イヤゲモノには礼状を ~ サレ妻の子どもたちは幸せな未来を選ぶ ~

イチモンジ・ルル

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第2章 臆病な透が任務を開始するまで

ワザ

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 母の言った通りだった。
 まず、新しい小学校では、先生がとても丁寧に話を聞いてくれた。

 5年生の教室に案内され、あっさりと紹介される。
 透が名前を言ってぺこりと礼をすると、子どもたちは「よろしくね」と元気な声を上げた。

 1時間目は国語の授業だ。

「この物語の感想を言ってみましょう」

 授業中の問いかけに、隣の席の男子が手を挙げた。

「お父さんが戦争に行く前に家族でやった遊びが、すごく面白かった。あとから辛い展開になるけど、最後にまたその遊びの記憶が出てきて、へえって思いました」

 ——なるほど、そんなふうに感じ取れるんだ。

 透は感心した。自分なら「戦争は怖いと思いました」と言って終わっていたかもしれない。
 その男子、田中すばるは、背が高くて、物怖じしない雰囲気を持っていた。

 1時間目が終わり、まだ緊張している透に、昴が声をかけてきた。

「透、校庭のジャングルジム、見えるだろ。俺、一番上でワザやるんだぜ」

 呼び捨ては驚いたが、イヤではなかった。

「え、あんな高いところで?」

 透が驚くと、昴はニヤリと笑ってみせた。

「昼休みに見せてやるよ」

 実際に、昴はジャングルジムのてっぺんまでスルスル登り、片手を離してポーズを決めた。

「おおっ、すごい……!」

 他の子どもたちも歓声を上げる。透も思わず一緒になって拍手した。

 
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