だ。
どうしようか考えながらパシパシと斧を手のひらで叩くと閃いた。
倒れてる木の上から斧を打ち込む。
うむ、椅子の出来上がりだ。
俺1人しかいないけど3つ作る。なんとなく気分だ。
俺と母さんと父さんの分。1人は味気ねえもんな。
机はどうしようかな。木を縦に割って、下を切り株で支えたらそれっぽくなりそうか?
できた机の周りに椅子を並べると、それっぽくなった。
ちゃんとテーブルセットに見えるぜ。
お皿に出来上がった物をよそって、いただきま~す!
ふむ、普通にうまい。
「グ~、キュルキュル」
音の方を見ると、死んだ目でこっちを見てる暴漢がいた。
「腹空いてんのか?」
よく見ると俺より背はでかいけど、細くって汚い。
ずっと森で生活していたんだろうか?
マジで?
何ヶ月も森で過ごしてきた俺がいうのもなんだが、すげえな。
暴漢の目はスープに釘付けのまま、ウンともスンとも言わない。
食べにくいんですけど……。
俺は新しいお皿にスープを盛ると、横たわっている暴漢の口の前にスプーンを差し出した。
ゴクリと喉を鳴らすと、俺の手まで食うかっていうくらい食いついた。
「怖っ!」
慌てて離れる。
「フ~、フ~」
彼が唸るのと同時に、彼の腹もグルグルと鳴り出す。よっぽど腹が空いていたらしい。
俺はもう一度スプーンを差し出して、少し離れたところで止まった。
ギラギラとした目が怖えよ。
「お前の名前は?教えてくれたら一口やる」
「……リク」
「リク、あーん」
スプーンを口元に運ぶとパクリと食べた。
飲み込んだところで、リクを持ち上げて座らせる。
寝たまま食べたら牛になっちまうからな!
いや、牛になった方がいいくらいコイツ細いけど。
「リクって何歳なんだ?」
俺はスプーンを持ち上げて聞く。
「14。もう少ししたら成人する」
14歳にしては小せえな。俺より少し大きいくらいだから、12歳になったかなってないかぐらいだと思ったんだけど。
リクの口にスプーンを突っ込みながら、栄養状態を観察する。
「いつからこんな生活をしてるんだ?」
「気がついたらここにいた。小さい時のことは覚えてない」
ってことは生まれながらの浮浪者かどうかわかんないってことか。
しかし臭い。
うん。
「浄化!」
ひとまず変な臭いはしなくなって小綺麗になったな。
「ロープを取っても暴れないって約束してくれる?大人しくしてくれるなら、スープを分けてあげるけど」
リクがコクンと頷いたのを確認してロープを解いた。
テーブルに2つお皿を用意して、向かい合う。
こんな相手でも1人で食べるよりはやっぱりいい。ていうか、久しぶりの人との会話だったんだな。
俺は食べ終わると軽く片付けをしてテントに戻った。
腹いっぱい食ったんだから、リクも自分の寝床に帰るだろうと放置して。
だから朝起きて、まだそこにリクがいるのを見て驚いても、俺は悪くねえだろ。
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攻め様その2
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