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プロローグ
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「それではぁ!紹介しまぁーす!1人目の新メンバーは千尋でーす!」
その一言のあと、ドームの中は歓喜の発狂で震える。
俺はその声を全身に浴びてから、光溢れる世界に足を踏み入れた。
静まり返った場内に緊張が走る。ただそこに立つだけで汗が溢れ出るほどだった。
「こんにちわぁー!初めましてーー第2期生!羽川千尋でーす!!」
ドーム内に歓声が湧き上がる。
その歓声、視線は俺の方に向けられている。男である俺に好きな、愛する女性に向ける視線だ。
俺は男だが、それは裏の顔だった。俺は女性アイドルとしてそこに立っている。
金髪ショートボブで痩躯の長身、みんなとお揃いの天使のように透明感のある衣裳、目から出すもの毛穴から出すもの全てがキラキラした俺はほんの数ヶ月前まで憧れた姉のようにアイドルだった。そしていま俺は彼女達と同じ志を持ち、姉の目指していたアイドル達の横にいる。
「千尋ぉ、何黙ってんのさぁ緊張しちゃった?」
メンバーの声に気がついた時には、メンバーが俺を心配そうに見つめていた。
「ん?あ、大丈夫です!緊張しちゃいました」
俺は軽く嘘をついた。
「そうなのね、やっぱり初めては緊張するよねぇー」
先輩が言うと場内から応援が聞こえる。
その声が少し止むと先輩は再び口を開いた。
「じゃあもう1人紹介しまぁーす!2人目の新メンバーは歩美でーす!」
その声とほぼ同時にバックステージから出てきたのは
「はいどーーも!初めましてー!和香歩美でーーす!よろしくお願いしまぁーす!」
人一倍元気よく大きな声が場内に残響をやや残した。少し大き過ぎたか、空気がピリリとしている。このままじゃファンは付きにくい、やらかした様に思えた。
しかし、ファンの反応は逆だった。
彼女の声の何倍も俺の時の何十倍も大きな歓声に耳の奥が痺れた。
彼女は初登場の瞬間から求心力でその場に居たファンの心を掴んだ。
2期生の中でも絶対的エース。赤髪ロング、俺と同じくらいの長身とその美貌。その天性のルックスに加えて揺らぐことのない実力。
「おおおお、凄いねぇ!元気いいねぇ!おねぇちゃん達そういうの好きだよぉ!うへへ」
「ちょちょちょ、オッサンかよ!」
先輩達のボケとツッコミが場内に笑いを起こす。
「それでは次の曲行きますよぉー!後輩!」
余韻と残響を残しつつ先輩の一言に観客席は静まり返る。
「「それでは聞いてくださいフェアリーキッス!」」
俺と歩美で声を揃えて曲名を告げた。一気にライトが絞られ、緊張、静寂、暗闇が俺らを抱擁する。
この静寂のなかでは鼓動が拡張された様に聞こえる。息を吸わなければと大きく1つ息を吐いた。
ティラミスの様に甘く柔らかなピアノの伴奏が始まる。
この曲は甘いラブソングだった。でもダンスは激しい。男の俺でも曲についていくのがやっとなのに先輩達はさも当たり前のように踊っていた。
スタミナの化け物。時にアイドルはそう呼ばれる、それが本当のようだ。
沸き立つ観客席、目が眩むほど眩しいライト、視界に入るそれの瞬間と瞬間の狭間が瞼のはるか奥の脳裏に焼きつく。
決して忘れる事は無いだろう。
ダンスは辛く女装を見られる視線は恥ずかしくライトが肌を焼くように暑い。
それでもーーーー
俺はこれまでの17年間で断トツで輝いている。
姉との約束それを果たすまで俺はアイドルを辞められない。辞めてはならない。
どんなに猛毒のある棘のある茨の道だろうが俺は女としてこの道を進む。
俺は気が持ち続ける先まで踊り遂げた。
踊り終えた時には音楽と鼓動のリズムが同調していた。
一瞬静かになると詰めるようにファンの歓声がステージめがけて一直線に集まる。
みんな揃って息を切らし、必死に呼吸を整える。
そして、俺たちの足元がリフトが動いたことにより、ゆっくりと降りていく。
やがて視線がステージの地面と水平になると、完全に観客が見えなくなっていった。
「はい、お疲れ様でした」
ステージ下に集まったみんなが声を掛け合い、控え室に戻ろうと足早に去って行く。
俺は膝に手をつき顔を伏せながら呼吸を整えていた。
すると背後からトンっと軽く叩かれる。
「後輩おつ、このあと、時間空いてるだろ?ついてこい」
ワイルドな声をかけてきたのはこのグループの中でもリーダーである先輩だった。
「えっ、付いて行くってどこにですか?」
「決まってんだろ、歓迎会するんだよ」
ワイルドな先輩はビシッと親指を立てると、その衣装のごとく天使のように舞いながら出て行った。
「よし、俺も着替えようか」
他の誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いて、疲れた身体に元気を入れ先輩の後をついて行った。
その一言のあと、ドームの中は歓喜の発狂で震える。
俺はその声を全身に浴びてから、光溢れる世界に足を踏み入れた。
静まり返った場内に緊張が走る。ただそこに立つだけで汗が溢れ出るほどだった。
「こんにちわぁー!初めましてーー第2期生!羽川千尋でーす!!」
ドーム内に歓声が湧き上がる。
その歓声、視線は俺の方に向けられている。男である俺に好きな、愛する女性に向ける視線だ。
俺は男だが、それは裏の顔だった。俺は女性アイドルとしてそこに立っている。
金髪ショートボブで痩躯の長身、みんなとお揃いの天使のように透明感のある衣裳、目から出すもの毛穴から出すもの全てがキラキラした俺はほんの数ヶ月前まで憧れた姉のようにアイドルだった。そしていま俺は彼女達と同じ志を持ち、姉の目指していたアイドル達の横にいる。
「千尋ぉ、何黙ってんのさぁ緊張しちゃった?」
メンバーの声に気がついた時には、メンバーが俺を心配そうに見つめていた。
「ん?あ、大丈夫です!緊張しちゃいました」
俺は軽く嘘をついた。
「そうなのね、やっぱり初めては緊張するよねぇー」
先輩が言うと場内から応援が聞こえる。
その声が少し止むと先輩は再び口を開いた。
「じゃあもう1人紹介しまぁーす!2人目の新メンバーは歩美でーす!」
その声とほぼ同時にバックステージから出てきたのは
「はいどーーも!初めましてー!和香歩美でーーす!よろしくお願いしまぁーす!」
人一倍元気よく大きな声が場内に残響をやや残した。少し大き過ぎたか、空気がピリリとしている。このままじゃファンは付きにくい、やらかした様に思えた。
しかし、ファンの反応は逆だった。
彼女の声の何倍も俺の時の何十倍も大きな歓声に耳の奥が痺れた。
彼女は初登場の瞬間から求心力でその場に居たファンの心を掴んだ。
2期生の中でも絶対的エース。赤髪ロング、俺と同じくらいの長身とその美貌。その天性のルックスに加えて揺らぐことのない実力。
「おおおお、凄いねぇ!元気いいねぇ!おねぇちゃん達そういうの好きだよぉ!うへへ」
「ちょちょちょ、オッサンかよ!」
先輩達のボケとツッコミが場内に笑いを起こす。
「それでは次の曲行きますよぉー!後輩!」
余韻と残響を残しつつ先輩の一言に観客席は静まり返る。
「「それでは聞いてくださいフェアリーキッス!」」
俺と歩美で声を揃えて曲名を告げた。一気にライトが絞られ、緊張、静寂、暗闇が俺らを抱擁する。
この静寂のなかでは鼓動が拡張された様に聞こえる。息を吸わなければと大きく1つ息を吐いた。
ティラミスの様に甘く柔らかなピアノの伴奏が始まる。
この曲は甘いラブソングだった。でもダンスは激しい。男の俺でも曲についていくのがやっとなのに先輩達はさも当たり前のように踊っていた。
スタミナの化け物。時にアイドルはそう呼ばれる、それが本当のようだ。
沸き立つ観客席、目が眩むほど眩しいライト、視界に入るそれの瞬間と瞬間の狭間が瞼のはるか奥の脳裏に焼きつく。
決して忘れる事は無いだろう。
ダンスは辛く女装を見られる視線は恥ずかしくライトが肌を焼くように暑い。
それでもーーーー
俺はこれまでの17年間で断トツで輝いている。
姉との約束それを果たすまで俺はアイドルを辞められない。辞めてはならない。
どんなに猛毒のある棘のある茨の道だろうが俺は女としてこの道を進む。
俺は気が持ち続ける先まで踊り遂げた。
踊り終えた時には音楽と鼓動のリズムが同調していた。
一瞬静かになると詰めるようにファンの歓声がステージめがけて一直線に集まる。
みんな揃って息を切らし、必死に呼吸を整える。
そして、俺たちの足元がリフトが動いたことにより、ゆっくりと降りていく。
やがて視線がステージの地面と水平になると、完全に観客が見えなくなっていった。
「はい、お疲れ様でした」
ステージ下に集まったみんなが声を掛け合い、控え室に戻ろうと足早に去って行く。
俺は膝に手をつき顔を伏せながら呼吸を整えていた。
すると背後からトンっと軽く叩かれる。
「後輩おつ、このあと、時間空いてるだろ?ついてこい」
ワイルドな声をかけてきたのはこのグループの中でもリーダーである先輩だった。
「えっ、付いて行くってどこにですか?」
「決まってんだろ、歓迎会するんだよ」
ワイルドな先輩はビシッと親指を立てると、その衣装のごとく天使のように舞いながら出て行った。
「よし、俺も着替えようか」
他の誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いて、疲れた身体に元気を入れ先輩の後をついて行った。
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