10 / 18
第2章 臆病な透が任務を開始するまで
ワザ
しおりを挟む
母の言った通りだった。
まず、新しい小学校では、先生がとても丁寧に話を聞いてくれた。
5年生の教室に案内され、あっさりと紹介される。
透が名前を言ってぺこりと礼をすると、子どもたちは「よろしくね」と元気な声を上げた。
1時間目は国語の授業だ。
「この物語の感想を言ってみましょう」
授業中の問いかけに、隣の席の男子が手を挙げた。
「お父さんが戦争に行く前に家族でやった遊びが、すごく面白かった。あとから辛い展開になるけど、最後にまたその遊びの記憶が出てきて、へえって思いました」
——なるほど、そんなふうに感じ取れるんだ。
透は感心した。自分なら「戦争は怖いと思いました」と言って終わっていたかもしれない。
その男子、田中昴は、背が高くて、物怖じしない雰囲気を持っていた。
1時間目が終わり、まだ緊張している透に、昴が声をかけてきた。
「透、校庭のジャングルジム、見えるだろ。俺、一番上でワザやるんだぜ」
呼び捨ては驚いたが、イヤではなかった。
「え、あんな高いところで?」
透が驚くと、昴はニヤリと笑ってみせた。
「昼休みに見せてやるよ」
実際に、昴はジャングルジムのてっぺんまでスルスル登り、片手を離してポーズを決めた。
「おおっ、すごい……!」
他の子どもたちも歓声を上げる。透も思わず一緒になって拍手した。
まず、新しい小学校では、先生がとても丁寧に話を聞いてくれた。
5年生の教室に案内され、あっさりと紹介される。
透が名前を言ってぺこりと礼をすると、子どもたちは「よろしくね」と元気な声を上げた。
1時間目は国語の授業だ。
「この物語の感想を言ってみましょう」
授業中の問いかけに、隣の席の男子が手を挙げた。
「お父さんが戦争に行く前に家族でやった遊びが、すごく面白かった。あとから辛い展開になるけど、最後にまたその遊びの記憶が出てきて、へえって思いました」
——なるほど、そんなふうに感じ取れるんだ。
透は感心した。自分なら「戦争は怖いと思いました」と言って終わっていたかもしれない。
その男子、田中昴は、背が高くて、物怖じしない雰囲気を持っていた。
1時間目が終わり、まだ緊張している透に、昴が声をかけてきた。
「透、校庭のジャングルジム、見えるだろ。俺、一番上でワザやるんだぜ」
呼び捨ては驚いたが、イヤではなかった。
「え、あんな高いところで?」
透が驚くと、昴はニヤリと笑ってみせた。
「昼休みに見せてやるよ」
実際に、昴はジャングルジムのてっぺんまでスルスル登り、片手を離してポーズを決めた。
「おおっ、すごい……!」
他の子どもたちも歓声を上げる。透も思わず一緒になって拍手した。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
土下座おじさんの末路
広川朔二
ライト文芸
新しくオープンしたテーマパークで撮影された、たった数分の映像。
「土下座しろ」と叫ぶ中年男と、それに頭を下げる警備員――
その映像は瞬く間に拡散され、男は「土下座おじさん」と呼ばれるネットの晒し者となった。
顔、名前、職場、家族構成までもが暴かれ、社会的信用を失い、人生は急速に崩壊していく。
正義を語る匿名の群衆に追われ、職を失い、家族を失い、存在すら“消費される”日々。
たった一度の怒りが、人生を変えた。
そしてその末路は、あまりに静かで、残酷だった――。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる