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20話 死の天使発動
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オースティンが駆り出されることがあるならば僕もついて行きたいし、ひとまず武器を用意しようと思い立った。
魔道具はしこたま用意してあるが、それではダメなのだ。
何がって?
僕の威厳的な何かがだよ。
もう、見た感じ弱そうじゃん。それじゃあダメなんだ。
お前なら連れて行ってもいいぞってくらい強そうに見えないと。
見た目から相手をビビらせれるくらいさ。
そこで考えついたのが、パッと見で恐れる武器の存在だ。
僕自身の見た目は、なんといってもモヤシだからな。ペロペロになめられちまう。
それにしても見た目が恐ろしい武器、なあ。
背に負う大型の剣とか重そうだなとは思うけど、別に怖くないだろ?
んー、どんなのがある?
むしろ、そんなのある?
あー……、大鎌とかってどうだろうか。
僕の病的な風貌と、大鎌。しかも魔道士は黒衣のマントを着てるんだぞ。
めっちゃいい。うん、それがいい。
死神みたいで怖そうじゃないか。
てことで、見た目で軽んじられないよう一目で危ないヤツだと思わせるために大鎌の魔道具を作ることにしたのだ。
属性は水、ていうか風を足して氷。
炎もカッコいいかなと思ったのだが、全部燃えたら素材の回収ができなくなってしまう。
我が領は貧乏なんだから、獲れるものは獲っておかないとな。
なんなら魔物の肉とか、王都の人間が食べないような硬いのだってビジジュール領だったらご馳走だし。
で、こんな危険な魔道具をな、ホイホイ誰でも使えるようにしたらやばいだろ?
だからな、大鎌に仕込む魔法陣の一文に『使用は龍の幼生の許可がいる』っていうのを付け加えることにしたんだ。
他の危険な魔術式についても、僕が死ぬまでは特許を取っても誰にも解放しない。
そうすればメロディに解読されることもない。
誰にも売れないから一銭にもならなくて懐には痛いけど、別の危険じゃないものを売ればいいんだしな。
体温調節できる指輪型魔道具なんて、結構売れたし。
これで仮に彼女が同じものを作ったとしても、先に結んだ契約によって彼女の魔法陣は使えないように弾かれる可能性が増えるだろう。
僕の死後はカナヘビ達に一任するのだ。
彼らが選んだ人間なら、悪人なわけがないからな。
カナヘビ達は意識を共有してくれるから、僕の死んだ後も大丈夫だと信じている。
☆
そうこうしているうちに1年生が終わり、長期の休みになった。
王都のビジジュール家の屋敷は母上がうるさいので、小さな(といっても前世の家よりデカいが)家を父上が僕用に購入してくれた。
執事とメイド付きだった。
まあ、父上も王都にいる時には向こうの家ではなくこっちの家に帰ってくるからな。彼らは必要だな。
ていうか、急に僕に干渉してくるようになった父上が、僕に甘すぎてびっくりしている。
父上が本当に領地に帰ってしまったので、領地のことは父上に任せて、この休みの間、移動も大変だしと僕らは領地に帰らなかったのだ。
物資も手紙もカナヘビ達が配達してくれるからその日のうちにやりとりできるしな。
父上達には、突然消えたり現れたりする現象は魔道具だと言い張っている。
☆
「できた!」
ん、なかなかいい出来なのではないか?
試し斬りしてみたい、けど、1人で行くのはちょっと怖い。
何しろまだ1度も間近で魔物というモノを見たことがないのだ。
斬り落としたことなんか、あるわけもない。
「なあ、オースティン」
「なんですか?」
こういう時は、隠し事などせずに素直に頼るのが正解だよな?
「僕、一応ビジジュールの次期公爵なんだよな」
「そうですね」
今までそんな事を匂わせたこともないからか、全身で『何ですか』と振り向かれた。
「だからさ、父上みたいに戦うことも視野に入れておかないといけないと思うんだよ」
一応武で身を立てる家だしな。
「ナローエ様がそんなことしなくても、俺が出ます」
うん、まあ、そうなるよな。
「それじゃあダメなんだよ。わかるだろう?」
「それでも!」
僕を危険に晒したくない。その気持ちはわかっている。
でもそれではビジジュールとしてダメだ。
役に立たなくてもその場にいるだけの存在になったとしても、現場には出ないとダメなのだ。
僕に兄弟がいたら違っていただろうけどな。
それに、君の横にいる人間としてもダメだろう?
「だから、オースティンに助けてほしいんだ」
思っていた言葉とは違ったのだろう。
何がなんでも反対しようとしていたオースティンが目を見開いて僕の次の言葉を待った。
「今の僕がどの程度できるのか知っておきたいし、オースティンにはどんな時でも僕をサポートできるようになっていてほしい」
「もちろんです」
「だからさ、ちょっとついて来てくれないかなーと思って」
「どこにです?」
「うーん、魔物の討伐?初歩的なやつからさ」
悩んでるなー、オースティン。
危ない目に合わせるのはイヤだけど、でも、僕が1人で強行突破して行くのはもっと困るだろ?
「わかりました」
しぶしぶのオースティンの返事に、らしいなあと笑ってしまった。
☆
「それ、背負ったまま行くんですか」
「だって急に取り出したら怪しいだろ。なら普段から背負ってるのにも慣れておかないと」
「まあ、そうなんですけどね」
オースティンが何か言いたいのもわかる。
なぜなら僕は背中に僕の背よりも大きな大鎌を背負って馬に乗るからだ。
不安だったが乗り方は忘れてはいなかった。よかった。
これ、めちゃくちゃ重そうに見える武器だけどな、僕が持つ時に限り、軽くなるんだ。
試しにオースティンに持たせたら『いい筋トレになりそうですね。ナローエ様本当に大丈夫ですか?』て聞かれたわ。
オースティンには重たかったらしい。
「よし、行くか」
「まずは小型から中型の魔物がいるところに行きましょうか」
「ん、わかった。ついて行くからよろしく」
「はい!」
☆
「あ、ナローエ様。いましたよ」
「うん」
馬の上から大鎌を振るの難い。
馬の頭を擦らずにすむように、大鎌を振る瞬間だけはしっかり足に力を入れて立ち上がり、腿ではなく膝とふくらはぎで馬の身を挟んだ。
「くっ!」
こちらに気づいて走り寄るジャコ種にマーカーをつけて一気に振り下ろす。
「ナローエ様、さすがです」
凍って落ちた魔物のとこまで移動すると馬から降りて確認した。
「よっし、今度はちゃんと首を刈り取れたぞ」
さっきのは右身と左身に縦割ってしまったからな。
魔石も真っ二つだった。
俺氏、がっくし。まあ、肉の確保はできたけど。
「小型魔物は楽勝ですね。しかも一瞬で凍る上に切り口も綺麗だし、保存に向いてる武器ですねえ」
「だろ?」
もう会話が猟師のソレだしな。
まあ、燃やす武器にしなくてよかったよ、本当。
「この種は頭に魔石があるんですよね」
「そうなのか?」
「まあ、今日は狩り目的ですから、いったん影に入れておいて後でゆっくり解体の実践をしましょう。今日はなんか数が多い気もするので、もう少しだけ練習できると思いますよ」
「わかった。じゃあ、次の獲物のとこ行こうぜ」
「はいはい」
☆
「ナローエ様!!」
やっと大鎌の扱いに慣れ始めた僕の前に、急に現れた上級の獣。
乗ってた馬は魔道具が発動した結界の中でヒンヒン泣いている。
馬が恐怖で動けない以上、降りて戦うしかない。
それにしても
「数が多い!」
オースティンにとっては大して強くない相手だとしても、数の多さには対処できないこともある。
この辺りには小さな魔物しかいないと連れて来たのはオースティンだ。
だから責任を感じてるのだろう。気にするなというのは簡単だけど、それはきっとオースティンの欲しい言葉ではない。
「オースティン、僕に気を取られるな!」
「そんなわけにはいきませんよ!」
こいつらも、明らかに弱そうな僕の方に飛んでくるからな。
オースティンが僕の方に来ないよう追い払うより、確実に仕留めていく方がいいに決まっている。
『我らもちょっとなら参戦できるにゅ!』
「ありがとう!」
傷ついて地面に倒れた獣は、クロ達が影部屋に引きずり込んで絶命させてくれるから、少しの間動けないくらい傷をつけるだけでも意味はあるだろう。
それなら殺すのに抵抗がある僕にもできる。
「オースティン、僕のことも信頼してくれ。戦う腕じゃなくて、魔道具の方をさ」
ちょっとした結界と、すぐに怪我を治す魔道具。
死にようがないだろ?
「~~~~っっ!!わかってます、けど、ナローエ様が傷つくと、心臓に悪いんですよ!っはあ、わかりました。一旦お側を離れます」
「うん。このままだとキリがないからな」
ぴったりとくっついていたオースティンが離れると、群がバラけた。
確実に首をはねるオースティンの剣技に見惚れたいところだけど、僕もやらないとな。
思わぬハプニングではあったけれど、頑張ればオースティンからの信用を勝ち取れるチャンスにもなる。
外の環境に影響を出してはいけないと、魔力の出力を少なめにしていたけど、少し上げよう。
土が凍っても気温は高いからすぐ戻るだろう。
僕はオースティンのいる方に背を向けて、僕らを囲む群れに向かって大鎌から冷気を流した。
土の上をバキバキッと音をたてながら霜の道が走ると前方にいた獣が5、6匹氷に足を取られて動けなくなっている。
下方から黒いオーラが立ち上がると、ズブズブと沈んでいく。
「よし!クロ、ナミ、そっちは任せた!」
飛び跳ねて逃げたヤツらは横に走っていった。
僕も横を向いて今度は風を多めに大鎌を振り下ろす。
派手に首や足を飛ばして10匹ほどが片付いた。
これ、竜巻みたいになるといいかもしれないな。
よし、やってみるか。
☆
獣より早く走ってヤツらを葬り去っていたオースティンが帰ってくると、僕の戦いの痕跡を見て唸った。
「ナローエ様の戦い方は、味方の数が少ない方がいいわけですね。なるほど、サポートするには練習が必要のようです」
確かに!
周りに人がいっぱいいる中で竜巻なんか起こしたら、巻き添えくらう仲間が出るな。
そういうのも考えないといけないのか。
しかし、
「さっき、オースティンがいつもより獣が多いって言ってたの、もっと考えればよかったな」
その時点で帰っていればこんな大変なことにならなかったのにな。
「そうですか?」
「うん、まあ、今日は帰ろうか」
「はい」
という僕の感想こそ、よく考えるべきだったのである。
魔道具はしこたま用意してあるが、それではダメなのだ。
何がって?
僕の威厳的な何かがだよ。
もう、見た感じ弱そうじゃん。それじゃあダメなんだ。
お前なら連れて行ってもいいぞってくらい強そうに見えないと。
見た目から相手をビビらせれるくらいさ。
そこで考えついたのが、パッと見で恐れる武器の存在だ。
僕自身の見た目は、なんといってもモヤシだからな。ペロペロになめられちまう。
それにしても見た目が恐ろしい武器、なあ。
背に負う大型の剣とか重そうだなとは思うけど、別に怖くないだろ?
んー、どんなのがある?
むしろ、そんなのある?
あー……、大鎌とかってどうだろうか。
僕の病的な風貌と、大鎌。しかも魔道士は黒衣のマントを着てるんだぞ。
めっちゃいい。うん、それがいい。
死神みたいで怖そうじゃないか。
てことで、見た目で軽んじられないよう一目で危ないヤツだと思わせるために大鎌の魔道具を作ることにしたのだ。
属性は水、ていうか風を足して氷。
炎もカッコいいかなと思ったのだが、全部燃えたら素材の回収ができなくなってしまう。
我が領は貧乏なんだから、獲れるものは獲っておかないとな。
なんなら魔物の肉とか、王都の人間が食べないような硬いのだってビジジュール領だったらご馳走だし。
で、こんな危険な魔道具をな、ホイホイ誰でも使えるようにしたらやばいだろ?
だからな、大鎌に仕込む魔法陣の一文に『使用は龍の幼生の許可がいる』っていうのを付け加えることにしたんだ。
他の危険な魔術式についても、僕が死ぬまでは特許を取っても誰にも解放しない。
そうすればメロディに解読されることもない。
誰にも売れないから一銭にもならなくて懐には痛いけど、別の危険じゃないものを売ればいいんだしな。
体温調節できる指輪型魔道具なんて、結構売れたし。
これで仮に彼女が同じものを作ったとしても、先に結んだ契約によって彼女の魔法陣は使えないように弾かれる可能性が増えるだろう。
僕の死後はカナヘビ達に一任するのだ。
彼らが選んだ人間なら、悪人なわけがないからな。
カナヘビ達は意識を共有してくれるから、僕の死んだ後も大丈夫だと信じている。
☆
そうこうしているうちに1年生が終わり、長期の休みになった。
王都のビジジュール家の屋敷は母上がうるさいので、小さな(といっても前世の家よりデカいが)家を父上が僕用に購入してくれた。
執事とメイド付きだった。
まあ、父上も王都にいる時には向こうの家ではなくこっちの家に帰ってくるからな。彼らは必要だな。
ていうか、急に僕に干渉してくるようになった父上が、僕に甘すぎてびっくりしている。
父上が本当に領地に帰ってしまったので、領地のことは父上に任せて、この休みの間、移動も大変だしと僕らは領地に帰らなかったのだ。
物資も手紙もカナヘビ達が配達してくれるからその日のうちにやりとりできるしな。
父上達には、突然消えたり現れたりする現象は魔道具だと言い張っている。
☆
「できた!」
ん、なかなかいい出来なのではないか?
試し斬りしてみたい、けど、1人で行くのはちょっと怖い。
何しろまだ1度も間近で魔物というモノを見たことがないのだ。
斬り落としたことなんか、あるわけもない。
「なあ、オースティン」
「なんですか?」
こういう時は、隠し事などせずに素直に頼るのが正解だよな?
「僕、一応ビジジュールの次期公爵なんだよな」
「そうですね」
今までそんな事を匂わせたこともないからか、全身で『何ですか』と振り向かれた。
「だからさ、父上みたいに戦うことも視野に入れておかないといけないと思うんだよ」
一応武で身を立てる家だしな。
「ナローエ様がそんなことしなくても、俺が出ます」
うん、まあ、そうなるよな。
「それじゃあダメなんだよ。わかるだろう?」
「それでも!」
僕を危険に晒したくない。その気持ちはわかっている。
でもそれではビジジュールとしてダメだ。
役に立たなくてもその場にいるだけの存在になったとしても、現場には出ないとダメなのだ。
僕に兄弟がいたら違っていただろうけどな。
それに、君の横にいる人間としてもダメだろう?
「だから、オースティンに助けてほしいんだ」
思っていた言葉とは違ったのだろう。
何がなんでも反対しようとしていたオースティンが目を見開いて僕の次の言葉を待った。
「今の僕がどの程度できるのか知っておきたいし、オースティンにはどんな時でも僕をサポートできるようになっていてほしい」
「もちろんです」
「だからさ、ちょっとついて来てくれないかなーと思って」
「どこにです?」
「うーん、魔物の討伐?初歩的なやつからさ」
悩んでるなー、オースティン。
危ない目に合わせるのはイヤだけど、でも、僕が1人で強行突破して行くのはもっと困るだろ?
「わかりました」
しぶしぶのオースティンの返事に、らしいなあと笑ってしまった。
☆
「それ、背負ったまま行くんですか」
「だって急に取り出したら怪しいだろ。なら普段から背負ってるのにも慣れておかないと」
「まあ、そうなんですけどね」
オースティンが何か言いたいのもわかる。
なぜなら僕は背中に僕の背よりも大きな大鎌を背負って馬に乗るからだ。
不安だったが乗り方は忘れてはいなかった。よかった。
これ、めちゃくちゃ重そうに見える武器だけどな、僕が持つ時に限り、軽くなるんだ。
試しにオースティンに持たせたら『いい筋トレになりそうですね。ナローエ様本当に大丈夫ですか?』て聞かれたわ。
オースティンには重たかったらしい。
「よし、行くか」
「まずは小型から中型の魔物がいるところに行きましょうか」
「ん、わかった。ついて行くからよろしく」
「はい!」
☆
「あ、ナローエ様。いましたよ」
「うん」
馬の上から大鎌を振るの難い。
馬の頭を擦らずにすむように、大鎌を振る瞬間だけはしっかり足に力を入れて立ち上がり、腿ではなく膝とふくらはぎで馬の身を挟んだ。
「くっ!」
こちらに気づいて走り寄るジャコ種にマーカーをつけて一気に振り下ろす。
「ナローエ様、さすがです」
凍って落ちた魔物のとこまで移動すると馬から降りて確認した。
「よっし、今度はちゃんと首を刈り取れたぞ」
さっきのは右身と左身に縦割ってしまったからな。
魔石も真っ二つだった。
俺氏、がっくし。まあ、肉の確保はできたけど。
「小型魔物は楽勝ですね。しかも一瞬で凍る上に切り口も綺麗だし、保存に向いてる武器ですねえ」
「だろ?」
もう会話が猟師のソレだしな。
まあ、燃やす武器にしなくてよかったよ、本当。
「この種は頭に魔石があるんですよね」
「そうなのか?」
「まあ、今日は狩り目的ですから、いったん影に入れておいて後でゆっくり解体の実践をしましょう。今日はなんか数が多い気もするので、もう少しだけ練習できると思いますよ」
「わかった。じゃあ、次の獲物のとこ行こうぜ」
「はいはい」
☆
「ナローエ様!!」
やっと大鎌の扱いに慣れ始めた僕の前に、急に現れた上級の獣。
乗ってた馬は魔道具が発動した結界の中でヒンヒン泣いている。
馬が恐怖で動けない以上、降りて戦うしかない。
それにしても
「数が多い!」
オースティンにとっては大して強くない相手だとしても、数の多さには対処できないこともある。
この辺りには小さな魔物しかいないと連れて来たのはオースティンだ。
だから責任を感じてるのだろう。気にするなというのは簡単だけど、それはきっとオースティンの欲しい言葉ではない。
「オースティン、僕に気を取られるな!」
「そんなわけにはいきませんよ!」
こいつらも、明らかに弱そうな僕の方に飛んでくるからな。
オースティンが僕の方に来ないよう追い払うより、確実に仕留めていく方がいいに決まっている。
『我らもちょっとなら参戦できるにゅ!』
「ありがとう!」
傷ついて地面に倒れた獣は、クロ達が影部屋に引きずり込んで絶命させてくれるから、少しの間動けないくらい傷をつけるだけでも意味はあるだろう。
それなら殺すのに抵抗がある僕にもできる。
「オースティン、僕のことも信頼してくれ。戦う腕じゃなくて、魔道具の方をさ」
ちょっとした結界と、すぐに怪我を治す魔道具。
死にようがないだろ?
「~~~~っっ!!わかってます、けど、ナローエ様が傷つくと、心臓に悪いんですよ!っはあ、わかりました。一旦お側を離れます」
「うん。このままだとキリがないからな」
ぴったりとくっついていたオースティンが離れると、群がバラけた。
確実に首をはねるオースティンの剣技に見惚れたいところだけど、僕もやらないとな。
思わぬハプニングではあったけれど、頑張ればオースティンからの信用を勝ち取れるチャンスにもなる。
外の環境に影響を出してはいけないと、魔力の出力を少なめにしていたけど、少し上げよう。
土が凍っても気温は高いからすぐ戻るだろう。
僕はオースティンのいる方に背を向けて、僕らを囲む群れに向かって大鎌から冷気を流した。
土の上をバキバキッと音をたてながら霜の道が走ると前方にいた獣が5、6匹氷に足を取られて動けなくなっている。
下方から黒いオーラが立ち上がると、ズブズブと沈んでいく。
「よし!クロ、ナミ、そっちは任せた!」
飛び跳ねて逃げたヤツらは横に走っていった。
僕も横を向いて今度は風を多めに大鎌を振り下ろす。
派手に首や足を飛ばして10匹ほどが片付いた。
これ、竜巻みたいになるといいかもしれないな。
よし、やってみるか。
☆
獣より早く走ってヤツらを葬り去っていたオースティンが帰ってくると、僕の戦いの痕跡を見て唸った。
「ナローエ様の戦い方は、味方の数が少ない方がいいわけですね。なるほど、サポートするには練習が必要のようです」
確かに!
周りに人がいっぱいいる中で竜巻なんか起こしたら、巻き添えくらう仲間が出るな。
そういうのも考えないといけないのか。
しかし、
「さっき、オースティンがいつもより獣が多いって言ってたの、もっと考えればよかったな」
その時点で帰っていればこんな大変なことにならなかったのにな。
「そうですか?」
「うん、まあ、今日は帰ろうか」
「はい」
という僕の感想こそ、よく考えるべきだったのである。
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