7 / 16
1幕 白峰高校殺人事件
7話 空腹
しおりを挟む
「おい、何を呑気に教務室で寝てるんだ。名探偵」
ここ数日の温暖な気候とは打って変わり急激に気温は下がり雨が降ってはいたが教務室だけは暖かかった。
「松原さん、大丈夫ですよ」
「一体何が大丈夫なんだ」
返事がない。
また眠ってしまったようだ。
呆れて辺りを見回すと、暖房がついていた。外と違って暖かいのはそのせいだろう。
探偵が寝ていたのは応接間の2人がけソファで最も温風が当たるようになっていた。
ソファのすぐ隣にある机には、マグカップと朝から小脇に抱えていた紙袋があった。
「こいつ、何飲んだんだろ・・・」
ただの興味でマグカップの中を覗き込むと、何かの種だけが入っていた。
白く、小豆ほどにも満たない大きさの種だ。ただ、その種の形状には記憶があった。
レモンだ。
ついでに、紙袋を開けて中を覗くと、レモンがゴロゴロと入っている。
辺りに皮はなく、種だけが綺麗にマグカップの中にあることを考えるとレモンを皮ごと食べたのだろう。
それと同時に、松原さんは大きく息を吐き安堵の表情になる。
『名探偵が柑橘を欲す時ナゾは解ける』
上司に言われた言葉が脳裏をよぎったからだ。
あとは、探偵が目覚めるのを待つだけという事なのだろう。
と、思って探偵の隣で起床を待つ事にしてから、遠に2時間をすぎていた。
探偵は寝てるからいいかもしれないが、こちらは空腹感で死にそうだ。なんせ、13時を回っているからだ。
奈津子にパシらせようにも、姿が見えない。あいつは上司を置いてどこで何をやっているのだろう。
空腹感と相まってストレスは限界を迎えていた。
「ええい!遅い遅い!」
枯渇したエネルギーを濾し出して、腹の底から叫ぶ。
「どこにいるんだ!奈津子は!」
叫ぶも、何も起きない。起きたとすれば、教務室にいる教師の冷たい視線が飛んでくることぐらいだ。
探偵も相変わらず寝ているし、奈津子は居ないし、俺の腹は限界を迎えているし。
どうしたらいい。
天を仰ぐように、顔を上げる矢先、レモンの入った紙袋に目がいった。
レモンは酸っぱいことが眼に見えているが腹がすっからかんよりはマシだろうと思い、紙袋から握り拳ほどの大きさのレモンを取り出した。
「かぷっ。・・・・すっぱっ!」
大きくひとくち噛み付いたものの、その酸っぱさにすぐ吐き出した。
探偵の味覚はどうなってるんだ。こんな物、食えたもんじゃない。
自暴自棄になり、ただ、天井を見上げる。
腹減った。
俺は空腹を抑えるために寝ようとすると、悪いタイミングで探偵が起きた。
「あ、おはようございます」
「ああ。おはよう」
探偵はマフラーを巻き直す。
「松原さんレモンを食べたんですね」
テーブルの上に置かれていたレモンに目をやるとそう言った。
「ああ、試しに食ってみたけど俺には無理だ」
ははっ、と名探偵がはにかむと、教務室の扉がガラリと開いた。
「日向さん買ってきましたよ!隣町まで行って来たんですから必ず解いてくださいね!」
奈津子が肩で息をしている事から走って隣町まで行ったのだと感じとれた。
「ありがとう奈津子さん。お釣りは少しばかりの御礼と受け取って下さい」
奈津子は柚子が溢れんばかりに入っている紙袋を探偵に渡した。
柚葉って名前の探偵が柚子を使って謎を解くのか?
そりゃまた面白い!
だが、今はそんな事に喜んでいる場合ではない。一刻も早く謎を解いて貰わねばな。
と、思ったものの空腹には勝らんと思う。
「奈津子、飯に行くぞ」
「あのー、私食べて来たんで先輩はなんか軽く食べて来てください」
「は?」
「ですから、食べて来たんですよ」
「俺のこの2時間を返せ!」
そう言うと、荒々しく戸を開けて、教務室を出て行った。
「奈津子さん、行きましょうか」
「そうですね。」
全く、奈津子を教育し直さなければならないな。
せめて、俺に飯食うか確認しろよ。ッタク。
松原はそう思いながら玄関で靴を履き替えていた。
飯は何を食おうが・・・ラーメン、チャーハン、サバ味噌、パン。
空腹のあまり、思考が止まらない。
あまりに夢中になってしまったもんだから、適当に歩いている事に気が付かず、ふとした時には校門とはかけ離れた方向に進んでいた。
仕方ない、戻るか...。
校門に向き直ると、玄関でこの学校の制服を着た小柄な青年がいた。
「君どうしたんだい?」
そう聞くや否や走って立ち去って行ってしまった。
忘れ物でもしたのだろうか。まぁ、そんな事はさておき、お昼だ。
ここ数日の温暖な気候とは打って変わり急激に気温は下がり雨が降ってはいたが教務室だけは暖かかった。
「松原さん、大丈夫ですよ」
「一体何が大丈夫なんだ」
返事がない。
また眠ってしまったようだ。
呆れて辺りを見回すと、暖房がついていた。外と違って暖かいのはそのせいだろう。
探偵が寝ていたのは応接間の2人がけソファで最も温風が当たるようになっていた。
ソファのすぐ隣にある机には、マグカップと朝から小脇に抱えていた紙袋があった。
「こいつ、何飲んだんだろ・・・」
ただの興味でマグカップの中を覗き込むと、何かの種だけが入っていた。
白く、小豆ほどにも満たない大きさの種だ。ただ、その種の形状には記憶があった。
レモンだ。
ついでに、紙袋を開けて中を覗くと、レモンがゴロゴロと入っている。
辺りに皮はなく、種だけが綺麗にマグカップの中にあることを考えるとレモンを皮ごと食べたのだろう。
それと同時に、松原さんは大きく息を吐き安堵の表情になる。
『名探偵が柑橘を欲す時ナゾは解ける』
上司に言われた言葉が脳裏をよぎったからだ。
あとは、探偵が目覚めるのを待つだけという事なのだろう。
と、思って探偵の隣で起床を待つ事にしてから、遠に2時間をすぎていた。
探偵は寝てるからいいかもしれないが、こちらは空腹感で死にそうだ。なんせ、13時を回っているからだ。
奈津子にパシらせようにも、姿が見えない。あいつは上司を置いてどこで何をやっているのだろう。
空腹感と相まってストレスは限界を迎えていた。
「ええい!遅い遅い!」
枯渇したエネルギーを濾し出して、腹の底から叫ぶ。
「どこにいるんだ!奈津子は!」
叫ぶも、何も起きない。起きたとすれば、教務室にいる教師の冷たい視線が飛んでくることぐらいだ。
探偵も相変わらず寝ているし、奈津子は居ないし、俺の腹は限界を迎えているし。
どうしたらいい。
天を仰ぐように、顔を上げる矢先、レモンの入った紙袋に目がいった。
レモンは酸っぱいことが眼に見えているが腹がすっからかんよりはマシだろうと思い、紙袋から握り拳ほどの大きさのレモンを取り出した。
「かぷっ。・・・・すっぱっ!」
大きくひとくち噛み付いたものの、その酸っぱさにすぐ吐き出した。
探偵の味覚はどうなってるんだ。こんな物、食えたもんじゃない。
自暴自棄になり、ただ、天井を見上げる。
腹減った。
俺は空腹を抑えるために寝ようとすると、悪いタイミングで探偵が起きた。
「あ、おはようございます」
「ああ。おはよう」
探偵はマフラーを巻き直す。
「松原さんレモンを食べたんですね」
テーブルの上に置かれていたレモンに目をやるとそう言った。
「ああ、試しに食ってみたけど俺には無理だ」
ははっ、と名探偵がはにかむと、教務室の扉がガラリと開いた。
「日向さん買ってきましたよ!隣町まで行って来たんですから必ず解いてくださいね!」
奈津子が肩で息をしている事から走って隣町まで行ったのだと感じとれた。
「ありがとう奈津子さん。お釣りは少しばかりの御礼と受け取って下さい」
奈津子は柚子が溢れんばかりに入っている紙袋を探偵に渡した。
柚葉って名前の探偵が柚子を使って謎を解くのか?
そりゃまた面白い!
だが、今はそんな事に喜んでいる場合ではない。一刻も早く謎を解いて貰わねばな。
と、思ったものの空腹には勝らんと思う。
「奈津子、飯に行くぞ」
「あのー、私食べて来たんで先輩はなんか軽く食べて来てください」
「は?」
「ですから、食べて来たんですよ」
「俺のこの2時間を返せ!」
そう言うと、荒々しく戸を開けて、教務室を出て行った。
「奈津子さん、行きましょうか」
「そうですね。」
全く、奈津子を教育し直さなければならないな。
せめて、俺に飯食うか確認しろよ。ッタク。
松原はそう思いながら玄関で靴を履き替えていた。
飯は何を食おうが・・・ラーメン、チャーハン、サバ味噌、パン。
空腹のあまり、思考が止まらない。
あまりに夢中になってしまったもんだから、適当に歩いている事に気が付かず、ふとした時には校門とはかけ離れた方向に進んでいた。
仕方ない、戻るか...。
校門に向き直ると、玄関でこの学校の制服を着た小柄な青年がいた。
「君どうしたんだい?」
そう聞くや否や走って立ち去って行ってしまった。
忘れ物でもしたのだろうか。まぁ、そんな事はさておき、お昼だ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる