君へカンターレ

みのり

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Stage1 俺は次世代エースをアユと呼ぶ!

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控え室に戻り荷物を纏めると俺はメンバーがみんなシャワールームから出てくるのを待った。
数ヶ月の間、何度かこういう時があったのでその時と同様にする。
以前、先輩になんで一緒に入らないの?って言われたが俺は本気で誤魔化したので、その後はそのことに関してちょっかいを出してくることはなかった。
シャワールームに女子と入ろうものなら、彼女らの色とりどりの双丘に俺の息子は元気になり、彼女らは目が点で叫び、即刻クビで警察に連行され全国ニュースに俺の顔が載ってしまうだろう。
そんなのは嫌だ。姉との約束もある。

俺は、汗だくの衣裳のままでソファに尻を落とし背もたれに体重を預けた。脱力すると天井を見てそのまま目を瞑った。
寝そうで寝ないギリギリのラインを攻めてまどろみに浸っているとドアがガチャリと開いた。
「千尋、まだシャワー浴びてないんだね」
声をかけてきたのは、濡れた赤髪を垂らし身体のラインを主張するラフな格好の歩美だった。
ステージの上とは打って変わってクールな態度で甘い声だ。こっちが彼女の本当の姿でステージの上は営業の姿だと思う。
「うん、にしてもアユは早いね」
ソファに体重を全て預けたまま顔だけ歩美の方を向いて話す。
「ああ、先輩達いつものセクハラごっこやってるからね。私が早いんじゃなくて先輩たちが遅いんだよ」
「そっか」
それで会話は終わった。俺もそこまで話し込むタイプではない、歩美もまた基本1人が好きみたいだから別にこれで十分だった。
歩美は、控え室の1番奥にあるパイプ椅子に腰を下ろした。歩美はどんな場所であれ1番奥にいることが多い。
スマホをいじりだした歩美を俺は横目に眺めた。


歩美は俺が2期生の練習に加わった時には既にアイドルのオーラを身に付けていた。一目見た時から才能を感じた。
あからさまな赤髪をなびかせて踊っていた姿は薔薇が舞っているように見えたほどだった。
俺はそんな歩美にライバル視をして練習してきた。2期生が練習を始めたのは今からちょうど1年前だろうか。姉はその時まだ、毎日何時間とでも練習していた。そのとき俺は部屋でゲームでもしていた。いまさら思い出したくもない。
そのあと俺が姉の代わり身・・・・として練習に参加し始めた。だから俺が入ってからまだ半年も入っていない。
俺が入った頃、歩美は同じ2期生の人とも関わりを持たなかった。コインの表と裏が一度に出ないように彼女もまた公私をしっかりと分けていた。
ただ、俺とだけはそれとなく関わりを持つようになっていった。理由は分からないが、俺は歩美に対して親近感を感じていた。

「千尋、千尋が流石に女だと言ってもそんなにガン見されると気持ち悪いんだけど」
回想に耽っていた自分を引き戻したのは歩美の冷たい視線と呼びかけだった。
「あ、悪い」
視線を逸らしながらそう言った。
「なんか、初ステージ疲れたな」
石膏ボードの天井を見つめながら口に漏らした。
「そうだね、疲れた」
歩美が簡潔に言うのと被りながらガチャリとドアが開いた。
ぞろぞろと入ってきたのは、シャワー上がりの先輩達だった。身体中から湯気が立ち込めている。
「千尋空いたぞ、シャワー行ってこい」
やはりリーダーの先輩が親指でクイっとシャワールームの方を指差した。
「じゃ、いただきます」
着替えとタオルを持って部屋を出た。
「その言い方はエロいな」
「何?朱莉あかりったらちーちゃんにロックオン?」
そんな、先輩達の会話を後ろに浴びながらシャワーを浴びに行った。
俺がシャワーを終えると、荷物をまとめ即刻ドームを出た。ドームの貸し出し時間が迫っていたようで追加料金が発生しないうちに出ようという魂胆だ。そして、俺らは歓迎会会場に向かったのだった。
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